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第三章

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 私は部屋を出た。隣にエリスが泊っている部屋がある。そちらに足を向けて、ドアの前に立った。それから、ノックをしながら声をかける。
「エリス、良いかな?」
 中から返事はない。まだ寝ているのだろうか。それとも、もう出かけているのかな。私は何度かノックと声掛けをした。反応が無かったので、部屋の前から離れる。
「まぁ、またあとで連絡しよう」
 ギルドカードのコネクトを使えば、簡単に連絡が取れる。それに事前準備にまで付き合わせるのもしのびない。
 私は宿を出ると、マップを開く。使い慣れたナビゲートで目的地まで歩いて行く。最初は街中でナビゲートを使っているのを、みんなギョッとした目で見ていた。でも一週間もすると慣れた光景になったのか、誰もそんな反応をしなくなった。私は奇異の視線に勝ったのだ。


 事前準備のために訪れた場所。そこは郵便ギルドだ。ギルドカードのコネクトで遠方に居てもメッセージを送れる訳だけど、結局それもお互いギルドカードを持ってないといけないし、登録もしていないといけない。つまり、郵便ギルドとは、そういう場合と冒険者のギルドカードを持っていない人が、遠方にいる人に連絡を取るために使う物だ。私はこれから向かう場所に、そっちに行くから準備しておいてと、手紙だけ送っておくつもりだった。
「あれ?」
 郵便ギルドから出てきた人物に、私は声が出てしまった。その声を聞いて、相手もこちらに気付く。
「エリス、ここに居たんだ」
「あっ、ルネーナ」
 声をかけられて初めて、私に気付いたような口ぶりだった。少し居心地が悪そうだ。どうしたんだろう、と思っているとエリスが口を開く。
「郵便に何か様ですか?」
 エリスの表情はすでに、いつもの感じに戻っていた。
「これから行く場所を決めたんだ、その為の事前準備……勝手に次の目標を決めちゃって悪いけど」
 エリスと一緒に行くつもりだったから、これでそうなんですね、行ってらっしゃいとか言われたらショックだったけど、そんな事もなくエリスは笑って返してくる。
「気にしないでください、私はルネーナについていきますよ」
「ありがとう」
 少しの間だけ微笑み合った後、私達は「行こうか」と郵便ギルドに入って行く。
「そういえば、郵便の用事終わったんでしょ? 悪いね、もう一回入る羽目になって」
「いえ、気にしないでください」
 そんなやり取りをしつつ、受付にたどり着く。受付のお姉さんが「忘れ物ですか?」とたずねてきて、エリスが「いえ、違います」と答えた。
「ご用件は?」
 受付のお姉さんはそういう事か、と納得したようにして私に声をかけてくる。本題の前に少し確認したい事があって、私はそれを口にした。
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