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報告
しおりを挟む「旦那様、ご報告があります」
マリアベルが入学してしばらく経った。学園では令嬢の友達も出来たようで安心した。私の片腕とも言えるトニーの部下にマリアベルを見張らせている。何かあった時にはすぐに対処できるようになっているし、メアリーの実家の公爵家の子息も学園に通っているからマリアベルの事を頼んであるようだ。マリアベルは公爵家でも可愛がられていて前公爵夫妻(メアリーの両親)は何かにつけてプレゼントを送ってくる。
マリアベルがうちに帰ってきたのは八歳。マリアベルはもうじき十五歳になるんだもんなぁ……公爵家に中々マリアベルを連れて行かないものだから、早く合わせろ! と脅された……マリアベルの生活が落ち着くまで無視したけど。
しみじみとマリアベルの成長を思い浮かべていたら、トニーがとんでもない事を報告してきた。
「何か問題でもあったか?」
「はい。マリアベルお嬢様を保護していた男性が判明致しました」
ようやくか……結構時間がかかったなぁ。やはり只者ではないようだ。
「へぇ。何者だったんだ? ここまで時間がかかるなんて今までなかったよな?」
隣国の関係者である事は確かだろうな。マリアベルが読んでいた本は隣国の文字で書かれていた。
新作が出るたびにマリアベルに手渡しをするとすごい喜んでくれる。隣国の本だし、我が国用に翻訳されるのはしばらく経ってからだから先に読める優越感がある。結構頑張って手に入れているんだ……
マリアベルの先生でもあるモリス君は隣国の言葉も理解が深くマリアベルに指導できるという点もとても気に入っている。
何よりそれはマリアベルが望んだ事だから、叶えてやりたかった。モリス君のことを兄のように慕っているしモリス君もお嬢様と呼びながらも妹のように接してくれている。
伸び伸びと成長できる環境というのは良いことだが、マリアベルは未だにリアンと言う人物から貰ったクマのぬいぐるみは宝物のようで毎日一緒にクマと寝ているそうだ。
公爵家からもうさぎやらねこやら犬やらのぬいぐるみが送られてきていて、マリアベルの部屋は動物園のようだが、それらは全て飾ってある。あのクマだけは特別なようだ。
メイドが一度洗いますか? と言うとマリアベルは自分で洗うから洗い方を教えてと言ってメイドに触らせなかったそうだ。やはりリアンと言う男に会いたいのだろう……会ってしまったらマリアベルは家族を捨ててリアンを選ぶのだろうか……
そう考えると会わせるのが怖いのだが、約束通りちゃんと会わせてやりたいし、礼も言いたい。マリアベルがリアンとの生活を選ぶのなら仕方がないのかもしれない……
トニーの前では平常心を保っているつもりだが、おそらく考えている事はバレているだろう。
「お察しの通り隣国の方でした」
歯切れが悪いな。
「そうか。身分は? 平民ではないだろう。話を聞く限りしっかりとした身分があると思うのだが?」
「はい。それはそれはしっかりとした身分の方で、驚きを隠せません」
「勿体ぶるなよ……」
「……………………」
「…………おい」
「隣国の王弟殿下のご子息でした」
そう言って畏まるようにトニーは頭を下げた。
ゴホッ! 飲んでいたお茶を吐き出しそうになったじゃないか!
隣国の陛下は確か五十歳だったか? 王弟殿下とは歳が近かったよな?
あの時マリアベルは四歳で誘拐されて、リアンはまだ若かったんだよな? 従者などもいなかったのによくも教育して育ててくれたもんだと思っていたが、まさか隣国の王族とは……
そりゃ金に困っていないか……でもなぜ我が国に? 内乱があったからか! はぁ……呆然としていたらトニーが説明をしてくれた。
リアンの名前はフロリアン・フォン・オットー王弟の子息で現在の陛下の子供で第一王子と第二王子がいる。この第一王子がダメ人間だが王太子にと推す派閥と第二王子を推す派閥で内部抗争が繰り広げられていた。
そこで王弟殿下の息子であるフロリアンを推す派閥まで出来てしまい、フロリアンは第一王子と第二王子の派閥から命を狙われ始めた。
王太子になりたくないフロリアンは、姿を消す事にしたようだ。その時の潜伏先でマリアベルを見つけ保護した。と言う流れのようだ。
マリアベルを保護した時は国境近くだった為、そこを引っ越しとある山の村に身を寄せたと言う事だ。
フロリアンの元へは定期的に王弟殿下の使者が来ていてマリアベルの服や本などはその使者が持ってきていたと言うことが分かった。これでマリアベルの持ち物の謎が解けた。
「そうだったのか……そりゃ困った」
王弟殿下の息子とか……気軽に会いたいと言うわけにもいかないか。
「はい、なんとか謁見に応じてもらえるようにはしてみます」
「……頼んだよ。マリーが会いたがっているんだ」
ずっと会いたがっている事は知っている。だが私たちが悲しむと思っていつからか言わなくなった。
心の優しい子に育って嬉しいが、自分の気持ちまで抑える事はない。私たちはマリーに再び会うことができて、それだけで……
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