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第二章

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「そういう物なんだ」
 私が呟く様に言うと、エリスは「はい」と笑った。さすがちょっと早く冒険者を始めた先輩だ。
「という事でこれからどうしましょうか……とりあえずこの街は離れますか?」
 エリスの問いかけに、私は少し悩む。この街で私の事を知っている人は、どれくらいいるのか。毎度みんなから、哀れみの目を向けられるのは面倒くさい。どうすればいいのか分からないという顔をされては、やり辛い。でも、と私は思う。
「ここで、冒険者として目立っていたら、ソブリアルが私をどうにかしようと動くかもしれないよね、まぁソブリアルが関わっていたらの話だけど」
「あぁ、確かにそうですね」
 もしかしたら危険かもしれない。でも、あちらさんが動いてくれれば、それが一番手っ取り早い。私はエリスに危ない目を合わせてしまうかもしれない、と考えてから思い直した。たぶんそう言っても、エリスは付き合ってくれる。私としても、一人より心強かった。やっぱり私は卑怯者だなと思う。
「しばらく、この街で冒険者として実績を積みましょう、その傍ら情報収集ですね」
「うん」
 今後の方針が決まった。私が頷いて見せると、エリスも頷いて返してくれる。心強い。
「では、そろそろ休みましょうか」
 エリスが欠伸をして、体を伸ばして見せた。私がベッドを占領してたから、寝る事もできなかったのか。私は素早くベッドから飛び退く。
「ごめん、気付かなくて……私のせいで寝れなかったよね」
「ベッドが使えたとしても、どのみちルネーナの事が心配で、寝れなかったですよ」
 優しく微笑んだエリスが、ベッドから立ち上がってこちらに歩み寄る。それから私の手を優しく掴み上げると、ベッドへと誘った。
「さぁ休みましょう」
「えっ、いや、私は床でいいから」
 遠慮の言葉を口にすると、エリスがそれを遮る様に強く引っ張って、ベッドの上に私を押し倒す。仰向けになった私に馬乗りになっているエリス。顔が近くて、エリスの呼吸が鼻をくすぐった。
「遠慮しないでください」
「あっ、いや、私は床でいいから」
 身の危険を感じてそんな言葉を口にすると、エリスが意地悪な笑みを浮かべる。なんか久しぶりに見た気がする。
「一緒にベッドを使うだけですよ? 何を想像したんです? ルネーナは変態さんですか? ふふふ」
「はっ、ちがっ、変態じゃないし!」
「じゃあ、ベッドを一緒に使いましょう、床で寝ると言うなら変態さんであると認めた事になりますからね」
 何でそうなるのか、理屈が分からない。ただエリスの勝手な理屈であっても、床で寝ると変態ですと認めた事になると思うと、それは出来ない。
「ふふふ、可愛いですね」
 エリスが馬乗りの状態から、体勢を変えて私の隣に寝ころんだ。私は身をよじって、エリスに背中を向ける様に横向きになる。エリスが「もぉ」と言ったのが聞こえた。
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