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「ちぃのことさ、譲ってよ
俺昔からずっと好きなの」


「え?!ちょっ!!りっくん!!
話ってそれ??!」


「千秋先輩
ちょっと黙って
この人の話聞くから」


前髪で隠れた臣の表情を覗きこむと、闘志剥き出しの目でりっくんを睨みつけていた

怖い…


今の臣に僕が声をかけたとしても、火の粉が降りかかってくるかもしれない
暴力沙汰は起こらないだろうけど、一応臣の手を握っておいて行動を止められるよう準備しておく


「話聞くからってさ、率直に譲ってほしいって言ったんだけど、もしかして臣くん耳悪い?」


りっくんは自分の耳をとんとんと指先で叩いたあと、首を傾げる
これ以上、臣を挑発するのはやめてほしい
こっちがヒヤヒヤして仕方ないんだから


「ああ、耳悪くて聞こえなかったわ
誰がほしい??
女が欲しいとかなんとか??
良かったから紹介してあげようか?
律くんイケメンだからモテるよきっと」


臣は髪の毛を払うように首を横に振り、前髪をかき上げる


「いや、臣くんの隣にいる子のケツ掘りたいって言った」


「は???」


僕も臣と同じようには??といいたくなった
いきなり話の過激度を上げないでくれ…
天使なりっくんからけつを掘りたいなんて生々しい話すぎないか…??


「すいません、この子のケツ掘れるの俺だけなんですよ」


作った笑みを顔に貼り付けて、臣は僕の肩に腕を回して抱き寄せる
こんなイケメン同士の掘るとか掘らないとかそんな会話は、耳を塞ぎたくなるからやめてほしい


「千秋先輩、正直に断りな
俺が近くで見守っててあげる」

「いや、僕はさっき断って…」


りっくんには聞こえないくらいの声で会話をする


「俺、一途だからさ
簡単に諦め切れないんだよね
どう?ちぃ??
俺女遊びなんかもしたことないよ」


「え?ほんと??」


「何興味持ってんの
マジでやめて
今は千秋先輩一筋でしょ」


女遊びというワードに臣は気まづそうな顔をして、僕の頬を指で引っ張った
高校時代は女遊びの激しかった臣だから多少なりとも反応してしまう


「りっくん、本当に女遊びしないの??」


「うん、本当だよ
俺と付き合って確かめてみる?」


「興味持つなっつうの」


いつのまに、りっくんへ向けて近づいていた僕の腰に臣の両腕が回って、体が少し持ち上がったと思うと元の位置まで戻される


「臣くん、女遊び激しいんだ
ちぃ、かわいそうだね」


「もうとっくの昔のことなんで
今は千秋先輩しか見えないし」


こんな時でさえも、臣の言葉にキュンと胸が高鳴っていく














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