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しおりを挟む「………。」
「琥珀どうした?食わないの?」
「………」
「よし、じゃあ肉全部もらうな」
慶也が琥珀の皿のカレーの肉をスプーンの上に乗せたため、琥珀は肉を取られまいと慶也の手首を力強く掴む。
「食べんな、俺の」
「どうした?ボーとして」
慶也はスプーンで掬った肉を琥珀の口元に持っていくと琥珀は小さな口を大きく開く。その中に肉は吸い込まれていく。
「で、ボーとしてたけどどうした?」
「お前、そんな指輪つけてたっけ?」
慶也の右手の薬指には、昼間はついていなかったはずの指輪がはめられていた。
「ああ、これね
美沙がプレゼントしてくれた」
「プレゼント…??」
琥珀の眉尻がピクピクと揺れ出す。
慶也は手を顔の前に掲げる。
「うん、ペアリングらしい」
「らしいってなんだよ!どう見てもペアリングだろ!ローマ字で2人の名前の頭文字なんて入れやがって!前は恋人とペアなんて嫌だっていってただろ?!」
「いや、美沙がどうしてもして欲しいっていうから、断るわけにも…ね?」
慶也は微笑みながら指輪のはめられた指をそっと撫でる。
「今すぐ外せよっ!俺の目の前でそんなの見せんな!!」
琥珀が持っていたスプーンが怒りで震え、力のこもった声を出す。
「どうした琥珀?」
「どうしたじゃねえよ!俺の前でそんなもんはめて見せつけかよ!俺が慶也のことどう思ってるか知ってるくせに!!」
琥珀が勢いよく席から立ち上がるも慶也は興味なさそうに琥珀を見上げる。
「琥珀、行儀悪い
飯食い終わってからにしな」
「くそっ…!!」
「カレー食べてる時にクソなんて言わないで」
琥珀は大袈裟な音を立てながら椅子に座ると、皿に半分残っていたカレーを怒りをぶつけるように
ガツガツと口の中に運ぶ。
「カレーは飲み物ってやつ?」
「うるせえ!!
さっさと食べて帰れよ」
「うん、琥珀が元気そうなのも見れたし帰るわ」
自分から帰れよなんて言ったくせに、いざ帰ると言われたら寂しく感じてしまい、琥珀の口の端がへの字に曲がる。
「どうした?」
「なんでもない…帰れ」
「琥珀、そんな寂しそうな顔されたら俺帰れないんだけど??」
「帰れるだろ、彼女のことで頭いっぱいのくせに…俺のことなんかほんの少しも考えてないくせに…」
琥珀の瞳は徐々に潤んでいく。
「なーんでそうやってすぐ拗ねるの??」
慶也は琥珀の額を指でつんとつく。
「拗ねてねえよ!」
琥珀は慶也の背中を両手で押し、玄関まで強引に連れて行く。
「じゃあな!」
「うん、じゃあ帰る前に琥珀の顔ちゃんと見せて
俯いてちゃ見えないよ」
慶也は琥珀の顎に指を添えて上を向かせる。
琥珀は今にも泣きそうな顔で慶也を見つめた。慶也はその顔を見て困ったような笑みを浮かべる。
「…女たらし」
慶也は琥珀の頭に手を回すと弱い力で引き寄せて琥珀を抱きしめる
「たらしじゃないよ、じゃあ俺は帰るね
また明日」
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