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別れと始まり
武器
しおりを挟む男の子を追い払ったあの後、モルヴィス(これからは兄さんと呼ぼう)たちと一緒に武具屋に入る。中には多種多様な武器や防具があって、初めてみるからかキラキラと輝いて見えた。その奥には工房があって熱せられた鉄を打つ音が入り口まで聞こえて来ていた。
武具屋ってこんな感じになってるんだね。
「さて、ユウキ。お前が一番興味を惹く武器はなんだ?」
「ええと……、すぐに決められないからちょっと見て周って来てもいい?」
「ああ、存分に見てこい」
私が一番興味を惹く武器か……。どれもこれもキラキラしてて魅力的なんだけどなぁ。一通り使ってみたいけど、自分自身に合いそうなのはなんだろう?なんて思いながら周りを見ていると、前世で何度かテレビで特集していた日本ならではの武器が目に飛び込んできた。それは黒い鞘に収まった白い柄の日本刀だった。その横には薙刀があった。
値段が日本刀が10000Gで薙刀が6000Gとかなり高額ではあるが、私が長年貯めていたお小遣いがあるからなんとかなりそう。こんなにお小遣いがたくさんあるのは、両親に追い出される前にこればかりは両親に感謝しよう。
「これとこれにする!」
「極東に島国の剣と槍か。良いだろう。オヤジ、この2本を頼む」
「おう、ちょっと待ってろ」
モルヴィスが工房の奥に声をかけると、立派な髭を生やした小柄なおじさまが球のような汗を流しながらこちらに来た。小柄で髭面なおじさまといえば、あのファンタジーで有名なドワーフが想像つく。
このおじさまもドワーフなんだろうか?
「極東の島国の武器であるカタナとナギナタを選ぶたぁ、あんた、なかなか良い目をしているな」
「俺じゃねえよ。俺の義妹が選んだんだ」
「ほぉ?嬢ちゃんがか?」
「はい。一目惚れと言いますか……」
実際は前世で見たことがある武器だから、なんて言えないから一目惚れということにした。じゃないと説明が色々と面倒だし。
「そうかそうか。このカタナやナギナタは馴染みがないからか、この店に来てから1年とちょっと売れずに残っていてな。正直困っていたんだ。だから買ってくれた礼として、合わせて5000Gにまけてやる。手入れはしっかりやらないと錆びちまうから、しっかり手入れをしてやってくれ。やり方は後で教える。これには金はいらねえよ」
「ありがとうございます!」
定価で払っても問題はなさそうだったけど、おじさまの厚意に甘えよう。それに、手入れの方法までは知らなかったからとてもありがたい。
後で追加で何か買わせてもらおう。そう日本刀と薙刀の代金を払いながら思った。
「ユウキ、あと買わないといけないのはないのかい?」
「あ!おじさま!この子につける鞍はありますか?」
ケニスの言葉でハッと大事なことを思い出した私は真っ先におじさまに尋ねる。馬につける鞍は何度か見たことがあるけど、獣用のは見たことがない。もしかしたらないかもだけど、聞いてみたことに越したことはない。
「随分とでかい狐だな。このくらいのデカさだと、魔狼用の鞍をデカくすればでなんとかなりそうだな。ちょっと待ってろ」
そう言っておじさまが工房の奥へ引っ込んでしまった。と思ったら、今度は何やら大きな物音が……。
なんか仕事を増やしたみたいで申し訳ない。
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