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16 聖竜城での動き2

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 昨日のモンターユ公爵との話し合いは、結局まとまらずに終わっている。
 公爵はどう説明するのかと心配しながらクリスは見守ったが、案の定。報告書を読み上げるために立ち上がった公爵は、クローディアに全面的な責任があるかのような説明をおこなった。

 それに対して反論したい気持ちでいっぱいになるクリスだが、ここで下手な発言をしてしまえばまた疑いを掛けられてしまう。歯がゆい気持ちで、成り行きを見守った。

「竜神様にも、何かお考えがあったのだろう。筆頭聖女をあまり責めるな」

 しかし、国王の返答はクローディアを擁護するもの。
 クローディアに厳しい罰を与えてもらおうと思っていたモンターユ公爵は、じわりと汗が滲み焦りの色を見せた。
 かつて国王が、クローディアを可愛がっていたことも知っているので、余計に気持ちが焦る。

「しかし……」
「して、クリス枢機卿。筆頭聖女は今、どうしておる?」
「教皇聖下のご判断により、筆頭聖女様は聖女から除名され、追放されました。先ほど彼女の旅立ちを見送ったところでございます……」
「なんと愚かな……!」

 国王は仮面の上から、こめかみ辺りを押さえた。普段は表情が読み取れず、何を考えているのかよく解らないが、今は呆れているのだと誰の目からも見て取れた。

 それから国王は、公爵へと顔を向ける。仮面の下が怒りに満ちているであろうことは、想像に難くない。この場にいるほとんどの者が、同じ気持ちだったのだから。
 クローディアは国にとって、宝のような存在。その彼女を追放などあってはならないことだ。

「モンターユ公爵、そなたの差し金か!」
「決してそのようなことは! 聖下が勝手に……」

 公爵としても、クローディアの除名までは望んでいなかった。彼女がいなければ、国の安全が守られないことくらいは知っている。

 しかし、その言葉に意を唱えて立ち上がったのは教皇だった。

「公爵! ワシに責任を押し付けるおつもりですか! 聖女の力よりも、モンターユ騎士団のほうが優れているとおっしゃったのは、あなたでしょう!」
「それとこれとは、話が別だ!」

 普通の聖女一人ならば騎士団でも補えるだろうが、クローディアは特別な存在。教皇はなぜそんなことも解らないのかと、公爵は歯をギリギリと噛み合わせた。

「モンターユ公爵、教皇聖下。二人にはそれ相応の責任を取っていただくぞ」

 国王は二人に、厳しく対処してくれるようだ。
 これ以上クローディアには被害は及ばないと思ったクリスは、安堵のため息をつく。
 それから国王は、こう付け足した。

「クリス枢機卿。神殿側は任せたぞ」

 国王の言わんとすることは、クリスにはすぐに理解できた。クリス自身も同じ事をしようとしていたからだ。
 教皇は神殿のトップではあるが、それを任命するのも解任させることができるのも、五人いる枢機卿による多数決。
 今回は必ずや全会一致で、教皇の解任を要求することができるはずだ。

「お任せくださいませ。国王陛下」
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