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目覚めない病気

エピローグ03

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「即答?! 少しだけでも……この街に滞在している内だけでも」
「お断りです」
 私の笑みと裏腹に、シネヴィラが絶望的な表情を浮かべて「そんなぁ」と床にへたり込む。聖女教会に行けばいい物を、なぜ私が。それにそんなに長く滞在する気はない。
 そうしていると、ドアがノックされる。ノックの仕方からして、おそらくサイラスだろう。床で小さくなって涙を流しているシネヴィラを放っておいて、私はノックした主を出迎えに行く。シネヴィラの側を通る時に「スキップしてる」という声が聞こえてきたけど、とりあえず何のことかわからないし、無視だ。
「どうしたんですか?」
 ドアを開けると、予想通りサイラスが立っていて、そう問いかけてくる。チラリとシネヴィラに視線を送ったあと、すぐ答えを待つように、私に視線を戻す。
「雑音です、気にしないでください、なにか用ですか?」
「そうですか、よかった」
 言葉と表情が合っていない。でも心配して見に来てくれたようだ。少しだけ、本当に少しだけ、胸の辺りが暖かくなる。
「……心配かけましたね、大丈夫ですよ」
 胸のあたりの暖かさのおかげか、笑顔が自然に出てしまう。いつもの演技の笑顔ではない。
「安心したら抱きしめたくなりました、抱きしめていいですか?」
「だだだだきゅいっ」
 サイラスの言葉で、暖かさが急激な熱へと変化してしまった。本当に突然何を言っているのだろうか。この男は。
「にゃにをいっているのでしゅか! ばかでしゅか!」
 抱きしめるとか、本当に何を言っているのだ。そういう仲ではないのに。でもあの筋肉質な腕で、厚い胸板で、ギュってされたらどうなってしまうのだろう。上がってしまった体温のせいで、頭がバカになってしまっている。いつもそんな事を、断じて考えていないのに。
 というか、いつも断っていたら……突然そんな不安が、頭を過ってしまった。これはこれからも旅を安全に続けるため。いつも尽くしてくれているサイラスに、しょうがないから報いてあげるため。自分がされたいとか、そんなはしたない事は考えていない。そもそも恋愛するなら、こんな庶民ではなくお金持ちの貴族様が良いのだ。頭の中で言い訳がグルグルまわる。それでも私は意を決して口を開く。
「べべべべべつにゅ、きかっ、聞かにゃくても……してもい……」
「何をですか?」
「死ね!」
 私は突発的に出てしまったそんな言葉と共に、勢いよくドアを閉める。素直になってやったのに。というかアレは天然なのか、わざとなのか、それさえも読み取れない。あの男が何を考えているのか、わからない。もう。
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