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第四章

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「あぁ、でもそれだと目立っちゃうかな」
 思い立って顔をあげてそう口にする。おじ様からは姿を隠した方が良い、と勧められたんだ。ソブリアルの件がある。どうも私の事を捕まえたいというか、自分達に取り込みたいらしい。婚約の話をでっちあげていた。たぶん、グルシア王家の血を、自分達に取り込みたいという事なんだろう。
 思い当たることがある。私の、というかグルシア王家の濃密な魔力と特殊なスキルが、目当てだろう。この魔力とスキルは、使い方によっては強大な武力になる。父上が子供の頃に、ソブリアルの人には絶対に言ってはいけないとクギを刺してきたのは、こういう事だったのだろうか。
「……ソブリアルの件ですよね」
 私は抱えている膝に顎を乗せてから、返した。
「そう……ソブリアルから隠れるのに、目立っちゃったら意味がない」
 私が難民の皆に身分を明かさなければいいだけではあるけど、万が一私の顔を知っている人がいたら、一発で広まる。グルシアの王女がここにいるって。
「とりあえず、しばらくは姿を隠して、それから難民の所に行くとか」
 少し考える様にしながら、そう言うエリス。私はそれに頷いて口を開いた。
「そんな感じかな」
 おじ様は身を隠すために必要だろう、とお金をくれた。とりあえずそれと今貯まっている分があれば、しばらくお金を稼ぐ必要もない。各地を転々とする事もできるし、それなら補足しづらいだろう。
「……あの、これは急かしてるとか、そういう事じゃないんですけど、一つの手段としてですが」
 少し言い辛そうに、エリスが前置きをする。なんだろうとエリスに視線を向けた。エリスはそれを受けて、口を開いた。
「王位奪還の為に立ちあがれば……この場合、声明を出すんでしょうか、それをすればソブリアルは、ルネーナにちょっかいをかけるのが難しくなると思います」
 ソブリアルがどう関わっているのか、それとも関わっていないのか、その辺は分からない。でもどっちにしても私が王位奪還の為に立ちあがれば、それを邪魔する行為は当然各国からの非難の対象になるだろう。婚約なんて、そんな話をしている場合ではないという感じだ。保護する対象という感じにもならない。
 後ろ盾になってやろうとか言ってくるかもしれないけど、それは友好国であるエレルノーアにお願いしているから、と断れる。おじ様には迷惑をかけてしまうかもしれないけど、手を貸してくれるだろう。王位奪還をたきつけたんだから、それくらいの責任を取るつもりはあると思いたい。
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