あのさ、まだ好きでいてもいいですか?

菜の花

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裏切り

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ついに放課後になり、みんなは次々と教室を出て行った。

あたしと愛流の二人だけになると、愛流は口を開いた。

「ねぇ、葉月ちゃん。私―――――深山くんと、付き合う事になったんだ」

「っ・・・」

あたしは目を見開いた。

驚きのあまり、「何で?」と声を出す事ができなかった。

「朝のあの時、深山くんに告白されたから」

告白された? 愛流が?

「何で・・・? 何で、断ってくれなかったの・・・?」

あたしは声を震わせて訊いた。

声が震えたのは、京介が愛流に告白したからじゃない。

告白された上で、なぜ愛流は京介に断らなかったからだ。

「ごめん、葉月ちゃん・・・。私も、深山くんの事が好きだったんだ・・・。でも、親友の葉月ちゃんの事、応援したくて・・・」

愛流は、今にも泣き出しそうな声で言った。

あたしの事なんか、応援しなくてもいいのに・・・。

「そっか・・・。おめでとう、愛流」

「ありがとう、葉月ちゃん・・・」

あたしって、サイテーだね。

親友の恋が叶ったっていうのに、心から喜べない。

むしろ憎い。

もう、イライラして仕方ない。

嗚呼、こんな自分が嫌になるよ。

愛流はずっとこんな気持ちで、あたしを応援してたっていうのにさ。

そして愛流が教室を出て行くと、あたしは気が抜けたようにしゃがみこんだ。

胸が息苦しくなり、涙が零れそうになる。

ここで泣いたら、すごくダサい。

でも・・・今日は、泣いてもいいよね?

誰もいない、夕日に照らされた、静寂に包まれた教室で。

あたしは、涙を流した。









久しぶりだな、泣いたの。

ポロポロと零れて、止まらない涙。

止めようと思っても、止められない。

すると、教室のドアが開いた。

「え・・・?」

「おまっ・・・葉月、泣いてるのか!?」

目を向けると、そこにはクラスメイトの瀬戸口せとぐち晴輝はるきがいた。

どうしよう。何か、誤魔化さないと・・・。

「ううん。ちょっとあくびが・・・」

「何言ってんだよ、愛流」

誤魔化したつもりが、ハルにはバレバレみたいだ。

そう言って、あたしを優しく抱き締めた。

「・・・俺達、親友だろ? 心配すんじゃん」

「ハル・・・。ありがとう」

その後、部活をサボってまで、未だに泣いているあたしの隣に寄り添ってくれた。

部活の時間が過ぎると、ハルは家に帰って行った。

ハルは「大丈夫か?」って心配してくれたけど、あたしはさすがに悪いと思い、無理やりにでもハルを帰らせた。

心が落ち着くと、あたしも家に帰ろうと学校を出た。

すると、近くで聞き慣れた声がした。

「なぁ、愛流。次の日曜日、デートに行かないか?」

その途端、あたしは立ち止まった。

「ほんと? 行く行く!」

「んじゃ、俺が調べとくからな」

「うん! 楽しみだなぁ・・・」

そこには、楽しそうに微笑む、京介と愛流がいた。

最悪・・・。

あたし、運悪すぎない?

ハルに泣いた所見られたし、二人の会話聞いちゃったし。

あ、でも泣いた所見られたのは逆によかったかも。

ハルにも事情を説明して、何かスッキリしたし。

でも、また涙が出そうになり、あたしは二人に気付かれないように少し遠回りして、必死に家へと向かった。









「はぁ・・・はぁはぁ・・・」

あたしは家の玄関前に着くと、乱れた息と髪を整えた。

「ただいまぁ・・・」

「お帰りなさ・・・葉月お嬢様!? どうなされたんですか!?」

メイドさんは、血相変えて言った。

やっぱり、そうなるよね。

「大丈夫。何でもないから」

「ですがお嬢様。そんなに泣かれていて、学校で何かあったのでしょう?」

「大丈夫だから! 別に、心配しなくてもいいから・・・」

つい強く言い返してしまい、あたしは早足で自分の部屋に入った。

鞄を床に投げ捨て、ベッドにダイブする。

さっきの二人の様子が、瞼の裏に焼き付いている。

楽しそうに微笑む二人。

京介のその表情は、今まで見た事のないものだった。

きっと、あたしの事なんか、何とも思ってないんだろうな・・・。

悲しいけど、これが現実。

夢なんかじゃない。

その後、あたしの意識は途絶えた。

しばらくすると、携帯のバイブが鳴った。

携帯のロック画面に、

『メール一件[愛流]』

という文字が表示されていた事に、あたしは知らない。
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