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本命の好きな子にはとことんヘタれな俺が衝動的に告白した結果、彼女がかわいすぎて死にそうです
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大欠伸をしながら、自転車をこぐ。
烏丸御池近くにある友人宅から、二条城近くの自分のマンションまでは、自転車ならすぐの距離だ。
細い路地が多い京都にしてはめずらしく、御池通の道路は広い。
自転車専用レーンまであるのは、このへんくらいじゃないだろうか。
走りやすく補整された幅広の道を、のんびり自転車で走る。
冬の冷たい空気も、年越し詣りの後の惰眠から目を覚まさせてくれるようで、今日ばかりはありがたい。
同じ道を歩いていくのは、幸せそうに手をつなぐ親子連れ。
着物姿の女子。
それに、肩をよせあって歩く恋人たち。
あーあ。
羨ましいよな。
自分は、今年の年越し詣りも男ばっかりのメンツだった。
彼女が実家のある四国に帰ってしまったという大塚。
年末に彼女にフラれたばっかりの田内。
大学時代からの男友達とだらだら遊ぶのは、社会人2年目、まだまだ遊びたい盛りの身としてはけっこう楽しい。
だがしかし、やっぱり「これが彼女と過ごす正月なら!」という気持ちはあるわけで。
"鹿島はさぁ、モテるくせになんでカノジョつくんねーの?"
友人たちの冷やかしの言葉は、いつものことだ。
それに肩をすくめて「特定の女はつくらねーだけだけど?」とうそぶくのも、いつものこと。
だが実際は、大学3回生の時からこれまでの4年間。
俺は、一人の女の子だけが、ずっと好きだ。
でも、告白もできていない。
ただうじうじしている、ただのヘタレだ。
友人たちもそれを知っていて、いじっているのだ。
大学3年から社会人2年までっていのは、人生の中でも、男女交際の華やかな時期だ。
俺は就職したのが、わりと名の通った外資系の会社だってこともあって、男友達に頼まれて、合コンに出たりはしてた。
その中で、周囲に流されるように他の子と連絡交換したり、どうしてもって言われてお試しデートくらいはしたりもしていた。
けど、この4年、彼女なんていなかった。
他の子とデートしていても、告白されても、「これが三澄なら」ってそればっかり考えてしまう。
そんなんで、他の子と付き合えるわけがない。
というか、三澄以外の女の子と付き合うとか、なんのためにって感じだ。
でも、肝心の三澄には、今まで一度も、告白できていない。
何度も告白しようとも思ったけど、フラれて顔も見れなくなったらと思うと、それもできなかった。
……本命にはヘタレなのは、自覚してる。
これまでつきあってきた彼女たちだって、その時はいちばんに好きだった。
「かわいい」「好きだ」って伝えた言葉も、嘘じゃないつもりだった。
でも、そんな彼女たちに対する「好き」と、三澄に対するこの感情は、ぜんぜん違う。
自分がこんなふうになるなんて、俺のほうがびっくりしてる。
三澄んとこの喫茶店、正月3が日は休みなんだよな。
会いたいなぁ……。
大学3年生の時、ゼミで一緒だった三澄は、頑張り屋の女の子だ。
見た目は小動物っぽい。
小柄で、真っ白な肌で、大きな目をした女の子。
内気で、人前に立つのは苦手で。
なのに押し付けられたゼミのリーダーの役割を、一所懸命丁寧に努めていた。
初めのうちは、人前に立つだけでも、顔が真っ赤だった。
びっしり書かれたメモを見ながら、しどろもどろで話していた。
そんな彼女を茶化すヤツらがいたからたしなめたら、ゼミが終わった後、わざわざお礼を言いに来てくれて。
その時のはにかんだ笑顔に、目をひかれた。
それからなんとなく目が彼女を追うようになって、困っている時に手助けをして。
与えられる「ありがとう」の言葉に、やたら嬉しくなって。
いつのまにか、好きになっていた。
なのに、これまでだったらあっさり言えていた「俺と付き合わね?」って言葉は、三澄には言えないまま、大学を卒業した。
烏丸御池近くにある友人宅から、二条城近くの自分のマンションまでは、自転車ならすぐの距離だ。
細い路地が多い京都にしてはめずらしく、御池通の道路は広い。
自転車専用レーンまであるのは、このへんくらいじゃないだろうか。
走りやすく補整された幅広の道を、のんびり自転車で走る。
冬の冷たい空気も、年越し詣りの後の惰眠から目を覚まさせてくれるようで、今日ばかりはありがたい。
同じ道を歩いていくのは、幸せそうに手をつなぐ親子連れ。
着物姿の女子。
それに、肩をよせあって歩く恋人たち。
あーあ。
羨ましいよな。
自分は、今年の年越し詣りも男ばっかりのメンツだった。
彼女が実家のある四国に帰ってしまったという大塚。
年末に彼女にフラれたばっかりの田内。
大学時代からの男友達とだらだら遊ぶのは、社会人2年目、まだまだ遊びたい盛りの身としてはけっこう楽しい。
だがしかし、やっぱり「これが彼女と過ごす正月なら!」という気持ちはあるわけで。
"鹿島はさぁ、モテるくせになんでカノジョつくんねーの?"
友人たちの冷やかしの言葉は、いつものことだ。
それに肩をすくめて「特定の女はつくらねーだけだけど?」とうそぶくのも、いつものこと。
だが実際は、大学3回生の時からこれまでの4年間。
俺は、一人の女の子だけが、ずっと好きだ。
でも、告白もできていない。
ただうじうじしている、ただのヘタレだ。
友人たちもそれを知っていて、いじっているのだ。
大学3年から社会人2年までっていのは、人生の中でも、男女交際の華やかな時期だ。
俺は就職したのが、わりと名の通った外資系の会社だってこともあって、男友達に頼まれて、合コンに出たりはしてた。
その中で、周囲に流されるように他の子と連絡交換したり、どうしてもって言われてお試しデートくらいはしたりもしていた。
けど、この4年、彼女なんていなかった。
他の子とデートしていても、告白されても、「これが三澄なら」ってそればっかり考えてしまう。
そんなんで、他の子と付き合えるわけがない。
というか、三澄以外の女の子と付き合うとか、なんのためにって感じだ。
でも、肝心の三澄には、今まで一度も、告白できていない。
何度も告白しようとも思ったけど、フラれて顔も見れなくなったらと思うと、それもできなかった。
……本命にはヘタレなのは、自覚してる。
これまでつきあってきた彼女たちだって、その時はいちばんに好きだった。
「かわいい」「好きだ」って伝えた言葉も、嘘じゃないつもりだった。
でも、そんな彼女たちに対する「好き」と、三澄に対するこの感情は、ぜんぜん違う。
自分がこんなふうになるなんて、俺のほうがびっくりしてる。
三澄んとこの喫茶店、正月3が日は休みなんだよな。
会いたいなぁ……。
大学3年生の時、ゼミで一緒だった三澄は、頑張り屋の女の子だ。
見た目は小動物っぽい。
小柄で、真っ白な肌で、大きな目をした女の子。
内気で、人前に立つのは苦手で。
なのに押し付けられたゼミのリーダーの役割を、一所懸命丁寧に努めていた。
初めのうちは、人前に立つだけでも、顔が真っ赤だった。
びっしり書かれたメモを見ながら、しどろもどろで話していた。
そんな彼女を茶化すヤツらがいたからたしなめたら、ゼミが終わった後、わざわざお礼を言いに来てくれて。
その時のはにかんだ笑顔に、目をひかれた。
それからなんとなく目が彼女を追うようになって、困っている時に手助けをして。
与えられる「ありがとう」の言葉に、やたら嬉しくなって。
いつのまにか、好きになっていた。
なのに、これまでだったらあっさり言えていた「俺と付き合わね?」って言葉は、三澄には言えないまま、大学を卒業した。
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