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━2章【不器用な二人】━
7『運命を感じて』
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****♡Side・美崎
──俺たちは、いつでもすれ違っている。
鶴城が戸惑った表情をしているのを見て、美崎は選択を間違えたのかも知れないと感じていた。
「優也、あのさ」
いつもなら乗ってくる彼は真剣な表情をし、こちらを見ている。
「俺は、身体だけ求めているわけじゃない。ちゃんと心が欲しい。でも、なかなか手に入れられなくて、いつか優也が自分の傍から居なくなってしまうんじゃないかって怖いんだよ」
鶴城は逞しいその腕で美崎を抱き上げると、土間に座った。彼に横抱きにされ、美崎は大人しくその胸に額を寄せる。
「だから、約束が欲しいんだ。婚約という、これから先も傍に居てくれるって約束が、さ」
確かに自分は、彼が強いと思っていた。自信家で、強引で。しかしそれが拒否をねじ伏せるだけものだとしたら、話は変わってくる。
「それに、離れている時間が多くなるだろ」
同じ家に住んでいても、別々の場所へ行く。それは社会人とて同じだと思うかも知れないが、会社というのは人と関わることがメインなわけではない。確かに営業職や接客業は人と接する仕事かもしれないが、一線を超えることを目的としていいるわけではない。だが、学び舎というところは違う。
社会に出ると人の好き嫌いではなく、折り合いをつけながら世を渡っていかねばならないから人が鼻から社交辞令で人に接するのであって、学生生活というのは違う。気の合う仲間を作る場所でもある。離れている間に、自分よりも居心地の良い相手を見つけてしまったなら?
「美崎は先輩から可愛がられるタイプだし」
今までは、風紀委員会に所属していたため、他の友人と行動を共にするという事が少なかった。昨年は大崎 圭一をはじめとする美崎と仲の良い先輩たちが在籍していて、美崎をさりげなく守ってくれていた。だがキャンパスは広い。全国規模で各地から人が集まる。新しい出会いもあるだろう。
今までは同じく高校生だった。自分は大学生、恋人は高校生。住む世界が変わるし、今まで同じ場所に居たからこそ共感を得られてきただけなのだろうと知るだろう。きっと鶴城はそういう事を心配しているのだと思った。
「慎、俺ね」
「ん?」
「俺は、慎に一目ぼれしたんだ」
彼は知らない。自分が彼に惚れた時のことを。話すべきだと思った。
「慎。中学の時、他校との交流会で旅館に泊まったろ」
「え、ああ」
「チュロスの袋詰めのところに居た」
懐かしいな、と思う。下級生と思しき者に声をかける彼はとても楽しそうだった。声も見た目もカッコよくて、一瞬で恋に落ちたのだ。
──恋って落ちるものなんだと、実感したのもあの時だ。
しかし彼は他校生で、しかもまだ中学生。二度と会えないと思って諦めたのだ。それは美崎にとって初恋。当時のことを彼に話ながら、想いを巡らす。
「慎が生徒会室に来た時、運命かなって思ったよ」
しかし、彼には好きな人がいた。二度も諦めなければならなかった初恋。
「二度も諦めて、今こうして傍に居るんだ。三度めは嫌だよ」
──俺にとっては、運命なんだ。誰が違うと言っても。
何故か涙が溢れてしまい、彼にぎゅっと抱きしめられたのだった。
──俺たちは、いつでもすれ違っている。
鶴城が戸惑った表情をしているのを見て、美崎は選択を間違えたのかも知れないと感じていた。
「優也、あのさ」
いつもなら乗ってくる彼は真剣な表情をし、こちらを見ている。
「俺は、身体だけ求めているわけじゃない。ちゃんと心が欲しい。でも、なかなか手に入れられなくて、いつか優也が自分の傍から居なくなってしまうんじゃないかって怖いんだよ」
鶴城は逞しいその腕で美崎を抱き上げると、土間に座った。彼に横抱きにされ、美崎は大人しくその胸に額を寄せる。
「だから、約束が欲しいんだ。婚約という、これから先も傍に居てくれるって約束が、さ」
確かに自分は、彼が強いと思っていた。自信家で、強引で。しかしそれが拒否をねじ伏せるだけものだとしたら、話は変わってくる。
「それに、離れている時間が多くなるだろ」
同じ家に住んでいても、別々の場所へ行く。それは社会人とて同じだと思うかも知れないが、会社というのは人と関わることがメインなわけではない。確かに営業職や接客業は人と接する仕事かもしれないが、一線を超えることを目的としていいるわけではない。だが、学び舎というところは違う。
社会に出ると人の好き嫌いではなく、折り合いをつけながら世を渡っていかねばならないから人が鼻から社交辞令で人に接するのであって、学生生活というのは違う。気の合う仲間を作る場所でもある。離れている間に、自分よりも居心地の良い相手を見つけてしまったなら?
「美崎は先輩から可愛がられるタイプだし」
今までは、風紀委員会に所属していたため、他の友人と行動を共にするという事が少なかった。昨年は大崎 圭一をはじめとする美崎と仲の良い先輩たちが在籍していて、美崎をさりげなく守ってくれていた。だがキャンパスは広い。全国規模で各地から人が集まる。新しい出会いもあるだろう。
今までは同じく高校生だった。自分は大学生、恋人は高校生。住む世界が変わるし、今まで同じ場所に居たからこそ共感を得られてきただけなのだろうと知るだろう。きっと鶴城はそういう事を心配しているのだと思った。
「慎、俺ね」
「ん?」
「俺は、慎に一目ぼれしたんだ」
彼は知らない。自分が彼に惚れた時のことを。話すべきだと思った。
「慎。中学の時、他校との交流会で旅館に泊まったろ」
「え、ああ」
「チュロスの袋詰めのところに居た」
懐かしいな、と思う。下級生と思しき者に声をかける彼はとても楽しそうだった。声も見た目もカッコよくて、一瞬で恋に落ちたのだ。
──恋って落ちるものなんだと、実感したのもあの時だ。
しかし彼は他校生で、しかもまだ中学生。二度と会えないと思って諦めたのだ。それは美崎にとって初恋。当時のことを彼に話ながら、想いを巡らす。
「慎が生徒会室に来た時、運命かなって思ったよ」
しかし、彼には好きな人がいた。二度も諦めなければならなかった初恋。
「二度も諦めて、今こうして傍に居るんだ。三度めは嫌だよ」
──俺にとっては、運命なんだ。誰が違うと言っても。
何故か涙が溢れてしまい、彼にぎゅっと抱きしめられたのだった。
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