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第二章

03

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「私はグルシアの王女……だった」
 グルシアはすでに滅びてしまったらしいから、「だった」が正しいだろう。エリスが頷く。その辺りは、ギルドでの一件でもちろん分かっているだろう。
「私は魔法学園に留学してきてたの」
「それで、難を逃れたんですね」
 そこまで言ったエリスが、少し考える様子を見せて続ける。
「……でもどうして、冒険者を? どうしてここにいるのです?」
「あぁ、うん、追い出されたんだ、退学してくれって、今朝に」
 少し目を見開いて驚くエリス。それから呟く様に口を開く。
「今朝って、凄い行動力ですね……それにしても、冷たい学校ですね」
 怒ってくれているらしいエリスに、私は少し嬉しさを感じつつ思い出す。よく考えてみれば、学園長の事にも違和感があった。どうしてそんなに早く、グルシアの滅亡を知る事ができたんだろう。巷に滅んだらしいという噂が流れて、それから学園長が退学と言い出すならまだわかるけど。
「あっ」
 私はふと頭に思い浮かんだ事について、声をあげてしまう。
「どうしました?」
「あぁ、うん……ちょっと思い出した事があって」
 何度か学園長の所に、来客があったのを見た事がある。ほとんどが顔を知っている人物、顔を知らない人物でも、少なくとも身なり的にどこかの偉い人という感じだった。でも、一部どちらにも当てはまらない人物が、何度か来ているのを見た事がある。明らかに怪しかったから嫌でも目に止まる恰好をした、マントで顔が見えない様にしていた人物。数日前にも、その人物が学園長の所に訪ねてきているのを見かけた。もしも、あの人物がソブリアルの者だったら。
「なんですか? 思い出した事って」
 考え込んでいたせいでエリスを置き去りにしている事に気付く。私はエリスを見つめた。話していいか迷う。正直どう考えていいかわからない。危険があるなら、巻き込まれてしまうなら……。
 そこまで考えた所で、両方の頬に衝撃が走る。エリスが私の顔を強めに掴んだのだ。少し怒った顔をして。
「今、私をのけ者にしようとしましたね」
 なぜ毎度、私の思考を読めるのだろうか。私はそんなに顔に出てしまうタイプだっただろうか。
「話してください、私も一緒にいさせてください、友達なんですから」
「……ありはと」
 口が歪んでしまって、「ありがとう」とうまく言えなかった。それでも伝わったのか、エリスは満足そうに私を掴んでいた手を離す。
「ありがとう」
 私が言い直すと、エリスが可笑しそうに「いえ」と微笑んだ。
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