牙の魔術師と出来損ない令嬢

小桜けい

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1巻

1-3

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 ウルリーカはつま先に力を入れて姿勢を正し、急いで窓の外へ視線を逸らした。

『――女王陛下が夢中になるだけあって、とても素敵な方ね』

 フレデリクと式の打ちあわせをしてきた母だって、感嘆し褒めちぎっていたくらいだ。女性に対する理想的な扱いを心得ているのだろう。
 それに、母が女王陛下からの紹介状の意味をウルリーカがきちんと理解したむねを告げると、彼はとても安心して喜んだらしい。
 自分の意見は正しかったと得意満面の母に、ベリンダは非常に憤慨していた。彼がウルリーカに『まともな求婚』をしたという可能性を主張して、妹は最後まで母に食い下がってくれたのだ。
 ウルリーカは無言のまま窓の外に視線を固定した。二人を乗せた馬車は進んでいく。
 にぎやかな表通りを抜け、集合住宅の多い地区を進むと、広い庭つきの屋敷がたち並ぶ通りに着いた。
 自分の領地に居城や館を持つ貴族も、大抵は王都に別邸を持ち、社交シーズンはそこで過ごす。ロクサリス王都には、貴族の別邸地区がいくつもあり、この通りもその一つだ。
 やがて馬車は一軒の門前に停まった。フレデリクが奥にある屋敷を示す。

「着いたよ。古いけど不便なところは改装してあるし、気に入ってくれると良いな」

 もう陽は暮れかかっており、薄闇の中で屋敷の煙突からは、煙がたち上っていた。
 この屋敷は、フレデリクが成人になった際、後見人であるアイゼンシュミット侯爵から譲り受けたものだという。彼はここで数人の使用人とともに暮らしているそうだ。
 結婚式には屋敷の使用人たちも列席したらしいが、招待客が多く、式堂も薄暗かったために、人々の顔などほとんど見えなかった。彼らは式が終わる前に早々と帰宅し、夕食などの準備を整えてくれているらしい。

「気に入るどころか……フレデリク様、とても素敵なお屋敷ですわ」

 お世辞ではなく、ウルリーカは心底から感嘆した。決して大きくはないが、風格と品を感じさせる立派な屋敷だ。
 優美な外観の歴史ある屋敷に感動していると、フレデリクに手を差し出された。

「デリクと呼んでくれ。ウルリーカ……ルゥと呼んでも良いかな?」

 正面から向けられたくったくのない笑顔に、ウルリーカは息を呑む。妙な期待などするまいと思っているのに、頬に熱がこもるのをどうしても止められない。

「……はい」

 礼装用の白手袋をはめた手を恐々と握り、足が震えそうになるのをこらえて立ち上がった。
 フレデリクの手を借りて婚礼馬車を降りると、重々しい鉄門の陰から、ぬっと大きな影が現れた。

「お帰りなさいませ」

 野太い声とともに現れた巨大な岩石……いや、岩石のごとき屈強な巨体をした初老の男に、ウルリーカは目を見張る。
 筋骨隆々の大きな身体は黒い背広へ窮屈そうに押しこまれ、厳しく引き結ばれた口元と、深いとうこんの走る頬。頭の毛はそられ、重そうなまぶたの下に鋭い目が光っている。
 ド迫力の巨漢を前に、ウルリーカが立ちすくんでいると、フレデリクが笑いながら言った。

「家令のイゴールだ。昔からアイゼンシュミット侯爵に仕えていたんだけど、俺が宮廷に仕官する時、一緒にここへ来てくれたんだよ」
「どうぞよろしくお願いいたします。奥様」

 顔面まで硬そうな筋肉におおわれた家令が巨体をかがめ、ウルリーカへ慇懃いんぎんに礼をした。

「こっ、こちらこそ!」

 こわもてなので、てっきり護衛だとばかり思っていた家令に、急いで挨拶を返す。ついでに『奥様』と呼ばれたのに気づいて驚いた。
 正式に結婚したとはいえ形だけのものだ、まさかそう呼ばれるとは思っていなかった。

「大丈夫。イゴールはちょっと見た目が怖いけど、親切で頼りになるよ」

 ウルリーカの内心など知らず、フレデリクはそっと耳打ちすると、彼女の手を引いて屋敷の中へ入る。
 アンティークなシャンデリアが輝く玄関ホールには、恰幅かっぷくの良い年配の家政婦と、三十代半ばらしきコックの男性に、その妻だというメイドがいた。
 ウルリーカが皆に挨拶していると、メイドの長いスカートの陰から、小さな女の子がひょいと顔を覗かせた。

「あら?」

 しかし、ウルリーカが少女に気づくと、少女はさっと顔を引っこめる。

「私どもの娘でございます。申し訳ございません。少々、人見知りで……」

 メイドが申し訳なさそうに眉を下げ、スカートの後ろに向けてささやいた。

「ほら、モニカ。奥様にしっかり挨拶なさい」

 栗色の髪をお下げに結んだ少女は、母親のスカートから顔を半分だけ出し、小さな声でつぶやいた。

「……モニカです」

 ウルリーカは膝を曲げてしゃがみ、少女と視線をあわせた。
 人見知りの少女の姿に、教え子だった商家の娘・エイダを思い出して、知らずに顔がほころぶ。
 エイダは学校に通うのも困難なほど病弱だった。それで裕福な彼女の両親は、娘に家庭教師を雇う事にしたのだ。エイダも、ウルリーカに紹介された時はこんな調子だった。

「初めまして、ウルリーカよ。よろしくね」

 モニカは丸い頬を赤くしてコクンと頷き、また母親の陰に隠れてしまう。ウルリーカはそれ以上はしつこくせず、微笑んで立ち上がった。ゆっくり仲良くなれれば良い。

流石さすが、子どもの扱いに慣れてるね」

 不意にフレデリクから声をかけられ、ウルリーカは飛び上がりそうになった。

「っ! いえ……先月まで家庭教師をしていましたので……教え子も女の子で……」
「うん。ハーヴィスト食料品店の娘さんを教えていたんだったね」

 フレデリクはウルリーカを落ち着かせるように優しく肩をでる。ウルリーカは火照ほてった顔をうつむかせた。
 彼もウルリーカに求婚する以上は、簡単な身辺調査くらい行うだろう。エイダの家庭教師をしていた事を知っていて当然だ。そう思うものの、フレデリクが自分に関心を持ってくれているのを嬉しく思う。

「あ……ところで」

 ふと、困惑顔でフレデリクがつぶやいた。

「ルゥ。式を挙げて早々で悪いけど、明日から一週間ほど留守にするんだ。陛下の急な視察につき添わなくちゃいけなくて」

 ――のぼせかけていた頭に、冷水を浴びせられたような気がした。
 宮廷魔術師は何人もいるが、視察などで王都を離れる時には、女王は必ずフレデリクを連れて行くという。噂は、本当だったのだ。
 何を期待しかけているのかと、自分を内心で叱咤しったしながら、ウルリーカは無難な笑みをつくる。

「気になさらないでください。陛下が熱心に視察をなさるおかげで、皆が安心して暮らせるのですもの」

 この言葉は、まるきり嘘という訳でもない。
 アナスタシア女王が小まめに視察をするようになった事で、以前はひどかった地方役人の腐敗が随分と減ったのだ。

「……なるべく早く帰るから」

 そう言ったフレデリクの声が、ほんの少し寂しそうに聞こえたのは、きっと気のせいだろう。
 彼は着替えるために自室へ向い、ウルリーカもかさ張る婚礼衣装から晩餐ばんさん用のドレスに着替えるべく、メイドに部屋へと案内された。
 った浮き彫り飾りがついた扉を開けた途端、ウルリーカは目を見張る。
 落ち着いた色調の室内は、一目でわかるほど上等な調度品でしつらえられていた。長椅子やお茶用の小さなテーブルセット。紫檀したんの立派な書きもの机まである。鏡台の前には、すでに上品な色調のドレスが用意されていた。

「奥様のお部屋ですから、ご不満な点はお好きなように変えてほしいと、旦那様がおっしゃっておられました」

 メイドがにっこりと笑い、左右にある続き部屋の扉を示す。

「衣装室と、奥様と旦那様の寝室は、後ほどご案内いたします。まずはお着替えください」

 ニコニコと微笑む彼女を前に、ウルリーカはまたもや目を見開いた。
 この上等な部屋に不満があるとすれば、一つだけ。自分のみが使う寝台がない事だ。
 ――デリク様と、寝室が一緒……?


 婚礼祝いの晩餐ばんさんは、スープから前菜、祝いのケーキまで、見た目も味も素晴らしいの一言に尽きた。モニカの父は、相当に腕の良いコックなのだろう。
 しかしウルリーカは、折角のご馳走を楽しむ余裕もなく、フレデリクの向かいで笑みが引きらないように気をつけながら、食べものを呑みこむのが精いっぱいだ。
 食事が終わると、薔薇ばら香油こうゆを垂らしたバスタブでの湯浴みをうながされる。用意された肌触りの良い寝衣に袖を通し、髪を拭くのを手伝ってもらった。
 春とはいえ、大陸北方のロクサリスはまだ寒い。新妻用の寝衣は肌の透けそうな薄さだったが、寝室の暖炉では魔法の石が心地良い暖気を発し、風邪を引く心配はなかった。
 ……いや、むしろ寒さで風邪を引いた方が良かったのかもしれないが。
 メイドに案内された寝室に置かれているのは、二人で十分に使える大きさの寝台が一つだけ。
 ――寝室は一緒でも寝台は別……なんて、そんな訳、ありませんよね。
 不備がないか確認してメイドが退室すると、ウルリーカはがっくりと肩を落とした。
 ロクサリス貴族の娘なら社交界に出る前に、男女の営みについて、家庭教師から一通り説明を受ける。
 多妻が認められている国ゆえか、男女問わず性に奔放ほんぽうな貴族は多く、幼い少女を遊び相手にする者もいる。華やかな夜会に浮かれて、いい加減な相手と間違いを犯さないための用心だ。
 だから、恋人など一度も出来た事のないウルリーカでも、男女が一つの床で何をするのかは知っていた。
 深いため息がこぼれる。
 ウルリーカと結婚したとはいえ、フレデリクが愛するのはあくまでも女王だ。
 だから、女王に対する礼儀はかたくなに守るだろうと……遊びで自分を抱く事は決してあるまいと、信じていた。
 それなのに、寝台が一つしかないとはどういう事なのか。
 可能性・1、信じ難い奇跡が起こっていて、フレデリクは女王と関係はなく、ウルリーカへ純粋に好意をよせている。
 可能性・2、フレデリクは思っていたよりも不誠実な男だった。
 ぜひとも可能性・1であってほしい。しかし残念な事に、可能性・2の方が、はるかにありそうだ。
 大切に抱いてきた彼との思い出が、さらに黒く塗り潰されていく気がして、こみあげてくる涙に視界がにじんだ。
 初夜の床入りでは、花嫁は寝台に座って夫を待つ事になっている。そうするべきなのだろうが、寝台には近づきたくもなかった。
 ウルリーカが無意識に、壁際に後ずさると同時に、寝室の扉が開く。

「……ルゥ?」

 寝衣に着替えたフレデリクは、壁際へ身をひそめるように立っているウルリーカを見て軽く眉をひそめると、足早に近づいてきた。
 不快にさせてしまったかと、ウルリーカが息を呑むと、不意にフレデリクの指が頬へ触れた。

「何か、あったのか?」

 心配そうに尋ねられ、強ばった頬に伝う濡れた感触にようやく気づく。
 必死にこらえていたはずの涙が、両目から溢れてしまっていた。

「……デリク様」

 震える声を、なんとか絞り出す。
 ――お願いです。私の思い出の中の貴方を、これ以上汚さないでください!
 泣き叫んで訴えたいと、思っていた。
 それなのに、ウルリーカは出来なかった。それどころか慌ててかぶりを振り、引きった笑みを貼りつける。

「い、いえ……何でもありません。ただ、その……緊張……してしまっただけで……」

 それを聞くと、フレデリクはホッとしたように微笑んだ。

「そうか」

 ギリリ、とウルリーカの心臓が締めつけられる。
 いきどおりを訴えられなかったのは、怖いからだ。それも、彼の怒りを買うのでは、という恐れではない。
 仕方なくめとった妻なのに、彼はとても愛情をこめた態度で接してくれる。婚礼の翌日から視察に同行するとはいえ、女王との私的な関係をほのめかす事もしない。
 だから、こうして優しげな彼を前にすると、つい夢想してしまう。
 想い続けていたフレデリクが、自分を本当に愛してくれているのだと。
 はっきり言葉に出して問いつめ、直接に彼の真意を聞けば、この甘美な夢はめてしまう……。それを受け入れる勇気が、ウルリーカにはなかった。
 あとで余計にみじめになるだけなのがわかっているのに、一瞬でも長く愛されているという幻にすがりたい。あらがい難い蠱惑こわくの夢だ。

「……申し訳ありません……すぐ、参ります……」

 夢遊病にかかったように、おぼつかない足取りで寝台に向かって踏み出すと、不意にフレデリクの腕が肩に回った。
 浮遊感が身体を包み、ふわりと抱きあげられる。

「きゃっ!?」

 思わず悲鳴をあげると、ウルリーカを横抱きにしたフレデリクが楽しそうに笑った。

「せっかくだから、俺に運ばせてよ」

 すぐ近くから向けられる笑みが、あまりに魅力的で、ウルリーカは呼吸が止まりそうになる。
 フレデリクはウルリーカを、大切な宝物のように寝台へゆっくりと横たえ、灯りを少しだけ弱くした。それでも、彼の緑色の瞳にじっと見つめられているのは見える。
 恥ずかしくてとっさに目をつむると、唇が柔らかいもので塞がれた。
 驚愕きょうがくに目を開くと、フレデリクの瞳がくっつきそうなほど間近にあった。口づけられているのだと気づき、慌ててウルリーカはまた目をつむる。
 唇の表面をくすぐるように舐められると、しびれたみたいな甘い感覚が全身に広がり、固く引き結んでいた唇が自然と解けてしまう。
 そのわずかな隙間から、熱い舌がヌルリと素早く侵入し、ウルリーカの舌に絡みついた。
 他人の温度に口内をき混ぜられる感覚に、ゾクゾクと背筋が震える。絡まる舌の感触と湿った音が、いっそう羞恥しゅうちあおった。
 うわあごや歯列の裏まで丁寧になぞられ、酸欠と湧き上がる奇妙な心地良さに喉奥であえぐ。

「ん、んぅ……」

 あごを掴まれて唇の角度を変えられると、口づけがより深くなった。クチクチと音をたてて、味わいつくすように隅々までなぶられる。
 ようやく口づけから解放された時には、ウルリーカはすっかりほうけてしまい、ぼぅっとフレデリクを見上げた。
 暖炉で燃える魔法石の欠片かけらが、身体に入りこんでしまったのではないかと思うほど、奥からジリジリと熱がこみあげて全身が火照ほてり始めている。

「ルゥ……すごく可愛い」

 わずかにかすれた声でフレデリクがささやき、熱くなったウルリーカの耳朶じだをパクリとんだ。

「ひゃんっ! あ……あぁ」

 そのままピチャピチャと甘く噛まれると、頭の中までき混ぜられているように感じる。
 全身の火照ほてりがさらに増し、下腹の奥がキュンと切なくうずいた。知らず妙な声が漏れてしまう。
 困惑と羞恥しゅうち心にさいなまれてウルリーカが身をよじると、薄い寝衣の中で乳房がふるふると揺れた。
 いつの間にか胸の先端は尖って薄布を押しあげており、敏感になったそこは、布地がこすれるだけでもチリチリした疼痛とうつうを覚える。
 耳朶じだから口を離したフレデリクが、目ざとくそれを見つけてふくらみを掴んだ。
 片手に余る大きさのそれを、下からすくいあげるように揉まれ、むずむずとうずく胸の奥までこねるようになぶられる。

「あぁっ」

 布越しに指先で先端をつままれ、鋭く突き抜けた快感に、ウルリーカは喉を反らした。気持ちいいのに、未知の感覚が少し怖い。目をつむって身体を硬くすると、なだめるように頬をでられた。

「怖がらなくてもいいから。気を楽にして」

 色香を感じる低いささやきに耳朶じだをくすぐられ、頭がクラクラとしびれて力が抜ける。
 子爵令息に襲われた時は、分厚いドレスの上から胸を掴まれただけで、全身に虫唾むしずが走り、吐きそうになった。なのに、フレデリクの手には嫌悪感を覚えるどころか、もっと触れてほしいとさえ思ってしまう。
 寝衣を脱がされ、しっとりと汗ばみ始めた肌に彼の手が直接触れる。胸の先端に濡れた感触がした。驚いて胸の方を見ると、突き出された胸に舌を這わせているフレデリクとまともに目があう。ちゅっと吸い上げられた先端から、胸の奥へ快楽が響いた。

「ん、あぁっ!」

 とっさに顔を背け、手の甲で口元をおおったが、舌で先端をねぶられる強烈な感覚にあわせて、勝手に声が漏れる。
 乳房のもう片側は柔らかく手で揉まれ、硬く尖ったそちらの先端も、指の腹で押し潰された。
 腰の奥がズクリと重たくなり、そこからもどかしいような切ないうずきが広がる。
 こみあげ続ける感覚を持て余し、水から揚げられた魚のように、ウルリーカはビクビクと身を跳ねさせた。
 いつの間にか、フレデリクも衣服を脱いでいる。
 横たわったウルリーカからは、彼の上半身だけがよく見えた。魔術師のローブが似あう細身のやさおとこながら、フレデリクの裸身は意外なほどたくましい。
 その身体に薄くはなっていたものの、ひどい傷あとがいくつもあるのにウルリーカは驚いた。
 その視線に気づき、フレデリクが苦笑した。

「宮廷魔術師って、はたから思われるほど優雅じゃなくてさ。憲兵の手が足りなければ強盗も追うし、国事があれば高所の飾りつけも手伝う。いわば何でも屋で、結構、怪我する事が多いんだ」
「っ……し、失礼しました」

 ウルリーカは顔を赤くし、急いで目を逸らす。ついでに、ハッと気づいて自分の身体も腕で隠そうとしたが、それは叶わなかった。
 フレデリクがウルリーカの両手首を片手で掴み、あっさりと阻んだからだ。

「隠さないで、全部見せてよ」
「や、お許し、ください……は、恥ずかしい……」

 羞恥しゅうちと緊張に、何度も唾を呑みこみながら懇願こんがんしたが、フレデリクは手を離してくれない。

「すごく綺麗だ。恥ずかしがる事ないのに。……ま、そんなルゥも可愛いけど」

 フレデリクが楽しげに目を細め、ウルリーカの喉元からへそまで、ツゥっと人差し指でなぞる。

「あぁっ」

 ゾクリと快感が背筋を駆け抜け、びるような甲高かんだかい声を放ってしまった。

「ルゥの声も可愛い。もっと聞かせて」
「そん、な……あ、あぁっ!!」

 不意打ちで胸の先端を舐められ、りながら、嬌声きょうせいをあげる。
 ちゅくちゅくと吸いながら、強弱をつけてふくらみを揉まれると、下腹の奥がどうしようもなくうずき、じんわりと熱いしたたりが溢れてくるのを感じた。
 互いの素肌がこすれあい、体温がけあっていくのが、たまらなく心地良い。
 唾液に濡れた乳首を指でいじられ、濡れた舌が柔らかなふくらみを舐める。
 乳房だけでなく、わき腹や腰までも、たっぷりと時間をかけて愛撫され、絶え間ない快楽にさらされたウルリーカは、何度も身体を痙攣けいれんさせてあえいだ。
 そして、誰も触れた事のない両足の間に、フレデリクの指が忍びこむ。
 うずいてたまらないそこをなぞられた途端、今までとは比べものにならない強烈な快感が突き抜けた。

「ひ、あああっ!」

 火花が散るような感覚に、ウルリーカの背が浮く。

「ルゥのここ、すごく濡れてる。気持ち良かったんだ?」

 熱い蜜をぬるぬると広げながら言われる。ウルリーカは必死に腕をあげて顔を隠した。

「い、言わないで、くださ……んんっ!」

 指を動かされるたびにみだらな濡れた音が聞こえて、羞恥しゅうちに身体がいっそう火照ほてる。

「んっ、はぁ……あ、あ……」

 さらにそこを上下になぞられると、ゾクゾクと快楽が背筋を走り、もだえしたくなる。

「は、ぁ……ああっ!」

 激しい熱が、腰の奥へおりのように溜まり続け、どうすれば良いのかわからない。

「はぁっ……も、おやめくださ……わたし、変に……」

 下腹部を悪戯いたずらする指から逃れたくて、寝台の上をずりあがると、腰を掴んで引き戻された。
 花芽を柔らかく押され、鮮烈な感覚に喉を反らせる。

「あっ! あっ! ダメ……っ! あ、何か……ぁ、あ……」

 ぬちゅぬちゅとなまめかしい音をたてながら花弁もいじられ、合間に敏感な粒を何度もなぶられると、奥に溜まり続けている熱が急速にふくらんでいくのを感じた。

「我慢しなくていいから。イくところ、みせてよ」

 フレデリクが耳朶じだを甘噛みしながらささやく。

「イ……? あ、あ、あ、ん、あ……あ、ああっ!!」

 下腹部をなぶる指の動きを激しくされ、もう片手で胸のいただきもこすられて、追い詰められる。怖いのに、ねだるように腰が勝手にくねってしまう。みだらに動いて秘所を彼の手にこすりつけるのを止められない。
 グチュリと音をたて、強く花芽をつままれた瞬間、耐え難いほどにふくらみきった熱が弾けた。ウルリーカは両手でシーツを握り締め、高い声を放って大きく背を反らせた。

「あ、ぁ……はぁっ……や、あ、……ーーーーっ!」

 全身から汗が噴き出し、目を閉じているのにまぶたの裏がチカチカと光る。脱力してしまった身体をぐったりとシーツに落とし、大きく胸をあえがせた。

「思っていたとおり……いや、もっと可愛かった」

 フレデリクが額に軽く口づけを落とし、今度はじんじんとしびれている秘所の奥へと指を差しこむ。グチュリと濡れた音がたち、力の抜けた花弁が男の指を呑みこんだ。

「んんっ!」

 すっかり敏感になっていたそこへの鮮烈な刺激に、ウルリーカはうめいた。初めて異物を差しこまれ、違和感と押し広げられる痛みに歯を食いしばる。

「大丈夫。ゆっくりするから……」

 その言葉どおり、フレデリクは埋めこんだ指を慎重に抜き差しし始めた。ゆっくり動かされるうちに、次第に痛みが和らぎ、先ほどの悩ましい熱が再燃する。奥からトロリと溢れてきた蜜が、指の動きを助け、くちゅくちゅと音をたててき回された。
 粘ついたいやらしい音に聴覚を犯される。

「ルゥの中、すごく熱くなって俺の指に絡みついてくる」

 熱に浮かされたような声でささやかれ、ウルリーカは恥ずかしすぎて両手で顔をおおい隠した。ジンジンと熱くうごめく体内を擦られると、彼の指を反射的に締めつけてしまう。
 指が二本に増やされても、もうそれほど痛みはなかった。
 蜜壷の感触を楽しむように、ゆるゆるとき回されるうちに、増やされた指の違和感もみだらなうずきに変わっていく。
 さらにもう一本増やされ、抜き差しをしながら花芽もいじられてゾクゾクと身体が震える。
 顔を隠して羞恥しゅうちに耐えていると、そろそろ大丈夫かな……というフレデリクのつぶやきが聞こえた。
 埋めこまれていた指が抜かれ、ほっと息をついたのもつかの間。膝裏に手を当てられて、くるんと脚を持ち上げられてしまう。

「やっ!」

 秘所をさらされる恥ずかしい体勢に、思わず顔から腕をずらして抗議の悲鳴をあげかける。けれど、同時に押し当てられた熱の質量に唖然とした。

(嘘……無理……)

 理屈ではわかっているつもりでも、こんなに太いものが自分の中に入るとは、とても思えなかった。
 ウルリーカがうろたえているうちに、ぬちりと音をたてて、熱く硬い切っ先が侵入を開始する。

「あ……く、う!」

 ほんの先端が埋めこまれただけで、指とは比べものにならない圧迫感と痛みに、全身から冷や汗が噴き出た。慣らされてもまだ硬い処女の孔に、じりじりと熱いくさびが打ちこまれていく。

「う、あ、ぁ、痛――――っ!」

 身体を引き裂かれる激痛にったが、しっかりと腰を抱えるフレデリクの手が、逃げるのを許さない。
 痛みに突っ張っていた手をとられ、掴まれというように、彼の背中に回された。

「あ、うぅ……」

 狭いみつどうをいっぱいに押し広げ、硬い屹立が奥まで押しこまれる。ウルリーカは夢中でフレデリクにしがみつき、身体の奥まで貫かれる衝撃に耐えた。

「きっつ……ルゥ……出来るだけ早く終わらせるから、少しだけ我慢して」

 なだめるように頬へ口づけを落とされ、ウルリーカは痛みにポロポロと涙を流しながら頷いた。ゆがむ視界の中でふと見れば、フレデリクも何かをこらえるように顔をしかめている。

「は、ぁ……わたし……より、デリク様、は……つらく、ない、ですか?」

 もしや古傷に爪をたててしまったかと心配になり、何度も浅く息を吐きながら、切れ切れに尋ねると、フレデリクが軽く目を見開いた。

「俺は大丈夫……最高に気持ちいい」

 とろけそうな表情と声で言われ、ウルリーカまで、なぜかほわりと心が温かくなる。こじ開けられた秘所は痛くてたまらないのに、その奥がヒクンと震えて熱い蜜が溢れた。
 フレデリクはそのまま動かず、ウルリーカの痛みを逸らすように、そっと口づけを繰り返しては、髪や肩、首筋などを優しくでていく。
 舌を絡めて吸われ、胸や腰のくびれをやわやわと触れられているうちに、激しい痛みの中から、甘いしびれを感じ始めた。

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