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────4話*水面下の戦い

0・皇副社長と総括

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****♡Side・課長(唯野)

「頼むから、もう俺のことは放っておいてくれ」
「皇、待てよッ」
「痛っ……」

──皇副社長と、黒岩か?

 唯野は自動販売機へ向かおうとし皇と黒岩の二人が何か話しているところに出くわしてしまった。息をひそめ、事の成り行きを見守る。ことと次第では、黒岩を止めなければいけないと思いながら。
「これ、どうしたんだ? まさかあの後、社長に乱暴されたのか?」
「なんでもない」
「皇!」
「俺に……関わらないでくれ」
 皇は傷ついた表情をすると黒岩の手を振り払い足早に立ち去って行った。黒岩はぎゅっと拳を握りしめると俯く。
 そんな彼に唯野は近づいて行き、
「黒岩」
「!」
 声をかけると、彼が顔をあげる。
「なにかあったのか?」
 それは好奇心などではない。
「俺のせいで……」

──俺のせい? どういうことだ。
 さっきの様子からすると社長はついに実力行使に出たと受け取ったが、黒岩その引き金を引いたということか? だが、皇は受け入れていない。そういうことだろうか。

 唯野は既に塩田から”もしかしたら会社を辞めることになるかもしれない”という報告を受けている。その理由も聞いていた。

 電車でんまの元彼女は呉崎社長の娘。
 彼女が社長に頼んで電車との破局をなんとかしようとしていたとしても、それを社長が受け入れるだろうかと考える。
 仮に塩田が電車と別れたとして。
 皇は塩田のことが好きだ。そんなにうまくいくとは思えないが、二人がくっつく可能性が発生する。社長が皇を手に入れたいと思うのならばその可能性を見逃すわけがない。徹底的に叩き潰すはず。

──社長はどんな手を使ってでも、皇を手に入れるはずだ。

 四年も皇を好きにさせていたあの社長が行動を起こすほど、黒岩は社長を怒らせたというわけだろうか。だとしたら、彼を皇に近づけるのは危険だ。

──呉崎社長は恐ろしい人だ。
 皇の忠誠心を自分に向けるために彼を傷つけさせた。あの異例の昇進に不正はないが温情はあるはずなのだ。そして、この人事にも何かある。

──ん?

 課長はぶるっと震えるスマホを取り出すために、胸ボケットに手をやった。例の、スパイと疑わしき人からのメッセが来ている。
 内容は簡素なもので、社長の離婚が来週頭にでも成立するという情報だった。

──この人は何故、俺に情報を流してくるのだろうか?

 彼は社長側の人間であり、皇の動向をチェックしているという話であるが、敵側の自分にこんな情報を流してくるとなるとそれも疑わしい。もしかしたら、自分は社長側の人間だと思われているのだろうか。

──いや、だとしたら……辻褄が合わない。
 待てよ。そもそも、なぜ俺はあの人をスパイだと思ったんだ?
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