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21 考えてもどうにもならない

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 今までに良い仲になった娘は、何人かいた。

 いたのだけれども……、いつもなんだかしっくりこなくて次第におざなりになり、こっ酷く振られてばかりで長続きした試しがない。しかも、付き合っている最中どころか振られた後でさえ、領主に感じたような寂しさや切なさは覚えなかった。

「――薄らボケで薄情な男ね!」

 なんて、言ってたのは誰だったか。

 言われた相手の顔を覚えていない。……そんなだから薄情だとか、薄らボケなんて言われるのかもしれない。

 女に力仕事を任せっきりにしたり、気に入らなければ殴るとかそんな乱暴な質ではないし、家族の一人や二人は軽く養えるくらいは稼いでいて、無駄遣いはしない。亭主にするには良い男だと言われたこともあるのに、それだけでは駄目らしい。

 何かが足りないのか。やっぱり薄らボケだから駄目なんだろうか。

 ラズにはよく、鈍臭いから心配だなどと言われたし、近所の悪ガキからもトロいだの鈍いだの……あとはなんだったか忘れたが……、からかわれたりもした。家を出てからはどうにか色々こなせるようになったが、胸を張って自慢できるのは弓の腕だけだ。

 弓が得意なだけでは、駄目なのか。もっと違う甲斐性が必要なんだろうか。

「うーん……」

 足りないのは、自分ではなくて相手の方だとも言えるのか。なにかがしっくりこないのだから。一緒に居て、しっくりくる相手となら所帯が持てそうな気がする。こんな自分と死ぬまで添い遂げてくれる人が、この辺境のどこかにいると良いが。

 そうでなかったら、一生独り身だ。それこそ寂しい気がする……。

 「ふぁ……」

 気付けば、段々と考えがずれて全く別のことに頭を悩ませてしまっていた。

 領主とのことは自分の気持ちでどうにかなるものでもないし、考えるだけ無駄だ。所帯のことも今すぐどうこうなんて、やっぱり無理だろう。考えるのに疲れてくると、眠気が強くなって欠伸が止まらなくなり、出したくもないのに涙が出てくる。

 「なんだかなぁ」

 なにも考えていなくても陽は昇って、沈んで、また昇る。

 狩りをして稼いで、飯を食って時々蜜酒を飲んで酔ったりして、夜には眠くなって寝る。一日が勝手に過ぎて行く。難しいことなんて、そうやって生きる上ではなにもない。単純な繰り返しだ。考えてもどうにかならないことは、考えない方が楽だ。

 ひと際大きな欠伸をして、気怠い体を寝台に沈めて微睡まどろむ。

 ――それから幾らも経たないうちに、シタンは本格的に寝入ってしまった。
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