人間界では、エッチにGO!♥

夢幻洞

文字の大きさ
28 / 56
第3章 お供え物を求めて

    家族の1員になって

しおりを挟む
 京香はそのまま自室へ寝かせられ、朝になるまで目覚めなかった。風呂場での出来事などは全く覚えていなかった。下着も寝巻きも着せられていたので、直君を装った男と風呂場で絡み合っていたとはとても思えない。

 いつも迎える清々しい朝の下、京香は登校の準備を終えるとダイニングへ向かった。母親がテーブルの上に朝食を用意している。母親の方も自分の娘に性的悪戯をしたことなど全く覚えていなかった。当たり前の表情で、普段通りの朝を過ごしている。

 「おはよう、お母さん。お父さん、今日は早いの?」

 我輩がテーブル横の床で、ミルクを飲んでいると京香が部屋へ入ってきた。我輩は飲むのを止め、尻尾を振りながら京香を見た。昨夜、風呂場で起きたことなどつゆとも知らない顔をしている京香は、我輩の愛くるしい姿を見て瞳を輝かせた。

 「きゃあ❤️ おはよう、シロ。昨日は、お母さんと1緒だったの?」

 京香は、我輩を顔の前まで持ち上げる。我輩は、ミルクの付いた舌で京香の唇をペロペロ舐めた。

 「アハハ、くすぐったいよ、シロ❤️」

 京香は、我輩のキュートな鼻にキスをして床へ下ろした。 我輩は再びミルクを舐め始めた。

 「そうですよ、京香。あなたは、お風呂から上がったら、さっさと上へ行って寝てしまうのですからね。パールちゃんが淋しがってたから、昨日は、私と1緒に寝ました」

 そう、我輩は昨夜、母親と1緒に寝たのだ。母親が身に付けていたブラジャーとショーツをお供えに受け取ったあと、夢幻仙様は憑依を解いて夢幻洞へ帰っていった。

 「エロよ、お供え物をたくさん集めて祭壇に捧げるのじゃ。しからば、渾沌門は開くじゃろう」

 我輩は、正気に戻った母親の胸の中で、一夜を明かしたのだ。夜遅くになって父親が帰宅したが、母親には頭が上がらないらしく、1言も意見を言えずに、我輩を承認してしまった。

 我輩は、これから市営墓地の妲己ちゃんを訪ねようと思う。夢幻洞へ彼女を招くためだ。もし、了承されれば、我輩は妲己ちゃんと1緒にお供え物集めができるだろう。お供え物については、我輩よりも彼女の方がずっと詳しそうなので、効率良く集められそうだ。

 「さあ、パールちゃん。お母さんと散歩に行きましょうね❤️」

 我輩達は、京香と別れて散歩をしに外へ出た。リードは無いので、我輩は自由に歩くことができた。母親は、のんびりと周囲を眺めながら、我輩の傍らを歩いている。特に、我輩の行動に注意を払っている様子は無さそうだ。静かにしていれば、リードを付けられることも無さそうだった。

 我輩は、時々寄り道を装いながら、母親を市営墓地に誘導した。途中、1本の電柱を巡って大型犬と睨み合いになる、というトラブルもあったが、首尾よく市営墓地に着くことができた。

 ワンッ、ワンッ、ワンッ!!

 我輩は墓地に向かって吠えた。しかし、墓地には妲己ちゃんの炎は見られなかった。我輩は、再び吠えながら墓地を見回した。やはり狐火は現れなかった。

 朝の澄んだ陽光が、墓地を隅々まで照らし出している。夜露に濡れた植え込みの葉が、朝日を浴びてキラキラ輝いている。墓石の上では、雀がチュンチュン鳴きながら、羽ずくろいをしていた。

 「······誰よ、朝っぱらからうるさいなぁ」

 我輩の中に、妲己ちゃんの気だるそうな声が響いた。

 ワンッ、ワンッ!!

 「あんた、あの仙犬じゃない······あたいに会いたいなら夜に来なさいよぉ。っとに何も知らないんだから······」

 妲己ちゃんの剣呑な抗議が終わると、墓地は再び静かになり、2度と妲己ちゃんの声が聞こえてくることはなかった。

 我輩は知らなかったが、狐火の活動時間は夜間らしく、日中は墓地で休んでいるようだった。

 「どうしたの、パールちゃん。墓地にほえたりして? お化けでもいるの? ウフフ、お化けが出たら助けてね、パールちゃん❤️」

 我輩は、夜に改めて来ることにした······

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...