結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

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小学校編

結婚六カ年計画 3

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 2017年4月2日日曜日。午前8時。


「海と山、どっちを見たい?」
 左右さんの黒いランドクルーザー250の助手席。
 彼の父……つまりは将来私のお義父様になる予定の方がずっと大きな車に乗っている為、左右さんも憧れて買ったそうだ。
 大きくてカッコいい。まるで彼の様である。

「海をこの目で見てみたいです」
「海を、見たコトが無かった?」
 左右さんは驚き私を再度尋ねる。
 都合、確実に海を見ている筈ではあるのだが、私の記憶にはその景色がは全くない。
 
「物心ついた時から住んでいた祖母の家と孤児院がある斯波(さくなみ)を離れたコトがありませんでした。申し訳ございません」
「謝るコトないよ、僕の方こそごめん。それじゃあ、今日は海に行こう」
「はいっ、とても楽しみです」

 車は駐車場を出て、東の方角へ進む。
 いつもは賑やかな市の中心部も早朝は静かで、日曜日のこの時間は尚更だった。
 

 ******


 午前9時前。
 見上げる程高い堤防の前の駐車場で車から降りると、少し湿った風が変わった匂いで鼻を燻ぶる。
 海の香りだと左右さんが教えてくれた。

 私は左右さんと手を繋ぐ。
 あの階段から行こう。
 手を引かれ、堤防の斜面にある長い階段を登り切る。

 登り切った瞬間、障害物が消え風がふわりと髪を撫で思わず目を瞑る。
 目を開けると、無限に広がる空と青い海の境界が瞳に映った。
 

「わぁ、凄いっ。海です、水平線です!」
 テレビで観たよりもずっと広くどこまでも続いている海。
 おばあちゃんちの近くにあった川や池とは全然違った。
 近くではサーフィンをしている人がいたり、遠くには船が何隻も見える。
 私は鞄からスマホを取り出し、夢中になり撮影する。

「気に入ってくれたかな?」
「はいっ、とても感動しました。
 永遠に拡がる紺碧の海に、眩く輝く水面。
 私は生涯、この瞳に映った景色を忘れないと思います」
(……時々、梨杏ちゃんが10歳に思えなくなるんだよなぁ)

 堤防を降り、白い砂浜へ降りるとサクサクと音が鳴る。
 流れ着いた海藻や貝殻、蟹の死骸。
 波の音。
 本や映像では感じ取るコトが出来なかった感触である。
 こんな貴重な体験をさせてくれる左右さんはやっぱり特別な人だ。
 
「水は冷たいから今日は入らない方が良いかも。
 夏は海水浴に来れたら良いね」
「はいっ。水着も選んでくださいね」
「う、うん?」


 ******


 暫く海の景色と砂の感触を楽しんだ後、私達は車の中に戻った。
 これから昼食を食べに行き、食材を買い家に帰るのだ。

 そうだ、伝えなければいけないコトがある。
 昨日はエイプリルフールで日が悪かったけど、私がやりたいコト。

「昨日お尋ねした、私がやりたいコト……、
 左右さんとこの先ずっと一緒に居たいです」
「嬉しいな。これからも宜しくね」
「はいっ」

 多分、意味はすれ違っている。
 でも今はこれでいい。
 六年後の今頃、私達が入籍できているのなら。
 
 
 ☆新規計画達成項目
 ・2017年4月2日 左右さんとドライブデート。
         海を初めて見た。
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