あのさ、まだ好きでいてもいいですか?

菜の花

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泣き虫な兄

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「葉月、もう行くからな」

「はぁ~い・・・」

あたしは、気の抜けた声で返事をし、まだはっきりと開かない目を擦りながら時計を見る。

っていうか、もうお兄ちゃんが家を出るって事は・・・。

それを見た瞬間、血の気が引いたのが自分でもわかった。

『6:05』を時計の針は指している。

「遅刻するーーーー!!」

あたしはいつもより急いで支度をする。

サッカー部のマネージャーだから、遅れるわけにはいかない。

「もぉ~~! お兄ちゃん、起こしてくれたっていいじゃ~ん!!」

バタバタと走る足音を立てながら、家を出た。

家の門の前には予想通り、腹を立てている愛流がいた。

「葉月ちゃん、遅いよー!」

「ごめんごめん! 早く行こ!」

愛流はあたしの一番の友達・・・いや、親友。

あたしと同じように、サッカー部のマネージャーだ。

走りながら学校に向かっていると、見馴れた後ろ姿が視界に入る。

その正体は、あたしが片思いしている男の子・深山京介だ。

「葉月ちゃん、目の前に深山くんがいるよ~」

愛流がニヤニヤしながら言った。

「もうっ! 愛流ってば!!」

愛流にからかわれ、あたしの体温が上がった。

だけどあたしは、京介の後ろ姿を見つめた。

小さい頃は気付かなかったけど、京介は顔立ちが整っていて、女子にはモテモテだ。

だからあたしは、ずっと片思い中。

「ほ~らっ! 早く深山くんの所に行って来たら?」

そう言いながら、あたしの背中を押す。

「むっ、無理無理無理! 無理だってばー!」

「全く~。可愛いねぇ、葉月ちゃんは! 顔、真っ赤になってるよ?」

「お願いだからからかわないでよ~!」

愛流はあたしの頭を撫でた。

だけど一瞬、愛流が悲しそうな表情をした・・・そんな気がした。









あたしと愛流は部室に入ると、やはり既に他のマネージャー達はタオルとドリンクを用意し始めていた。

「「すみません、遅れました!」」

「大丈夫よ。私達もさっき来たばかりだから。二人共、早く用意してね」

声を掛けたのは、三年生の日向先輩だ。

急いで用意をしていると、愛流が小声で話し掛けて来た。

「ねぇねぇ。いい加減、深山くんに告白しないの?」

「ええ!? ・・・まー、告白したいのは山々なんだけどねぇ、京介って女子に人気だし、あたしそんな可愛くないし」

「そんな事ないって! 葉月ちゃんって、みんなから密かにに人気なんだよ?」

「冗談はよしてってばっ! それに、あたしより愛流の方がモテモテだよ?」

「私? いやいやー、そっちこそ冗談言わないでよー。私なんて全然だって」

愛流は笑っているけど、男子にモテモテってのは本当の事。

でも愛流は天然だから、それには無自覚。

京介も、もしかしたら愛流の事好きなんじゃないかって、ヒヤヒヤした時もある。

元々あたしがサッカー部に入部したのは、サッカー部のキャプテンのお兄ちゃんを守る為。

泣いたりされたら困るし。









幼い頃


「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

お兄ちゃんは昔から泣き虫で、毎日何かあれば泣いていた。

「男なんだから泣くな」

「お兄ちゃんでしょう?」

そんな言葉が、いつもお兄ちゃんに降りかかる。

毎日その繰り返し。

ある日、あたしは決意してお兄ちゃんに言った。

「お兄ちゃんは泣いていいよ」

「え?」

「その代わりにあたしは、お兄ちゃんの分も笑っとくから。あたしの分泣いてね」

その時から、あたしはずっとお兄ちゃんのそばにいる。

お兄ちゃんが泣いたら、泣き止むまでずっと慰めて。

さすがに、高校生になっても泣いたらどうしようって思ったから、お兄ちゃんの近くに居られるよう、サッカー部のマネージャーになった。

そのおかげで、今では親友の愛流と出会ったんだよね。

お兄ちゃんには、感謝してる。
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