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━1章【HAPPY ENDには程遠い】━

2 素直になれない【R】

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 ****♡side・美崎

「誰が付き合うかよ」
 それはおつき合いの返事。
「美崎?」
 美崎の返事に鶴城は驚いた声を漏らす。
「お前が好きなのは片倉だろ?」
 彼に好きな人がいることは以前から知っていた。それも見た目が自分とは正反対ともいえる相手。

 ──ヤった責任だったら不要だ。
  こんな惨めなつきあい方ってあるか?

「バカにすんなよ」
 美崎は眉を寄せ、彼の胸を押しのける。
「美崎!」
「同情か? ずっと好きだったんだろ?」
 彼の想い人はとても可愛らしい子で、名を【片倉葵かたくらあおい】と言った。
「確かに小学校の頃から好きだったけど」
 鶴城は目を泳がせ言葉を濁す。そんな彼の態度を怪訝に思っていると、腕を掴まれ再び組み敷かれた。力の差は歴然。逃れることことなど出来はしない。悔しさと情けなさに涙が出そうになる。

「ずっと好きでいろって言うのか?」
 美崎を見つめるその目は真っ直ぐで。
「やめろ」
「それこそ、理想の押しつけじゃないのか?」
 肌を滑る鶴城の手に、ぎゅっと目を閉じた。
「目の前に一途に自分を想ってくれてる人が居るのに、俺はよそ見すら許されないわけだ」
「触るな」
 さっきほどまで感じまくっていたことを思い出し、嫌悪感が襲う。無理矢理なんてイヤなのに愛した男から与えられる快楽に抗えない自分がいた。
「美崎、つき合おう?」
「嫌だ!」

 ──お情けや責任でなんてつき合って欲しくない。
  俺は、ほんとに好きなのに!

 美崎の拒絶の言葉に鶴城がため息をつく。
「だったら、力ずくで手にいれてやる」
「は?」
 何を言っているんだと思った。好きでもない相手を無理矢理自分のものにするなど馬鹿げている。
「実質あと、三ヶ月しかないんだぞ」

 ──え?
  なに言って……。

「自分が三年なこと忘れたのか?」
 鶴城の言葉から、十一月からは自由登校が始まることを言っているのだと気づいた。
「美崎がいなくなったらって思ったら俺……」
 いつの間にか鶴城の手が美崎の中心部をなで始めていた。
「美崎は平気? 俺がいなくても」
 忘れようとしたのに。
 諦めようとしたのに。
「平気なわけないだろ! バカやろ……」

 ──ズルい。
  ズルいだろ、こんなやり方ッ。

「やッ……」
「身体はイヤとはいってない」
 耳たぶを噛まれ、美崎自身を握り込まれる。先ほどまで何度もイかされ全ての熱を出し切ったと思っていたのに、再び中心部に熱は集まり始めた。
 なんでそんなに巧いんだと思うくらい、その愛撫は的を得ていて。
 『遊びなれているんだろ』と抗議すれば彼に困った顔をされ、
「同じ男なんだから、イイとこなんて分かるだろ」
 と言われてしまう。
「んんッ……」
「感じやすいんだな」

 ──ばかっ!
  そんなんじゃない。
  相手がお前だから……。
  好きな人だから。
  どうしてわからないんだよっ。

「ああッ……も……やあッ……」
「嘘つくなよ、後ろひくついてる。れて欲しくて堪らないくせに」
「ちがッ……」

 ──快楽が欲しいわけじゃない。
  お前が欲しいんだ……。
  鶴城がどんなに身体だけ求めても、俺はお前が好きで。
  その心が欲しいのに。

「はあッ……」
「どこがイヤなのか言ってみろよ」
 耳元で優しい声。錯覚してしまいそうになる。
「ばかッ……れるなあッ……」
 充分に慣らされジェルでトロトロにされた美崎の蕾は、難なく彼を受け入れてしまう。くぷぷっと鶴城自身を受け入れ擦れる感触に甘い声を漏らした。
「あッ……あ……んんッ」
「凄い、感度」
「あああッ……だめッ」
 抜いて欲しくて彼を押し戻そうとするが両手首を掴まれ口づけられる。
「んんッ……」
「堪んない」
「も、許して……」
「腰揺れてるくせに」
 蕾からは彼が動くたびにぷちゅッぷちゅッと音がして、あまりの気持ちよさに腰が揺れた。

 ──初めてだったのに……。
  なんでこんな。

   **・**

『絶対付き合わない!』
『強情なお姫様だな』

 鶴城は一旦引いた。
 好き勝手された全身が鶴城を好きだと悲鳴をあげても、屈するわけにはいかない。一時的な感情に振り回されてぬか喜びするだなんてことは言語道断である。
 ただ、鶴城がこんなにも強引で身体の相性が抜群だとは思ってもいなかった。好きな相手とその想い人と進展させるためなら自分が悪者になるのも厭わない優しい男だ。自分の気持ちなんていつだって二の次。

 ──だから惹かれた。

 それなのに何故、自分に対してこんなに強引なのか美崎にはまったく理解が出来ない。

「美崎、なんで生徒会室来ねえの?」
 不躾に風紀委員会室のドアを開け、奥に向かって言う鶴城は珍しく不機嫌だ。
「飯、食おうや」
 出会ってから昼はずっと一緒。はじめは昼飯を取るついでにイジメ対策などを話し合うためだったが、いつしか気が合い昼は一緒というのが暗黙の了解となっていた。

 ──どう考えても、あんなことがあった後に、普通でなんていられないよな?
  鶴城は一体どういう神経をしているんだ?

 そんなことを思っていると腕を掴まれ驚く。
 美崎が彼を見上げると、
「そんなに嫌なのか?」
 と悲しい顔をされた。
「考え事していただけだよ」
 と返せば、風紀委員会室に居た役員達はケンカでもするんじゃないかと二人の様子を固唾を呑んで見守っていることに気づく。
「行くから、そんな顔するなよ」
 さすがの美崎も他人は巻き込みたくない。
 弁当を掴むと鶴城を振り払い、足早に風紀委員会室を後にした。
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