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第二章:賢者の証明
許婚の言いがかり2
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自然な仕草でわたしを横に寄せて前に出るヴェルター。
ちょっとこの賢者様は何してるのですか?!
「違うと言っても聞いてくれそうにありませんね。
ですがご学友がティアナの意思を曲げようとするのはどうなのでしょうか?」
「だから許婚だと……」
「ふむ? ティアナが信用できない許婚ですか?」
「貴様!」
「ちょ、ちょっとお待ちください! ヴェルター!?」
「おっとっと……ティアナがいくら軽くとも、いきなり飛びつかれては倒れてしまいますよ」
揺らぐ素振りもないくせに、何でそうあちこちを煽るんですか!?
わたしの貴族関係に亀裂が……あれ、もしかしてあんまり入りませんか……?
フルラネット家はヴァルプルギス家と縁を結ばなくても十分な力がありますし、そもそも両家とも良好な関係です。
むしろわたしを押し付けられるより、他国や他家と縁を結んだ方が良いかもしれません。
アミルカーレ様は次期当主ですし。
ですが、それはわたしの話。
召喚したと明かせない以上、一般人が貴族に逆らうのは危なすぎます!
もう手遅れかもしれませんが、わたしの謝罪で何とかことを収め……られるんでしょうか?
なぜかアミルカーレ様は実力がどうとか言ってますし……ともかく!
「伯爵家に口答えする方がどうかしています!」
「私はご学友に忠告しているだけですよ?
誰が聞いているかも分からない往来で『公爵家が選んだ教師に異論を唱える伯爵家』を演じている彼にね」
「――っ!!」
「ティアナの傍に急に私のような者が付いたことへのご心配は理解します。
しかし、貴族であればこそ、感情よりも事実の把握を優先されるべきでしょう。
今回の場合ならば信用、もしくは実力がそれに当たると思われますがいかがでしょうか?」
「わたしが実力も信用も保証しております!」
「ですがご納得いただけないようですよ?」
ヴェルターはわたしにだけ分かるように笑ってきます。
まさかこの状況を納めろってことですか?
無茶ぶりが過ぎませんか先生……。
「ときにこの世界では実力で信用を買えたりしますか?」
「腕が立つのは士官の理由になりますけど……何をする気ですか?」
「アミルカーレ様の信用を実力で勝ち取ってみようかと思いましてね。許婚なのでしょう?」
「何を言い出すんです!?」
「ほう……大した自信だな?」
「そうでもありませんよ。ティアナとも話していたのですが、ガーディエルを案内してもらうついでに腕比べと参りましょうか」
「いきなり行って相手してくれるわけがないでしょう!?」
「やってみなくては分かりませんよ。それにティアナから頼んで貰えれば可能性は高いですし」
わたしが何とかするのは教師陣ですか?!
実家のことを知ってるのは学長だけなのに!
心中で絶叫するのを差し置いて、ヴェルターは早く行こうと腕を取ってきます。
強引過ぎますよ!
「俺を越えられるなら認めてやる」
後ろから掛けられる静かな言葉がわたしの心に響きました。
主に『これいじょう、ややこしくしないで』という方向でしたが。
道も分からないはずなのに先を歩くヴェルターが振り向きました。
「ですがアミルカーレ様は学生でしょう?」
「ヴェルター、彼は学園主席です。場合によっては……」
「ほう、随分と優秀なのですね。ではお願いしましょうか」
「いい度胸だ……俺に喧嘩を売るなんてな」
「どちらかと言えば私が売られてるような気がしますが……?」
そんな風にぼやくヴェルターがアミルカーレ様について歩き出しました。
わたしが中心に居るはずなのに、置き去りされて勝手に決まっていくだなんてどうなってるんですか!
思わず「ヴェルター!?」と悲鳴のような声を上げて呼び止めますが、
「君に私の価値を知らしめる良い機会でもありますからね?」
「えっ?」
顔をわたしに寄せたヴェルターは、にこやかに笑って囁き、ふわりと頭を撫でて歩き出します。
あれ、もしかしてヴェルターって……最初からアミルカーレ様を釣り上げる気でした?
頬が熱くなるのを感じながら、アミルカーレ様の刺さるような視線には気付かないよう努めました。
ちょっとこの賢者様は何してるのですか?!
「違うと言っても聞いてくれそうにありませんね。
ですがご学友がティアナの意思を曲げようとするのはどうなのでしょうか?」
「だから許婚だと……」
「ふむ? ティアナが信用できない許婚ですか?」
「貴様!」
「ちょ、ちょっとお待ちください! ヴェルター!?」
「おっとっと……ティアナがいくら軽くとも、いきなり飛びつかれては倒れてしまいますよ」
揺らぐ素振りもないくせに、何でそうあちこちを煽るんですか!?
わたしの貴族関係に亀裂が……あれ、もしかしてあんまり入りませんか……?
フルラネット家はヴァルプルギス家と縁を結ばなくても十分な力がありますし、そもそも両家とも良好な関係です。
むしろわたしを押し付けられるより、他国や他家と縁を結んだ方が良いかもしれません。
アミルカーレ様は次期当主ですし。
ですが、それはわたしの話。
召喚したと明かせない以上、一般人が貴族に逆らうのは危なすぎます!
もう手遅れかもしれませんが、わたしの謝罪で何とかことを収め……られるんでしょうか?
なぜかアミルカーレ様は実力がどうとか言ってますし……ともかく!
「伯爵家に口答えする方がどうかしています!」
「私はご学友に忠告しているだけですよ?
誰が聞いているかも分からない往来で『公爵家が選んだ教師に異論を唱える伯爵家』を演じている彼にね」
「――っ!!」
「ティアナの傍に急に私のような者が付いたことへのご心配は理解します。
しかし、貴族であればこそ、感情よりも事実の把握を優先されるべきでしょう。
今回の場合ならば信用、もしくは実力がそれに当たると思われますがいかがでしょうか?」
「わたしが実力も信用も保証しております!」
「ですがご納得いただけないようですよ?」
ヴェルターはわたしにだけ分かるように笑ってきます。
まさかこの状況を納めろってことですか?
無茶ぶりが過ぎませんか先生……。
「ときにこの世界では実力で信用を買えたりしますか?」
「腕が立つのは士官の理由になりますけど……何をする気ですか?」
「アミルカーレ様の信用を実力で勝ち取ってみようかと思いましてね。許婚なのでしょう?」
「何を言い出すんです!?」
「ほう……大した自信だな?」
「そうでもありませんよ。ティアナとも話していたのですが、ガーディエルを案内してもらうついでに腕比べと参りましょうか」
「いきなり行って相手してくれるわけがないでしょう!?」
「やってみなくては分かりませんよ。それにティアナから頼んで貰えれば可能性は高いですし」
わたしが何とかするのは教師陣ですか?!
実家のことを知ってるのは学長だけなのに!
心中で絶叫するのを差し置いて、ヴェルターは早く行こうと腕を取ってきます。
強引過ぎますよ!
「俺を越えられるなら認めてやる」
後ろから掛けられる静かな言葉がわたしの心に響きました。
主に『これいじょう、ややこしくしないで』という方向でしたが。
道も分からないはずなのに先を歩くヴェルターが振り向きました。
「ですがアミルカーレ様は学生でしょう?」
「ヴェルター、彼は学園主席です。場合によっては……」
「ほう、随分と優秀なのですね。ではお願いしましょうか」
「いい度胸だ……俺に喧嘩を売るなんてな」
「どちらかと言えば私が売られてるような気がしますが……?」
そんな風にぼやくヴェルターがアミルカーレ様について歩き出しました。
わたしが中心に居るはずなのに、置き去りされて勝手に決まっていくだなんてどうなってるんですか!
思わず「ヴェルター!?」と悲鳴のような声を上げて呼び止めますが、
「君に私の価値を知らしめる良い機会でもありますからね?」
「えっ?」
顔をわたしに寄せたヴェルターは、にこやかに笑って囁き、ふわりと頭を撫でて歩き出します。
あれ、もしかしてヴェルターって……最初からアミルカーレ様を釣り上げる気でした?
頬が熱くなるのを感じながら、アミルカーレ様の刺さるような視線には気付かないよう努めました。
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