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────6話*狂いだした歯車と動き出す運命
0・課長の想いと板井【R】
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****♡Side・課長(唯野)
──塩田は手に入らない。
わかっていたことだ。
自分が求めていたものは、一体何だったのだろうか?
おそらく自分は、偽りの愛から逃れたかったんだ。
初めて恋をした。
今までに感じたことのない気持ちが心に芽生えたのだ。まるで荒れた荒野に癒しの風が吹いたような感覚。陽だまりのような温かな風。チャンスならあったのに、自分は二の足を踏んだ。そうこうしているうちに、彼の心は奪われてしまった。
それでも諦めきれない自分がいた。
だから現実を見て見ぬフリをして。
──そのくせ、好きな相手にあんな業務命令を出すのだから、俺はどうかしている。
皇を守りたかった。
それでも、塩田が好きだった。
自分はきっと、逃げ場が欲しかったんだと思う。
そんな自分を救う手。
「修二さん?」
”どうしたの?”と言うように、心配そうに瞳を覗き込む板井。彼も自分が見て見ぬフリをしてきたことの一つ。いつだって傍で支えてくれてくれていたのに、自分は気づかないふりをしてきた。
塩田に夢中になって、彼がどれほど自分のことを心配してくれているのか見ないふりをしてきたのだ。
「嫌なら、止めますか?」
そっと頬を拭う手に唯野は自分の手を添える。こんなに思ってくれていたのに、どうして自分は目を背けたのだろうか。
──怖かったんだ。知られるのが。
知ったらきっと変わってしまうから。
板井にそっぽを向かれたら、もう何も残ってないから。
自分さえ興味を抱かなければ、社長は板井になにもしないと思っていた。
『唯野課長。気を付けてくださいね。社長がまた何か企んでいるようですよ』
秘書の神流川に忠告され、背筋が凍る想いがした。戦うと決めたのは自分なのだから、報復に合うことくらいわかっていたのに。
「嫌じゃない」
「じゃあ、何故泣くんです?」
唯野はその質問には答えずに、彼の首に腕を絡める。
「板井は……何があっても俺の傍にいてくれる?」
「ええ。もちろんです」
──俺は二度目の恋をした。
そして、それに蓋をしようとしたんだ。
失いたくなかったから。
背中を撫でる温かい手。向き合う覚悟を決めたから、今こうしているのに。
「止めるなんて言うなよ」
すがるように言葉にすると、板井が息を吞む。
──愛されたい。
気が狂ったように求められたい。
俺にはもう、何も残ってないんだ。
この熱を失ったら……。
自分を救えるのは彼だけ。社長はそれに気づいていながら、今まで手を下さなかった。
「修二さん、挿れていいですか?」
「そ、そういう直接的なことは……」
「同意、大切ですよ?」
唯野がぎょっとして彼の顔に目をやると、ちゅっと口づけられる。
──わ、わざとか。
ドキドキしていると両股を持ち上げられ、彼自身が最奥の蕾に宛がわれる。唯野は身体から力を抜いた。
「んッ……はあッ」
くぷぷっと蕾を押し広げて侵入してくる板井自身。唯野は指とは比べ物にならない気持ちよさに、思わず彼にしがみつく。
「あッ……板井ッ」
──気持ちいい……。
唯野は欲望のままに彼を求めた。
「んんッ……」
何もかも忘れて、この快感と愛にだけ溺れていられたなら。そんなことを思いながら。
──塩田は手に入らない。
わかっていたことだ。
自分が求めていたものは、一体何だったのだろうか?
おそらく自分は、偽りの愛から逃れたかったんだ。
初めて恋をした。
今までに感じたことのない気持ちが心に芽生えたのだ。まるで荒れた荒野に癒しの風が吹いたような感覚。陽だまりのような温かな風。チャンスならあったのに、自分は二の足を踏んだ。そうこうしているうちに、彼の心は奪われてしまった。
それでも諦めきれない自分がいた。
だから現実を見て見ぬフリをして。
──そのくせ、好きな相手にあんな業務命令を出すのだから、俺はどうかしている。
皇を守りたかった。
それでも、塩田が好きだった。
自分はきっと、逃げ場が欲しかったんだと思う。
そんな自分を救う手。
「修二さん?」
”どうしたの?”と言うように、心配そうに瞳を覗き込む板井。彼も自分が見て見ぬフリをしてきたことの一つ。いつだって傍で支えてくれてくれていたのに、自分は気づかないふりをしてきた。
塩田に夢中になって、彼がどれほど自分のことを心配してくれているのか見ないふりをしてきたのだ。
「嫌なら、止めますか?」
そっと頬を拭う手に唯野は自分の手を添える。こんなに思ってくれていたのに、どうして自分は目を背けたのだろうか。
──怖かったんだ。知られるのが。
知ったらきっと変わってしまうから。
板井にそっぽを向かれたら、もう何も残ってないから。
自分さえ興味を抱かなければ、社長は板井になにもしないと思っていた。
『唯野課長。気を付けてくださいね。社長がまた何か企んでいるようですよ』
秘書の神流川に忠告され、背筋が凍る想いがした。戦うと決めたのは自分なのだから、報復に合うことくらいわかっていたのに。
「嫌じゃない」
「じゃあ、何故泣くんです?」
唯野はその質問には答えずに、彼の首に腕を絡める。
「板井は……何があっても俺の傍にいてくれる?」
「ええ。もちろんです」
──俺は二度目の恋をした。
そして、それに蓋をしようとしたんだ。
失いたくなかったから。
背中を撫でる温かい手。向き合う覚悟を決めたから、今こうしているのに。
「止めるなんて言うなよ」
すがるように言葉にすると、板井が息を吞む。
──愛されたい。
気が狂ったように求められたい。
俺にはもう、何も残ってないんだ。
この熱を失ったら……。
自分を救えるのは彼だけ。社長はそれに気づいていながら、今まで手を下さなかった。
「修二さん、挿れていいですか?」
「そ、そういう直接的なことは……」
「同意、大切ですよ?」
唯野がぎょっとして彼の顔に目をやると、ちゅっと口づけられる。
──わ、わざとか。
ドキドキしていると両股を持ち上げられ、彼自身が最奥の蕾に宛がわれる。唯野は身体から力を抜いた。
「んッ……はあッ」
くぷぷっと蕾を押し広げて侵入してくる板井自身。唯野は指とは比べ物にならない気持ちよさに、思わず彼にしがみつく。
「あッ……板井ッ」
──気持ちいい……。
唯野は欲望のままに彼を求めた。
「んんッ……」
何もかも忘れて、この快感と愛にだけ溺れていられたなら。そんなことを思いながら。
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