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第114話 魔法の考察
しおりを挟む「みんなに相談っていうかね、どう思うか聞いてほしいことがあるの。」
「何かしら?」
「私とあっくんでどんな魔法ができるか試しに行ったでしょ!最初はまだ試してなかった土の因子検査をして、私は水の因子しかなかったんだけど、あっくんは火、風、土の3因子持ってたの。」
「あら?確か人の因子は1つだけだったんじゃなかったかしら?」
「そうなの。でもあっくんは3因子あった。でもね、火が使えなかったの。」
「因子があるのに使えないの?」
「川端さん因子持ってんのに使えないの?意味ないじゃん!宝の持ち腐れってやつ?あはは!川端さんでもそんなことあるんだっ!」
優汰は何故か嬉しそうだ。
「お前なにそんなに嬉しそうにニヤついてんだよ!力があるのに使えなかったならいざと言う時守れないんだぞ!……あ~なるほど。優汰は俺に守られなくてもいいってことか優汰強いもんなぁそっかそっかぁなら仕方ないな!」
「俺そんなこと言ってないよ!川端さん俺のこともちゃんと守ってよ!」
「相変わらず危機感の足りねぇやつだ!」
「なんだよ!俺だってまだわかんないだけで全属性の因子持ってるかもしれないだろ!そしたら俺が1番強くなるんだからね!」
そんなことを言う優汰に呆れる。
「あのさぁ優汰、仮に全属性の因子持ってても、優汰の魔力量じゃあっくんには勝てないと思うよ?」
「なんでだよ!使い方次第だろっ!それに地球人はみんな魔力量が多いって皇帝も言ってたもんねっ!」
「あっくんはね、漏れてた魔力で顔の判別もできないくらいだったの。優汰は他のみんなと変わらないくらい。そもそも魔力が多くないと大きな魔法は発現できないの。わかった?」
優汰は私の言葉を聞き、目を瞬かせた後
「川端さぁん!俺弱いんだって!守ってくれなきゃ俺死んじゃうよぉぉ!ちゃんと守ってよぉぉぉ!」
あっくんに泣きついた。
その場の全員が呆れる。
「アホの子に構ってたら話が進まないから無視するよ!それでね、聞いて欲しいのはここからで、私が水で氷と霧を作ったら、他の因子を隠してるって詰め寄られたの。で、話が進んでいったら、どうやらここの人達は物理の知識がほとんどないってことに気がついたの。空にある雲あるでしょ?あれはただの水蒸気の集まり。それなのに、乗れそうだと思うか聞いたら乗れそうだって言ったんだよ?」
「はぁ?異世界人て馬鹿ばっかなわけ?」
麗は完全に見下していた。
「どういうこと?氷と霧は同じ水だわ。どうしてできないかの方が謎よ。」
カオリンも否定的な意見だ。
「俺達も最初は混乱してたんですけど、どうやらしーちゃんは分子速度まで想像しながら氷や霧を発現させてるみたいなんです。対してこっちの人間は、分子なんてわかっちゃいない。氷も霧も、水が材料だとはわかっていても同じ物だとは思っていない。だからイメージが固まらない。発現には至らない。できるわけないとどこかで思っているから。」
「そういうことなのね。じゃあ、イメージが固まっていればこの国の人達も可能になるわけね。」
「それは無理だと思います。しーちゃんが言っていました。固定観念を覆すのは容易ではないと。例え説明したとしても変人扱いされるのがオチだと。俺もそう思います。こっちの世界では産まれた時から物理がほぼないのが当たり前なんです。いきなり分子の話をしたとしても、受け入れられるわけがない。それは自分達の今までを否定することですから。それに、これは俺達にとって悪い話じゃない。とても大きなアドバンテージに成り得る。対抗できる道が見えたんだ。わざわざこっちの奴等に力をつけさせる必要なんてない。」
「それもそうね。」
私は更にわからなかったことをカオリンにぶつける。
「カオリン!私は明確なイメージと物理が可能な範囲なら魔法は発現できると思ったんだけど、説明がつかないことがあったの。30cmくらいの水の塊を20m先の的に当てたらボロボロになったの。もちろん、私が投げるくらいの目でしっかり追えるスピードで。多少の衝撃があったとしても、的がボロボロになるような威力があるはずないと思わない?」
「そうね、それ程の威力があるのはおかしいわ。ねぇ、それって普通の水だったの?」
「え?」
「こっちの人の普通はそれなのよね?」
あっくんと顔を見合わせる。
「あっくんはどう思う?私は見た目普通の水だったと思うんだけど…」
「俺も見た感じはただの水だと思ったけど……そうか!例えばだけど、あの水の球。もしかして圧縮されてた可能性は?こっちでは水の攻撃であの威力は普通なんだ。そうだと思ってるなら分子云々がわかってなくてもそのイメージができていれば可能だ。無意識に圧縮なり、他の何らかをしていたとすれば?」
「そっか!圧縮だけなら見た目は水だよね!それが物理に反してなければ実現するってこと?」
「そう!多分そう思えるならしーちゃんもできるよ!」
「うん!それならイメージできそう。やれると思う!」
「解決しそうで良かったね。問題は俺だよ。はぁーどうやったら火が出るっつーんだ…」
困り果てているあっくん。
「川端君は風と土は普通に使えたの?」
「はい。元からある物を操作するなら簡単でした。でも火は、何もない所からどうやって火を出現させるのか、イメージどころか無理だと思ってしまって。しーちゃんに薪についた火を大きくしてみてって言われてやってみたんですけど、それも風で大きくしてない?って言われて…」
少し考えたカオリンは
「川端君は火を出すのに必要な物ってなんだと思う?」
と聞いた。
「火がつくほどの高温の熱源を発生させたり、火を起こすキッカケの静電気だったり。」
「………静電気なら簡単なんじゃないかしら?」
「それはどうしてですか?」
「人間の身体は電気が流れているわ。私達の行動全てが脳からの電気信号。川端君は火の因子を持っているということは、川端君自身が起点なんでしょう?外で増幅させると考えることはできないかしら?」
それにうーんと唸るあっくん。
「言っている意味はわかりますが、それを外で増幅するイメージができそうもないです。常に帯電させておくならできるかもしれませんが、そうすると日常生活に支障が出そうですよね。」
「確かに普段の生活からとなると難しいわよね。いざという時発現させられないのも困るし…」
「ねぇ、手を擦り合わせるのは?早くやったら熱いよね?」
おぉっ!麗ナイス!
「麗凄い閃きっ!それなら簡単!あっくんはどう?できそう?」
「擦り合わせて高温かぁ…手も燃え上がりそうだな。それに、どれだけ早く擦り合わせないといけないか…」
みんなで頭を捻る…うーーーん…
素早く発現できなきゃ意味がないよね。
瞬時に高温…えーーなんかあるかな?
あっ!
「あっくん!!!指パッチンは?」
「指パッチンてなに?」
「知らないの??これだよ!」
お馴染みの親指と中指を擦り合わせて見せる。
因みに私は指パッチンのパッチンの音は何故か鳴らないけど!
私の指パッチンポーズを見たあっくんは
「クククッ、あっはははは!フィンガースナップのことね!なんのことなのかと思ったよ!あはは!」
大笑いした。
…もしかして指パッチンって地域独自の言い方?
フィンガースナップなんて小洒落た言い方初めて聞いたんですけど!
「紫愛ちゃん指鳴ってないじゃん!!だっせぇーー!」
と、優汰も大笑いしてる。
「おい!駄犬が御主人様を笑うとは何事だ!」
いつの間にか笑いから復活したあっくんが優汰に怒鳴っている。
そのやり取りを見てカオリンが大笑いし、麗は呆れ、金谷さんはそれをジィっと見守るいつものスタイル。
一時の平和が部屋を包み込んだ。
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