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学園生活、2年目 ~前期~
102
しおりを挟む冒険者ギルドの採取クエスト、っていうくらいだし何を採ってこいっていうのかなー?と思ったら。
「・・・えーと?ホーンウルフの角?」
「ホーンウルフ自体はあんま強くないから楽勝だろ」
「狼に角生えてんの?」
「ああ。大きさは犬くらいだぞ」
全然想像つかない。ケリーの話だと柴犬位の狼に角生えてるらしい。狼に角って必要?
しかしポピュラーなものらしく、薬の材料になるんだとか。
しかしこれは『採取』っていうのか?
「まあ心配すんな、近づけさせやしねーから」
「う、うーん?」
「はは、ケリーもいつもの病気出てんな」
「まあ、ね」
私に色々話しかけて来てくれているケリー。
そんな姿を見て、同じパーティのダニエルは『病気が出た』と評し、ロリアは面白くなさそうに相槌。
これは恐らくロリアさんはケリーに惚れている。
面倒くさい揉め事は回避したい。
「ねぇケリー」
「なんだ?」
「ロリアさんて、ケリーの彼女でしょ?私に構ってたら彼女が面白くないんじゃない?」
そう聞くと、ケリーはチラっと彼女を見て、私に視線を戻す。
「構わねえよ。俺は彼女にした覚えないからな。確かにロリアから告白は受けたが、俺には他に好きな女がいるってハッキリ言ってる。それでもいいってくっついて来てんのはアイツだ。俺はそれ以上ロリアにしてやれる事はねえし、同じ騎士科のメンバーとして扱ってる。
俺がロリアに『諦めろ』っていう権利ねえだろ?」
ケリーとしては自分の気持ちは隠すこと無く伝えている。だがそれを踏まえて彼女が諦めないというのなら、これ以上何もいう事はできない、と。
確かに本人の気持ちをこっちがどうこうはできないもんね。同じ騎士科のメンバーとしては扱うけど、それ以上には見ない、と線引きしているならば私は何も言えない。
「いつもの病気って何?」
「あー、女が寄ってくるって事だろ・・・」
あーそうですか。確かにケリーは一年ですごく背が伸びた。騎士になりたいとの事で訓練も欠かしていないから、体も筋肉がしっかり付き、細マッチョな体をしている。
顔も男らしく鋭さのある顔付きだし、熱を上げる女の子も多いだろう。
「めんどくさい女は嫌なんだけどな」
「女ってのはだいたいめんどくさいもんよ」
「まーな、お前はめんどくさいというより手強い、だけどな」
諦めてねえぞ、と睨まれる。
そこの所は忘れてほしい。ケリーなら可愛い子をゲット出来るわよー。
荷物に入っているマップを広げると、ケリーも立ち止まって隣に立つ。するとダニエルもロリアも加わって作戦会議だ。
「さて、どの辺りを狙う?」
「私としてはこの辺りかな」
「いいんじゃないかな?ロリアの索敵能力はずば抜けてるし」
何度もパーティ組んでこういう授業をしているんだろう、ロリアさんに対するダニエル、ケリーの信頼は厚そうだ。
私の探索魔法にもその辺りに反応あるし、異議はないので黙ってます。
「じゃあ決まりね。いつも通り先頭はケリーと私で。ダニエルは彼女のお守りよろしく」
「はいよ」
「お守り、ってお前な」
「あーはいはい、じゃあ決まったなら動きましょ」
『お守り』って言葉に何か感じたのかケリーがロリアに反論しようとするけれど、私はそれを遮った。
このクエストの間だけなんだからスルーしましょ、とケリーにコソッと囁けば、憮然として頷く。
「お前がいいなら黙るが、あまりに酷いようなら黙ってねえからな」
「まあまあ、可愛いものじゃない。小鳥がさえずっていると思いなさいよ」
納得していないみたいだけど、揉めるのは避けたい。ロリアさんが自分の優位を示したいってんだから勝手に働かせましょ、楽ができるならそれに越したことはない!
一応保険をかけて探索魔法は適度に発動させておくけどね。前に比べて効果範囲も広くなった。指向性も出るようになったし、これホントに便利。ちょっとした地図アプリ的な。
時計でいうと10時方向にディーナ達を感じた。うん、向こうも頑張っているんだろう。キャズの索敵能力も高いし、心配はない。
たまに所々に高い魔力反応があるのは、近衛騎士がいるからだろう。
程なく、あたりを付けたエリアに。そこへ付くと、数匹のホーンウルフがいた。
「もしかして、あれ?」
「ああ、そうだよ。あの角が薬の材料なんだ」
確かに柴犬程度の大きさの狼の眉間に角。
一角獣…ほどじゃないけれど。ホントにいるんだな魔物。
これは魔獣、になるのかな?
ロリアさんが弓で牽制。怯んだ隙にケリーが一匹ずつ確実に仕留める。ダニエルさんは行かないのかな?
「僕が行っちゃうと、コズエさん危ないだろ?」
「あ、えーと、結界魔法も防盾魔法も使えますからいいですよ?」
「そうなんだ、じゃあもっと数が多くなったら加勢に行くよ。あの数ならケリーだけで足りるし、コズエさんを危険に晒したら俺がヤられそうだ」
「そんな事ないですよ、これ授業なんだし。私も少しくらい頑張れますよ?」
「あー、そうじゃなくて。ケリーの想い人を危険に晒さないって事。君だろ?ケリーの告白ざっくり断ったって」
「え」
「アイツ、あんなだけど結構一途だからさ。まだコズエさんの事好きだと思うんだ。媚を売る女は嫌いなんだよ、ケリー」
だからロリアには無理なんだよな、とダニエルさん。
この人はケリーと幼馴染みたいで、ずっと子供の頃からケリーの女性遍歴を見ているらしい。
ケリーの好みは、自分に大して『女』の武器を使ってこない女だって事。擦り寄ってくる女は自分の見てくれに惚れてるだけだと判断しているらしい。
「俺にしてみれば、贅沢だと思うけどね。好きで寄ってきてるんだから楽しむくらいはすればいいと思うんだけどさ」
「あのー?私一応女の子ですよー?」
「ああごめんごめん。でもこういう話、コズエさん普通に返事してくるだろ?だからかな、ケリーはそういう所がいいんだと思う。アイツ昔から女に囲まれて苦労してるし」
と、そんな話をしていたらケリーが一人でホーンウルフを退治した。私達も側に寄る。
ホーンウルフの角は、仕留めた後つまめば取れるらしい…そんな簡単に取れるってなんなの?普通に生活してて取れないのかしら、角。
取れた角は支給されているマジックバッグへ。
ホーンウルフ自体は殺した訳でなく、気絶させただけらしい。角を取ると好戦的ではなくなり、逃げていくのだとか。
「だから討伐じゃなくて採取クエストなの?」
「ま、そーゆー事だな。数いる魔獣の中で安全な部類に入る奴らだな」
「じゃ、次向かいましょ。ダニエルもつまらなかったでしょ?動けなくって」
「ん?あー、でもコズエさん自分で身を守れるって言うから、次は俺も入るよ」
「・・・そうなの?」
ジロ、と私を見るロリアさん。確かに私鎧も付けてないしね。単なる訓練着だけ。ケリーやダニエルさん、ロリアさんは皮鎧を上に着込んでいる。
騎士科の面々は皆、皮の鎧を付けてきていた。魔術科は普通の訓練着だけ、だけどね。
とはいえ、私には魔法具もあるし、自衛手段もあるから気にはならないけど。
魔術科の訓練着には、薄い結界魔法を常時展開する術式が組まれているので、あまり防具を必要としない。魔力は多少消費するけどね。これもまた訓練の一環だったりする。
じゃあ行くわよ、とロリアさんが先頭を切る。
やれやれ、何も絡まれずに授業終わりたいなぁ。
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