結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

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小学校編

結婚六カ年計画 1

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 2017年3月31日。夕方6時。

 
 『はじめの計画』であるパパの家での同棲を達成して五日目である。
 今日は金曜日だから、ノー残業デーなのでそろそろ帰って来てくれるハズ。
 そう思っていると玄関から鍵を開ける音がしてドアが開いた。

「梨杏(リアン)ちゃん、ただいまー」
 やや低めの男らしいパパの声が聞こえて来た。
 私はぬるま湯でタオルを濡らし、玄関へ駆けてゆく。
 青いリボンで結ったツインテールが軽やかに弾む。

「お帰りなさい、パパ!」
 孤児院に居る間、懸命に練習した笑顔を振り撒いて左右(さすけ)さんにタオルを手渡した。
 顔や手を拭いてもらう為で、一通り拭いたら彼から受け取った。

「いつもありがとう、梨杏ちゃん」
 そう言うと左右さんは私の頭を軽く撫でる。
 思わず私は驚いてびくりと反応し、受け取ったタオルで顔を隠した。
「ごっ、ゴメン! つい……」
 左右さんも驚いてしまい、手を放す。
 しまった、と思いながらも私はタオルで顔を覆ったままだった。


 ∞∞∞∞∞
 

 大好きな人に頭を撫でられて顔がにやけっぱなしなのである!
 不意打ち甚だしく、彼はやはり天然ジゴロだ。
 このタオルも彼が付けてる香水の匂いや温かみがほんのり感じられるし……。
 相次ぐご褒美で私、嬉し過ぎて卒倒しそうです。左右さん。


 ∞∞∞∞∞


「わ、私こそ申し訳御座いません。つい驚いて……」
 私は何とか表情を持ち直し、目元だけ見せ左右さんにお疲れ様ですと伝えた。
「う、うんっ。僕も気を付けるよ」
 気を付けられたら困ると返したい所だが喉元で我慢した。
「すぐに食事の準備を致しますので、お着替えが終わりましたらリビングでお待ち下さい」
 私は洗面所へ行き、かごへタオルを投げ込むとすぐに台所へ行き作っていた料理をテーブルに並べた。
 味噌汁、ハンバーグ、サラダ、ビール、かぶの漬物……お酒は週末だけ飲むらしい。

(半年かけて計画した、結婚までの六ヵ年計画がついに始まったなぁ……)
 未だに彼と一緒に暮らせるコトが夢の様だ。
 でもココはまだスタート地点。
 6年後……私が高校1年生の2月に左右さんとフランスのパリへ行き入籍し、
 その年の6月にこの国で結婚式を行うのが私の計画なのだ。


☆新規計画達成項目
 ・2017年3月26日 左右さんとの同棲生活。
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