53 / 55
1年の半分が過ぎたけどなんにも進化してないと思ったけど、恋の種が芽吹いていたそうです。
4
しおりを挟む
わけ、わからないよ。
だって、加々美くんと私は、別にぜんぜんそういう関係ではない。
ただの同じ会社の先輩、後輩ってだけ。
これまで、親しく話したこともない。
同じ会社だから、そりゃ顔を合わせる機会はある。
ひまりちゃんと加々美くんは同期で、それなりに親しいみたいだから、ひまりちゃんに会いに来ている加々美くんには、ときどき出くわす。
その時に、軽く挨拶ぐらいはするけど、それぐらいしか話したこともないような。
あ、あと、ひまりちゃんたちと一緒の大人数の飲み会とかも、一緒に行ったことはあったっけ。
でも、二人きりで話したことも、出かけたこともない。
プライベートな連絡先すら、知らない。
なのに、なぜ、とつぜん結婚!?
「え、ええと。結婚って、なんだろ。加々美くん、どうかした?」
私が繰り返すと、加々美くんも自分のむちゃくちゃな言葉に気づいたようだった。
日に焼けた浅黒い顔をかぁっと赤く染めると、しどろもどろに言葉を紡ぐ。
「い、いや、それは、先走りすぎました。莉緒先輩がお見合いとかいうから、気が動転して……、。本当は、あの、今日、6月終わりだし、そこの神社で夏越の祓やってるし、莉緒先輩そういうの好きだから、誘ってみろってひまりにけしかけられてて……」
「ひまりちゃんが?」
夏越の祓は、6月の末日の大祓だ。
ちょうど1年の半分なので、これまでの半年にたまった穢れを落とし、残りの半年の息災を祈願する行事。
お昼とかに神事がちゃんとあるみたいなんだけど、私は子どものころから神社に設置されている茅の輪だけくぐって終わりだ。
好きって言われると、ちょっと違うのだけど。
子どものころから毎年近所の神社に行っているので、行かないと落ち着かないんだよね。
あとあの巨大な茅でできた環をぐるぐるまわるのって、なんか楽しいし。
おばあちゃんに教え込まれたから、ちゃんと呪文も覚えてる。
「水無月の夏越の祓するひとは、千歳の命延ぶというなり」ってね。
そういえば、去年のお昼休み、ひまりちゃんと会社の近くの神社で茅の輪くぐったような気がする。
ひまりちゃんの地元では、夏越の祓がないそうで、面白がってぐるぐるまわっていたような。
それを覚えていたのかな。
それにしても、ひまりちゃんが誘ってみろって、けしかけたって……?
「えっと、どういうこと?」
加々美くんの言いたいことがわからない。
仕事はできる子なのに、プライベートはぐだぐだなのかな。
行き先のチョイスはともかく、いちおうデートに誘われてるんだと思うんだけど、ひまりちゃんにけしかけられたって強調されてもなぁ……。
ひまりちゃんのことだから、男友達をけしかけて、もてない先輩をからかってるなんてことはないだろうけど。
加々美くんとふたりして、なに話してるんだろう。
加々美くんモテるのに、この感じだと女子慣れしてないよね。
まさかそれで、お試し的な感じで私に話しかけてきてるとかじゃないよね。
完全な対象外として。
そうだったら、さすがに傷つくんだけど。
とりあえず、ワンクッション。
っていうつもりで聞き返した。
でも、それが加々美くんにはプレッシャーだったみたい。
さっきよりも顔を赤くして、咳ばらいをひとつ。
それから、すごく真剣な表情で、
「好きです。付き合ってください」
だって、加々美くんと私は、別にぜんぜんそういう関係ではない。
ただの同じ会社の先輩、後輩ってだけ。
これまで、親しく話したこともない。
同じ会社だから、そりゃ顔を合わせる機会はある。
ひまりちゃんと加々美くんは同期で、それなりに親しいみたいだから、ひまりちゃんに会いに来ている加々美くんには、ときどき出くわす。
その時に、軽く挨拶ぐらいはするけど、それぐらいしか話したこともないような。
あ、あと、ひまりちゃんたちと一緒の大人数の飲み会とかも、一緒に行ったことはあったっけ。
でも、二人きりで話したことも、出かけたこともない。
プライベートな連絡先すら、知らない。
なのに、なぜ、とつぜん結婚!?
「え、ええと。結婚って、なんだろ。加々美くん、どうかした?」
私が繰り返すと、加々美くんも自分のむちゃくちゃな言葉に気づいたようだった。
日に焼けた浅黒い顔をかぁっと赤く染めると、しどろもどろに言葉を紡ぐ。
「い、いや、それは、先走りすぎました。莉緒先輩がお見合いとかいうから、気が動転して……、。本当は、あの、今日、6月終わりだし、そこの神社で夏越の祓やってるし、莉緒先輩そういうの好きだから、誘ってみろってひまりにけしかけられてて……」
「ひまりちゃんが?」
夏越の祓は、6月の末日の大祓だ。
ちょうど1年の半分なので、これまでの半年にたまった穢れを落とし、残りの半年の息災を祈願する行事。
お昼とかに神事がちゃんとあるみたいなんだけど、私は子どものころから神社に設置されている茅の輪だけくぐって終わりだ。
好きって言われると、ちょっと違うのだけど。
子どものころから毎年近所の神社に行っているので、行かないと落ち着かないんだよね。
あとあの巨大な茅でできた環をぐるぐるまわるのって、なんか楽しいし。
おばあちゃんに教え込まれたから、ちゃんと呪文も覚えてる。
「水無月の夏越の祓するひとは、千歳の命延ぶというなり」ってね。
そういえば、去年のお昼休み、ひまりちゃんと会社の近くの神社で茅の輪くぐったような気がする。
ひまりちゃんの地元では、夏越の祓がないそうで、面白がってぐるぐるまわっていたような。
それを覚えていたのかな。
それにしても、ひまりちゃんが誘ってみろって、けしかけたって……?
「えっと、どういうこと?」
加々美くんの言いたいことがわからない。
仕事はできる子なのに、プライベートはぐだぐだなのかな。
行き先のチョイスはともかく、いちおうデートに誘われてるんだと思うんだけど、ひまりちゃんにけしかけられたって強調されてもなぁ……。
ひまりちゃんのことだから、男友達をけしかけて、もてない先輩をからかってるなんてことはないだろうけど。
加々美くんとふたりして、なに話してるんだろう。
加々美くんモテるのに、この感じだと女子慣れしてないよね。
まさかそれで、お試し的な感じで私に話しかけてきてるとかじゃないよね。
完全な対象外として。
そうだったら、さすがに傷つくんだけど。
とりあえず、ワンクッション。
っていうつもりで聞き返した。
でも、それが加々美くんにはプレッシャーだったみたい。
さっきよりも顔を赤くして、咳ばらいをひとつ。
それから、すごく真剣な表情で、
「好きです。付き合ってください」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる