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────4話*水面下の戦い
20・好きな人は手に入らない【微R】
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****♡Side・社長秘書(神流川)
「誰の指示だ?」
社長の第一秘書である神流川は、彼の言葉に頭痛を感じ額を抑えた。
「存じ上げません」
社長はおかしい。今に始まったことではないが。この間のホテルの一件から更におかしくなったような気がする。
「まあ、いい」
全くよくなさそうな表情をし、社長室から夜景を眺める社長。
神流川はここ数年でどれほど自分が無力なのか改めて知った。
(株)原始人には数えきれないほどの部署が存在している。その中でも、一番小さな部署と言っても過言ではない”苦情係”。彼らが副社長である皇を救い出そうとしているというのに。
──彼を好きだと自覚したのはいつだったろうか。
皇に初めて出会った時、彼はまだ新米社員だった。彼が社長に気に入られるのに時間はかからなかったと思う。
気が強くて可愛らしい顔をしており、背筋のシャンとした皇優一。
あの時、どうして自分は社長を止めなかったのだろう。もしダメ元でも止めようとしていれば。
「神流川くん、コーヒーを入れてくれないか」
社長は夜景を見て心が落ち着いたのか、一つため息をつくと社長のデスクに戻る。どれほど金がかかっているのか分からないほど、豪華な社長室。
社長は皇が副社長になると同時に副社長室を改装した。あの部屋は皇のために作られたのだ。シックでお洒落な部屋。海外からわざわざアンティークな家具を取り寄せ、いかにも贔屓していますと言わんばかりの部屋を。
「こんな時間にお飲みになられるのですか?」
「なら、君が相手をしてくれるのかな」
デスクに両肘をつき、じっと神流川を見上げる二つの目。彼以外は抱かないくせに、などと思って黙っていると社長がフッと笑う。
「冗談だよ。皇くんの代わりなんて、誰にもできはしない。あの子は特別だ」
これ以上聞きたくなくて踵を返す神流川。濃いめのコーヒーを入れてやると思いながら。
簡易キッチンに向かい湯を沸かし始める。マグカップにいつもより多めのインスタントコーヒーを投入しながら、悍ましい記憶を呼び覚ます。
この時間はわざわざ豆から入れることはない。
『んッ……ああッ……見ないで……神流川』
あの光景を忘れることなんてできない。
頼まれものを社長に届けようと社長室に入れば、奥の仮眠室で皇は社長に抱かれていた。仮眠室にはちゃんとしたベッドが置かれている。泊まることの出来ない会社であるにも関わらず、そんなものが備えられている理由がずっと分からないでいた。そう、あの時までは。
しかも社長は行為を見せつけるために、神流川を呼んだのだ。
──社長はいつから、この想いに気づいていたのだろうか?
想ったところで、皇は手に入らない。助けることもできない、無力な自分。
そんな彼の心は後から入社した塩田に持っていかれてしまった。
あの時、少しでも動くことが出来ていたら、こんなに後悔することはなかったであろう。神流川は社長に従順でいる自分自身に吐き気がしたのだった。
「誰の指示だ?」
社長の第一秘書である神流川は、彼の言葉に頭痛を感じ額を抑えた。
「存じ上げません」
社長はおかしい。今に始まったことではないが。この間のホテルの一件から更におかしくなったような気がする。
「まあ、いい」
全くよくなさそうな表情をし、社長室から夜景を眺める社長。
神流川はここ数年でどれほど自分が無力なのか改めて知った。
(株)原始人には数えきれないほどの部署が存在している。その中でも、一番小さな部署と言っても過言ではない”苦情係”。彼らが副社長である皇を救い出そうとしているというのに。
──彼を好きだと自覚したのはいつだったろうか。
皇に初めて出会った時、彼はまだ新米社員だった。彼が社長に気に入られるのに時間はかからなかったと思う。
気が強くて可愛らしい顔をしており、背筋のシャンとした皇優一。
あの時、どうして自分は社長を止めなかったのだろう。もしダメ元でも止めようとしていれば。
「神流川くん、コーヒーを入れてくれないか」
社長は夜景を見て心が落ち着いたのか、一つため息をつくと社長のデスクに戻る。どれほど金がかかっているのか分からないほど、豪華な社長室。
社長は皇が副社長になると同時に副社長室を改装した。あの部屋は皇のために作られたのだ。シックでお洒落な部屋。海外からわざわざアンティークな家具を取り寄せ、いかにも贔屓していますと言わんばかりの部屋を。
「こんな時間にお飲みになられるのですか?」
「なら、君が相手をしてくれるのかな」
デスクに両肘をつき、じっと神流川を見上げる二つの目。彼以外は抱かないくせに、などと思って黙っていると社長がフッと笑う。
「冗談だよ。皇くんの代わりなんて、誰にもできはしない。あの子は特別だ」
これ以上聞きたくなくて踵を返す神流川。濃いめのコーヒーを入れてやると思いながら。
簡易キッチンに向かい湯を沸かし始める。マグカップにいつもより多めのインスタントコーヒーを投入しながら、悍ましい記憶を呼び覚ます。
この時間はわざわざ豆から入れることはない。
『んッ……ああッ……見ないで……神流川』
あの光景を忘れることなんてできない。
頼まれものを社長に届けようと社長室に入れば、奥の仮眠室で皇は社長に抱かれていた。仮眠室にはちゃんとしたベッドが置かれている。泊まることの出来ない会社であるにも関わらず、そんなものが備えられている理由がずっと分からないでいた。そう、あの時までは。
しかも社長は行為を見せつけるために、神流川を呼んだのだ。
──社長はいつから、この想いに気づいていたのだろうか?
想ったところで、皇は手に入らない。助けることもできない、無力な自分。
そんな彼の心は後から入社した塩田に持っていかれてしまった。
あの時、少しでも動くことが出来ていたら、こんなに後悔することはなかったであろう。神流川は社長に従順でいる自分自身に吐き気がしたのだった。
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