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最終話
しおりを挟むソファーに座った一沙はある人から届いたメッセージを読み、その内容に思わず「え…」と声を上げてしまう。丁度キッチンでの洗い物を終えた神木が「どうした?」と心配した様子でソファーに駆け寄って隣に座る。一沙はスマホの画面を彼に見せた。
「叔母からメッセージが届いて。妹が離婚することになったそうで」
「え?何でまた」
「…子供と旦那さんとの間に血の繋がりがないと判明したらしいです。元々自分に似ていないと不安に感じていた旦那さんが内緒で調べたそうで」
「ああ、托卵ってやつか?あの妹ならさもありなんて感じだな」
神木は意外ではなかったのか、あまり驚いていなかった。一美は男性にチヤホヤされるのが好きだったので、複数の男性と付き合っていても不思議ではなかったが、まさか血の繋がりのない子供を育てさせているとは想像も出来ず驚きを隠せない。
一美は山崎と結婚し、結婚式を挙げたのち男の子を出産したと叔母経由で知った。一沙は結局一美の結婚式には出席せず、それ以来自然と疎遠となったのだ。叔母も一美のやらかしと両親の所業を知り、それはそれは怒り狂って自分も縁を切ると宣言していたが、それでも必要最低限の付き合いはしていたようで今回もこうして知らせてくれたのである。
一沙は両親と妹の近況は全く知らない。結局彼らはあの後一沙に絡んでくることはなく、山崎も神木も牽制が利いたのか一沙に近づくことはなかった。結婚報告をして式を挙げ暫く経った後、部署異動してしまってそれっきりだ。両親も含めあっさりと引き下がった彼らを不気味に感じたものの、警戒は続けていたが何もなかったから一沙もすっかり忘れていた。一沙は一美のことを考えるが。
(ざまぁとも、可哀想とも思わない)
彼女は今大変な状況にいるだろうが、その辺りは両親がなんとかするはずだとどうでも良い気分だった。もう一沙には関係ない、と他人事だ。薄情かもしれないが、これが紛れもない本心だ。神木にも一沙の本心が伝わったのか、「それよりさ」と話題を変えにかかった。
「阿呆2人のことよりも一沙の体調の方が心配なんだけど?食欲落ちてるし、熱っぽい。その上吐き気もある。今日病院行ったんだろ?…まさか何か病気が見つかったとか…!」
一沙が何も言っていないのに妄想で神木の顔色が一気に悪くなる。ここ最近一沙は体調が良くなかった。病院をいくつか回り無事に体調不良の原因も分かっていたのだが、言い出すタイミングを計っていた。しかし、みるみるうちに顔色が悪くなる神木を前に黙っていることは出来なかった。
「違います病気じゃないです…」
そう言いながら一沙は自分の腹をそっと撫でた。神木は一沙の動作に注目した後ポカンとしたと思ったら、いつの日かと同じように震え出した。彼の行動パターンだとこの後抱き付いてくるところで、実際両腕を大きく広げたが思い留まる。代わりに一沙の肩を抱いて、絞り出したような声で「…ありがとう」と呟いた。
************
本編はこれで終わりですが、番外編が続きます。
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