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────4話*水面下の戦い
9・何言ってるんだ、ほんと
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****♡Side・副社長(皇)
「なあ、紀夫」
「うん?」
皇は後部座席でおしゃべりをする二人をチラリとバックミラーで確認すると、カーナビに手を伸ばす。お気に入りの音楽をかけるためだ。皇は二人がシートベルトをしているのを確認し、アクセルを踏み込む。
──こういうのも、悪くないな。
そんなことを思いながら駐車場を出ようとすると、警備員が皇に向かって一礼した。皇は軽く片手を挙げる。皇の行きつけのスーパーは会社から近い。
セレブ向けなのか値段は高いが品揃いが良く、客でごった返さないところが特に気に入っていた。
「俺たちのイチャイチャを見せつけるのと、皇に二人で悪戯するのどっちがいい?」
「ぶっ」
塩田の質問に電車が吹き、皇はむせた。
「塩田……」
──まったく、何を言っているんだ。
「何、その選択肢」
「二択だ。三択は受け付けていない」
皇は二人のやり取りを聞きながら、羨ましいなと思う。
自分は塩田のことが好きだし、もし自分が付き合えたならと想像することもあるが、きっとこんな会話は出来ないだろう。周りからどんなに塩田と自分のほうが恋人同士のように見えると言われても、恋人同士の間にある信頼関係を超えることなど出来ないのだ。
「うーん、イチャイチャならいつも……」
「してないだろ」
「え、そう?」
電車の感覚はどうやら塩田とは違うらしい。
「じゃあ、どうしたらイチャイチャになるんだよ」
と、不思議そうな電車。
「難しいことを聞くな」
しかし塩田は回答できないようである。
「よし、スーパーに着いたぞ」
困った二人に助け舟を出すのは皇……というよりはスーパーだ。皇に続いて車を降りた二人だが、電車のほうはポカーンと建物を見上げている。
「なんかもう、外観からしてお洒落なんですけどー?」
「置いてくぞ」
気にせず先に行く皇と塩田に電車が慌ててついて行く。
「俺、アボカド食べたいな」
後から来たくせに野菜コーナーで立ち止まる電車。
皇は歩を止め彼の手元を覗き込んだ。
「何にするんだ?」
「エビも買ってサラダかな」
と、電車。
「採用」
「何その返事。面接じゃないんだから」
皇の言葉に彼はくくくっと笑い、籠を取る。塩田は先ほどからナスの芝漬けに目が釘付けのようだ。
「好きなモノ、入れろよ。塩田」
皇がそう声をかけてやれば、塩田は無表情でナスの芝漬けを三パック籠に入れる。
「おい、どんだけ芝漬け食う気だよ」
「明日と明後日の分」
と、塩田。
滅多に来れないスーパーであり、皇の奢りとあってか遠慮のない塩田に皇は可愛い奴だなと感じていた。
「ねえ、バナナ。バナナ買う」
「却下。お前はバナナ食い過ぎだ」
「えー」
「えーじゃない」
皇は久々のリラックスした時間を心の中で二人に感謝していたのだった。
「なあ、紀夫」
「うん?」
皇は後部座席でおしゃべりをする二人をチラリとバックミラーで確認すると、カーナビに手を伸ばす。お気に入りの音楽をかけるためだ。皇は二人がシートベルトをしているのを確認し、アクセルを踏み込む。
──こういうのも、悪くないな。
そんなことを思いながら駐車場を出ようとすると、警備員が皇に向かって一礼した。皇は軽く片手を挙げる。皇の行きつけのスーパーは会社から近い。
セレブ向けなのか値段は高いが品揃いが良く、客でごった返さないところが特に気に入っていた。
「俺たちのイチャイチャを見せつけるのと、皇に二人で悪戯するのどっちがいい?」
「ぶっ」
塩田の質問に電車が吹き、皇はむせた。
「塩田……」
──まったく、何を言っているんだ。
「何、その選択肢」
「二択だ。三択は受け付けていない」
皇は二人のやり取りを聞きながら、羨ましいなと思う。
自分は塩田のことが好きだし、もし自分が付き合えたならと想像することもあるが、きっとこんな会話は出来ないだろう。周りからどんなに塩田と自分のほうが恋人同士のように見えると言われても、恋人同士の間にある信頼関係を超えることなど出来ないのだ。
「うーん、イチャイチャならいつも……」
「してないだろ」
「え、そう?」
電車の感覚はどうやら塩田とは違うらしい。
「じゃあ、どうしたらイチャイチャになるんだよ」
と、不思議そうな電車。
「難しいことを聞くな」
しかし塩田は回答できないようである。
「よし、スーパーに着いたぞ」
困った二人に助け舟を出すのは皇……というよりはスーパーだ。皇に続いて車を降りた二人だが、電車のほうはポカーンと建物を見上げている。
「なんかもう、外観からしてお洒落なんですけどー?」
「置いてくぞ」
気にせず先に行く皇と塩田に電車が慌ててついて行く。
「俺、アボカド食べたいな」
後から来たくせに野菜コーナーで立ち止まる電車。
皇は歩を止め彼の手元を覗き込んだ。
「何にするんだ?」
「エビも買ってサラダかな」
と、電車。
「採用」
「何その返事。面接じゃないんだから」
皇の言葉に彼はくくくっと笑い、籠を取る。塩田は先ほどからナスの芝漬けに目が釘付けのようだ。
「好きなモノ、入れろよ。塩田」
皇がそう声をかけてやれば、塩田は無表情でナスの芝漬けを三パック籠に入れる。
「おい、どんだけ芝漬け食う気だよ」
「明日と明後日の分」
と、塩田。
滅多に来れないスーパーであり、皇の奢りとあってか遠慮のない塩田に皇は可愛い奴だなと感じていた。
「ねえ、バナナ。バナナ買う」
「却下。お前はバナナ食い過ぎだ」
「えー」
「えーじゃない」
皇は久々のリラックスした時間を心の中で二人に感謝していたのだった。
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