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━1章【HAPPY ENDには程遠い】━
1 初恋と再会
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****♡side・美崎
それは【美崎優也】がまだK学園の高等部1年だった時のこと。
K学園には中等部と高等部の生徒会役員同士の交流が年に一度開かれており、夜にはバンドのセッションを行うのが定例となっている。自分は役員ではないがその年の生徒会には楽器を弾ける人手が不足していることから、その交流会に借り出された。
二泊三日の”交流会”という名の旅行。
美崎はギターケースを肩にかけ、土産物屋のある旅館の入り口から宴会場へ向かっていた。
──場所を確認しないとな。
その前に何か飲みたい。
美崎は初めて訪れた旅館で右も左もわからない。日本は自動販売機大国。売られているものは実に多彩。ホテルなどにも設置されていることから、当然この旅館にもあるものだと思っていた。
しかし景観を大切にするこの『クヌギ旅館』には客室の並ぶフロアにしか自販機がなかった。その代わりと言っては何だが、土産物屋で売られている飲料は安めのようである。入り口で旅館のパンフレットを取り上げ、中を覗いた美崎は近くに自販機がないことに気づく。
──うーん。
仕方ないな、飲み物を買っていこう。
この旅館一階のロビーはかなり広い。修学旅行生などの受け入れも考慮しているのか土産物屋も数店舗あった。全体的にお洒落な和風の作り。その中の1店舗で何故か“チュロスの詰め放題”をやっていた。
美崎は周囲を見回し、なるほどと納得する。本日は学生が多い。これは客の争奪戦なのだと。
さすがにたくさんは要らないが何か軽く摘まめるものを購入しようと美崎が店内に足を踏み入れると、チュロス詰めのところに数名の他校生。同じ日、県外の中学校同士の交流会も行われていたのである。
──ん?
見ている分には何でもない光景だったが、話の内容が変わっていた。
二人の生徒が下ネタにも聞こえる卑猥なやり取りをしていたのである。背中を向けているのでどんな容姿の生徒かはわからない。
──中学生か、可愛らしいな。
美崎がそのまま通り過ぎようとした時だった。
「おーまーえーらー!」
「はい?」
彼らの後ろに立っていた上級生らしき男子生徒が、二人の手元を覗きこむ。
「何卑猥な会話しとんじゃ!」
──え?
カッコいい。
“脳は0.5秒で恋に落ちる”
誰かが言っていたことで、人伝に聞いた言葉。美崎はいままで、そんなわけないだろうと思っていた。
黒髪にお洒落な短髪ヘアスタイル。シュッとした顔立ちに、がっちりと筋肉質ながらゴツすぎない体型。声も好みだった。
美崎は思わず、相手のネームプレートに目をやる。
“鶴城”
しかし制服を見る限り、県外の中学。
きっとそれは美崎にとって初恋。だが二度と会うことはない相手だと思っていた。まさか一年後にその相手と再会することになるなんて、その時は思っても見なかったのである。
**・**
その翌年──。
その猿は……違った、その生徒は嵐のように激情を携えてやってきた。
1年Aクラス。今年K学園高等部に入学してきた……【鶴城慎】である。
猿ではない。
再会場所はK学園高等部の生徒会室。
「なんで理不尽に嫌がらせされなきゃならないんだ?!」
美崎は当時、生徒会副会長。
その時生徒会室には、風紀委員会の委員長である【大崎圭一】がいた。彼は美崎の一学年上。
「されたのか?」
生徒会長よりも先に圭一が眉を潜めそう問う。
その瞬間、生徒会室には戦慄が走った。
誰もが思った。“大崎 圭一”だけは怒らせてはいけないと。
もっとも、美崎はそれどころではなかったが。
「今か? 案内しろ」
圭一は傍らにあった金属バットを取り上げる。
「おい、大崎! そんなもの持ってどこ行くんだ!」
生徒会長こと、【古川悠】は慌てた。
「殺られる前にヤれって言葉知らないのか?」
「まて、後ろの“やる”は意味がちがくない?」
「平和解決」
「何いってんだよ! お前そもそも……どう……」
キッ! と圭一に睨み付けられ、生徒会長の古川は黙った。
「俺のマグナムをぶちかますとは言っていない」
鶴城が初恋の相手と気づき、こっそり眺めていた美崎は圭一の言葉にぎょっとして、彼に視線を向けた。圭一はどや顔で金属バットを掲げている。
──殴るんじゃなくて、あれを突っ込む気なのか?!
さすが、クレイジー大崎。
ヤバい、ヤバすぎる。
「さあ、行くぞ。なんだっけ?」
『なんだっけ?』も何も、鶴城はまだ名乗ってすらいない。
「鶴城です」
「案内しろ、鶴城」
「いやいや、待って! 大崎」
先陣をきる圭一に鶴城は続く。古川がそれを追った。
「圭一ちゃああああん!」
「やめろ! うざい!!」
なにやら廊下で騒いでいる。
生徒会メンバーはしばらく固まっていたが、
「美崎先輩は行かないんですか?」
と今年風紀委員会に入った女子生徒の白石に問われる。
「まあ、会長がついて行ったから大丈夫だろ」
「いや、むしろ不安しかないのですが」
白石は不安気に生徒会室のドアを見つめていた。
それは【美崎優也】がまだK学園の高等部1年だった時のこと。
K学園には中等部と高等部の生徒会役員同士の交流が年に一度開かれており、夜にはバンドのセッションを行うのが定例となっている。自分は役員ではないがその年の生徒会には楽器を弾ける人手が不足していることから、その交流会に借り出された。
二泊三日の”交流会”という名の旅行。
美崎はギターケースを肩にかけ、土産物屋のある旅館の入り口から宴会場へ向かっていた。
──場所を確認しないとな。
その前に何か飲みたい。
美崎は初めて訪れた旅館で右も左もわからない。日本は自動販売機大国。売られているものは実に多彩。ホテルなどにも設置されていることから、当然この旅館にもあるものだと思っていた。
しかし景観を大切にするこの『クヌギ旅館』には客室の並ぶフロアにしか自販機がなかった。その代わりと言っては何だが、土産物屋で売られている飲料は安めのようである。入り口で旅館のパンフレットを取り上げ、中を覗いた美崎は近くに自販機がないことに気づく。
──うーん。
仕方ないな、飲み物を買っていこう。
この旅館一階のロビーはかなり広い。修学旅行生などの受け入れも考慮しているのか土産物屋も数店舗あった。全体的にお洒落な和風の作り。その中の1店舗で何故か“チュロスの詰め放題”をやっていた。
美崎は周囲を見回し、なるほどと納得する。本日は学生が多い。これは客の争奪戦なのだと。
さすがにたくさんは要らないが何か軽く摘まめるものを購入しようと美崎が店内に足を踏み入れると、チュロス詰めのところに数名の他校生。同じ日、県外の中学校同士の交流会も行われていたのである。
──ん?
見ている分には何でもない光景だったが、話の内容が変わっていた。
二人の生徒が下ネタにも聞こえる卑猥なやり取りをしていたのである。背中を向けているのでどんな容姿の生徒かはわからない。
──中学生か、可愛らしいな。
美崎がそのまま通り過ぎようとした時だった。
「おーまーえーらー!」
「はい?」
彼らの後ろに立っていた上級生らしき男子生徒が、二人の手元を覗きこむ。
「何卑猥な会話しとんじゃ!」
──え?
カッコいい。
“脳は0.5秒で恋に落ちる”
誰かが言っていたことで、人伝に聞いた言葉。美崎はいままで、そんなわけないだろうと思っていた。
黒髪にお洒落な短髪ヘアスタイル。シュッとした顔立ちに、がっちりと筋肉質ながらゴツすぎない体型。声も好みだった。
美崎は思わず、相手のネームプレートに目をやる。
“鶴城”
しかし制服を見る限り、県外の中学。
きっとそれは美崎にとって初恋。だが二度と会うことはない相手だと思っていた。まさか一年後にその相手と再会することになるなんて、その時は思っても見なかったのである。
**・**
その翌年──。
その猿は……違った、その生徒は嵐のように激情を携えてやってきた。
1年Aクラス。今年K学園高等部に入学してきた……【鶴城慎】である。
猿ではない。
再会場所はK学園高等部の生徒会室。
「なんで理不尽に嫌がらせされなきゃならないんだ?!」
美崎は当時、生徒会副会長。
その時生徒会室には、風紀委員会の委員長である【大崎圭一】がいた。彼は美崎の一学年上。
「されたのか?」
生徒会長よりも先に圭一が眉を潜めそう問う。
その瞬間、生徒会室には戦慄が走った。
誰もが思った。“大崎 圭一”だけは怒らせてはいけないと。
もっとも、美崎はそれどころではなかったが。
「今か? 案内しろ」
圭一は傍らにあった金属バットを取り上げる。
「おい、大崎! そんなもの持ってどこ行くんだ!」
生徒会長こと、【古川悠】は慌てた。
「殺られる前にヤれって言葉知らないのか?」
「まて、後ろの“やる”は意味がちがくない?」
「平和解決」
「何いってんだよ! お前そもそも……どう……」
キッ! と圭一に睨み付けられ、生徒会長の古川は黙った。
「俺のマグナムをぶちかますとは言っていない」
鶴城が初恋の相手と気づき、こっそり眺めていた美崎は圭一の言葉にぎょっとして、彼に視線を向けた。圭一はどや顔で金属バットを掲げている。
──殴るんじゃなくて、あれを突っ込む気なのか?!
さすが、クレイジー大崎。
ヤバい、ヤバすぎる。
「さあ、行くぞ。なんだっけ?」
『なんだっけ?』も何も、鶴城はまだ名乗ってすらいない。
「鶴城です」
「案内しろ、鶴城」
「いやいや、待って! 大崎」
先陣をきる圭一に鶴城は続く。古川がそれを追った。
「圭一ちゃああああん!」
「やめろ! うざい!!」
なにやら廊下で騒いでいる。
生徒会メンバーはしばらく固まっていたが、
「美崎先輩は行かないんですか?」
と今年風紀委員会に入った女子生徒の白石に問われる。
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白石は不安気に生徒会室のドアを見つめていた。
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