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幸せは、思いがけず突然やってくる。……いやほんと、予想以上の展開だよ!?

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『ありがとう。……これ、難しいね』

『慣れないと、そうかもね』

『君は慣れているの?所作も綺麗だった』

『日本人だから、それなりにね』

『他の日本人に比べても、君の所作は綺麗だと思うけど』

 他の人の邪魔にならないように楼門のほうへ歩きながら、リチャードが言う。

『そうかしら。ありがとう』

 楼門前には、カメラを構えた人がたくさんいる。

『写真、撮る?』

『え?いいの?』

『もちろんよ』

 リチャードが、ぱっと笑顔を浮かべた。

 しまった。
参道の鳥居の前でも、観光客はよく写真を撮っている。
 自分にとっては慣れた道だから、気にも留めなかったけど。
リチャード・ライターはまごうことなき観光客だ。
もっと気を使うべきだった。

 ……こういうところが、かわいくないんだろうな。

 会社の男性陣には、女性らしい気遣いに欠けるとあてこすられる時があった。
幸い、私の歴代の彼氏たちは変わり者なのか、私のそうしたところを気にする人はいなかった。
けれど結局誰とも結婚していないという現状は、私のこんな性格によるものなのかもしれない。

『もうちょっと下からとったほうが、楼門が綺麗に入るから。カメラ、貸してくれる?』

『え?一緒に撮ってくれるんじゃないの?』

『え?』
 
 リチャードはカメラを通りすがりの人に渡し、「シャシン、プリーズ」という。
そして私の手をひくと、顔をよせて囁いた。

『笑って』

 面くらいながらも、ぎこちなく笑みをうかべる。

「とりますねー、はいっ」

 リチャードにカメラを渡された高校生くらいの女の子は、はりきってシャッターを切る。

「あと2、3枚とりますよー。はいっ。はいっ」

 ちょこまか角度を変えながら写真を撮ってくれた女子高生は、数枚写真を撮って、カメラを私に渡してくれた。

「ありがとう」

 一緒に写真を撮るなんて言ってないと、リチャードには一言いいたい。
けれどこの女の子には、もちろんお礼しか言えない。

 苦笑しながらいうと、女の子は私が照れているのだと思ったらしい。
カメラを手渡しながら、ふふっとかわいらしく笑った。

「素敵な彼氏さんですね!羨ましい!」

 彼氏などではなく、さっき会ったばかりの作家とそのファンなんだけど。
女の子は、否定する暇もなく、友達のところへ走っていく。
甲高い声をあげるのを見ていると、友達と一緒に手をふってくる。
 こちらも手を振り返すと、リチャードも一緒に手を振る。
女の子たちからは、また甲高い悲鳴があがった。

『行きましょうか』

 なんだか毒気が抜かれる。
リチャードに文句を言う気も失せて、一礼して楼門をくぐった。





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