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幸せは、思いがけず突然やってくる。……いやほんと、予想以上の展開だよ!?

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 舞殿を迂回して、本殿で手を合わせる。
二礼、二拝、お祈りして、一礼。

 リチャードにも簡単に作法を教えて、手を合わせる。
 昨年はいろいろあったとはいえ、私は元気だし、両親も元気だ。
こうしてお詣りに来られたことの感謝を神様にお伝えする。

 願わくば、今年はいい年になりますように、と言葉を添えて。

 顔をあげると、リチャードもちょうど顔をあげたところだった。

『私は奥社までお詣りするけど、どうする?』

『もちろん、一緒に行くよ!』

『そう。ちょっと歩くけど、千本鳥居は有名だし、ちょっとした見ものよ』

 おみくじに一喜一憂する参拝客の間を通って、鳥居をくぐる。
階段をのぼって、もうひとつ鳥居をくぐる。

『すごい!圧巻だ!』

 右手の奥に見えた千本鳥居にリチャードが歓声をあげた。
隙間なく並ぶ鳥居の朱色は、見慣れた目にも美しい。

 ここも、人気のフォトスポットだ。
中国人らしい観光客に、リチャードがカメラを渡す。
ふたり並んで写真を撮ってもらい、お礼を言う。

 ……今度は、私のスマホでも写真を撮ってもらおうかな。

 写真はあまり好きではない。
SNSもしていない。
 とはいえ、好きな作家と一緒にいるのだ。
たまには、記念に写真を撮るのもいいかもしれない。

 どうせ、もう二度と会うことのない人なんだから。

しばらく鳥居を歩くと、ふたまたに鳥居の群が分かれる。

『これ、どっちを行けばいいのかな』

『右よ』

 先ほどより少し小さめの鳥居の列をゆっくりと歩く。
ここまで来たら、奥宮はすぐだ。
 お山全体を回るルートもあるけれど、そこまで本格的に山登りをするつもりの服装ではない。
一般的には奥宮までのルートをとる人が多いし、リチャードもおそらくそのつもりだろう。

『あ』

 リチャードが、前を歩くカップルに声をかける。
ここでも一枚、写真を撮ってもらうつもりらしい。

「スミマセン、シャシン、プリーズ」

 片言の日本語に、前にいたカップルが振り返った。
その顔を見た瞬間、息をのむ。

 穏やかで、知的な面立ち。
見覚えのあるシンプルな紺のコート。
カップルの男のほうは、博昭だった。

 博昭によりそうように立っているのは、華やかな着物姿の女の子だった。
派手な容姿ではなく、どちらかといえば顔立ちは地味だ。
けれど好きな人と一緒に過ごすためにめいいっぱいおしゃれしたのだろう初々しさが、輝くようにかわいらしかった。

 そんな彼女に影響されたのか、博昭もまたいきいきとした様子だった。
落ち着いた雰囲気は以前のまま、けれどどこかに華やいだ楽しそうな雰囲気がある。
彼のそんな表情を、私は見たことがなかった。

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