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お茶会はドタキャンですか!
しおりを挟む「フランチェスカ、まさか一人なの?」
お茶会の会場で王妃と侯爵夫人を待っていると二人がやってきて、王妃はキョロキョロと辺りを見渡し息子のクラウディオの姿を探した。
「え、えぇ……クラウディオ殿下は体調不良との事で本日は欠席されるとのことです。お二人に詫びていらっしゃいました」
笑顔でそう答えた。大した言い訳が思いつかなかった。心の底ではあんな事を言いながらもきっと来てくれる。なんて思っていた。お茶会をサボることによって連帯責任としてなにかしらの授業が増やされるんですもの……
レナートが『申し訳ございませんでした。私の不用意な発言のせいです』などと謝ってきたがもちろん悪いのはレナートではない。
「あら、そう。体調不良……朝は元気に学園に行っていたのに。あの子が忘れているってことはないわよね?」
えぇ。忘れてはいませんよ。しっかりと言いましたからね。
心配そうに眉を落として見せた。サボりですよ。とは言えないから。
あぁ後ろめたい……
「フランチェスカ嬢、クラウディオ殿下の婚約者として相手を立ててあげることですわよ! 男性はプライドが高いのですからしっかりと支えて差し上げることですわよ」
侯爵夫人に言われて思った。たしかにプライドは高いわね。それらしい事を公爵夫人が言って王妃様と頷き合っている。
「はい。わたくしが至らないばかりに申し訳ございませんわ」
お茶会が始まると会話のほとんどはクラウディオ殿下の話だった。王妃様は第三王子のクラウディオ殿下を可愛がっているから仕方のない事? だけど、私はやるせない気持ちになった。
「クラウディオはちゃんと学園生活を有意義に過ごしているのね。この間のテストでは上位になっていたわ。ご褒美に馬が欲しいとねだったから買ってあげたのよ。ちょうどいい子がいてクラウディオも喜んでいたわ」
満面の笑みで息子を褒める王妃を見て心の中でため息を吐く。
私がテストの山を張ったのですよ? それが見事に的中した結果がクラウディオ殿下の成績に繋がった。口が裂けても言えないわね。まさか試験勉強をしていなかったなんて!
「えぇ。クラウディオ殿下は素晴らしいと思いましたわ」
山を張ったところをしっかりと覚えていたんですもの。記憶力は確か……ですわね。
「婚約者としてフランチェスカ嬢は鼻が高いでしょうね。うちの娘も殿下と同じ学年ですけれど、今回のテストは難しかったようで殿下はさすがだ。そう言っておりましたわ」
「えぇ、そうですわね」
余計なことは言うまい。カップをそっと手にした。はぁっ。今日のお茶もとても美味しいわ。
バラの香りがほんのりと鼻に抜ける優雅な茶葉に心を落ち着かせる。
「それにしてもクラウディオったら、体調が悪いと言うのならもっと早くに言っておくべきではなくて? あの子の側近にももっとしっかりしてもらわなきゃいけないわ! フランチェスカもそう思わない? そう言う時はちゃんと注意をしてちょうだいね」
――レナート様はなんて不憫なんでしょう。幼馴染と言う事でクラウディオ殿下の世話役をされているのに。
クラウディオ殿下の執務室でレナート様にお会いすることが多々ありクラウディオ殿下の執務を手伝う日々……
彼はクラウディオ殿下よりも真摯に執務に没頭されていて、学園でも側近としてクラウディオ殿下を支えていらっしゃる事を私は知っている。
昼食の時間も同じ空間にいるからついでと言ってはなんだけど、レナート様の分も持っていっている。クラウディオ殿下は文句ばかり言うが、レナート様は好き嫌いなくいつも「美味しいです」と感想を述べられる。
面倒見のいい優しい方なのだ。そうじゃないとあの我儘なお子ちゃまに付き合えないだろう。
クラウディオが欠席ということもあり、お茶会は一時間ほどで終了となった。
「フランチェスカ嬢、お茶を飲む姿勢仕草は淑女として問題はありません。クラウディオ殿下の採点もしなくてはいけませんから、来週もう一度お茶会を開きましょう。次回は体調を崩さないようにように、しっかりフォローするのですよ」
一応侯爵夫人のお墨付きが貰えたようだ。体調管理というよりも、お茶会の当日に野菜を食べさせない。とか不本意ながらぬるいお茶を出す。とか。
こう言ってはなんだけど、クラウディオは単純な男だから、その辺は……まぁなんとかなるだろう――。
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