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第115話 火魔法と水の弾
しおりを挟む「指パッチンでどうにかなりそう?」
イメージだけで火が出せないなら自ら起因を作ればいいと指パッチンを提案したけど、肝心のあっくんができそうにないと言うならばまた他の手段を考えなければならない。
「うん。これなら摩擦熱からうまく熱源想像できそうだし、何より、これが上手くいけば一瞬で火が出るのがいいね!」
「火が出せれば火魔法も色々できるようになるんじゃない?早くあの演習場まで行って試してみようよ!」
「そうしたいけどさ、あの場所って多分そんなに多くないと思うんだよ。下手すれば一箇所だけかも。毎日時間を決めて誰にも邪魔されないで使えるように交渉したい。そうすれば騎士の練習の妨げにもならないでしょ?」
「あ、そっか。見られながらやるのは確かに嫌。
じゃあ、明日から?」
「そうだね。すぐに許しが出れば明日以降ってことになるかな?」
「ハンスに許可取り頼んでくる!」
部屋の扉を開け、ハンスを呼ぶ。
「ハンス!ちょっとお遣い頼まれてくれない?」
「はい。なんでございましょう?」
「ギュンターにね、魔法の練習場を貸切で使わせてもらえるように頼んできてほしいの。
なるべく早く使えるようにしてほしい。使える時間は騎士達の都合の良いようにギュンターが決めてくれていいから。って。
お願いできる?」
「はい。では、今すぐに行って参ります。」
「一人では駄目だよ!あと二人は一緒に連れてって。危ないから!」
「御心配をありがとうございます。
そうさせていただきます。」
「よろしくね!」
「あっくん!頼んできた!」
「ありがとう。みんなには魔力制御をやったし、香織さんも一人で練習あるのみ。
俺達は今からどうする?」
「ここじゃ魔法の練習はできないし…
あ!銃!銃の仕組み教えてほしい!」
「じゃあ俺の部屋行こうか。俺達が喋ってたら気が散るだろうし。絵に描いて説明した方が多分より想像しやすいと思うよ。」
「うん!じゃあお願い!」
「香織さん、俺としーちゃんは魔法の使い方について色々考えたいので俺の部屋に行きます。何かあったらすぐ呼んでください。」
「わかったわ。私達も頑張るわね。」
「さて、しーちゃんは銃のことどこまで知ってるかな?」
「火薬で鉄の玉を飛ばして、螺旋状に飛んでいくのは知ってる。」
「うん。正解。
しーちゃんの知りたいのは、銃の仕組みというよりは、どうやって弾を飛ばしているか?ってことだよね?」
「そう。水でもそれが可能なのかどうかが知りたい。」
「火薬で弾を飛ばすのは正解。
では、理屈としてはどうか?
簡単に言うと、銃身から発射する時に火薬でガスを発生させ、圧力を生み出して飛ばしてるんだ。」
「圧力?」
「小学校の時にやったことないかな?
空気の圧力を使って水を飛ばす水鉄砲とか球を飛ばす空気銃とか。」
「やったことあるかも。筒の片方に小さな穴開けて、もう片方には隙間ないように布詰めて押し出すやつだよね?」
「そうそう!それだよ!
あれも空気の圧力だよね?
あれのもっと強いのが銃。」
「へぇー。考え方は結構単純なんだね。」
「そうなんだよ。」
「じゃあ螺旋状に飛ぶのはどうして?」
「あれはね、銃身に溝を彫って、弾に回転が加わるようにしてるんだ。これをライフリングって言うんだ。
その目的は、より真っ直ぐ正確に飛ばすため。回転がかかっていないと弾がブレて遠くに飛ばないし、狙った方向からもズレる。
弾も溝に密着して隙間を埋めることにより、機密性をより高め銃身と密着してガスの逃げ道を失くし、初速が早くなる。」
「ん?なんかそれ、サッカーで聞いた気がする。無回転ボールがなんちゃらとか…興味なかったから聞き流したけど、もしかしてそれも?」
「そうそう!無回転でボールを蹴るとさ、ボールがブレるの。キーパーからすると回転がかかって真っ直ぐ飛んでくるある程度予測できるボールと、ブレてどこに飛んでくるか予測できないボール。どっちが取りやすいか聞くまでもないよね。」
「空気抵抗に逆らうか受けるかってことかぁ。」
「そういうこと。どう?水でもできそう?」
「いや、無理じゃない?
水の弾は私が水自体に回転かけるとして、空気の圧力どうするの?あっくんは風魔法で飛ばしたんだと思う。イメージもガッチリだったから使うのも無意識だよね?でも私は水しかないんだよ?」
「空気の代わりに水で圧力かけたら駄目なの?」
「…水で?」
「そう。魔法はイメージ。回転かけた水の弾を水の圧力で弾き飛ばす。しーちゃんも俺の火魔法みたいに指で飛ばす動作とかしたら、よりイメージができそうだなと思ったんだけど、無理かな?」
「うーーーん、なんとなくイメージはできそうな感じはしてきたけど、多分かなり練習しないとうまくいかない気がする。」
「それでもいいよ!道が見えたんなら練習あるのみ!」
「そうだね!正解なんてないんだし、頑張る!」
コンコン
「紫愛様、いらっしゃいますか?ハンスでございます。ただいま戻りました。」
「あっ!ハンス戻ってきたよ!
練習場借りれることになったかな?」
「聞きに出よう。」
「お帰り。ギュンターなんて言ってた?」
「はい。毎日お昼の休憩時間でしたら貸切可能とのことでした。
時間帯は12時~14時まで。それ以降となりますと合同での練習とさせていただきたいとのことです。
第一騎士団員にはすぐに周知させ、明日から使用可能となるとのことです。」
「ありがとう!あっくん、やっぱり明日からだって!
今からどうしようか?」
「練習場に見学に行ってみないか?
騎士達の魔法の威力が知りたい。
どれ程の威力がこの世界の平均か、どんなことが魔法として一般的なのか知りたい。
俺達は戦いに行くから強くてもいいけど、他の四人も強かった場合、戦地に放り込まれる危険がある。俺達が居ない時に他の戦地に強制的に向かわせられたらどうしようもない。
普段は実力を隠しておくためにもこの世界での基準は知るべきだろう。」
「うん!じゃあ見学に行こう!」
「しーちゃんは絶対俺から離れないでね!」
「分かってる!」
あっくんは護衛のラルフとハンスと共に練習場に行こうと言う。
ラルフはカオリンの護衛だから置いて行こうと思ってたんだけど
「今一番信用できるのがラルフだ。
あいつは裏切らないと思う。」
と言われ
「どうしてそんなことが言えるの?」
と聞いたら
「魔法が使える者は貴族。貴族は血の濃さの関係で政略結婚が義務付けられている。どんなに相手が腐ったやつでも離縁はほぼ不可能らしい。それで随分と心を病んでいたみたいでね、俺が皇帝に直談判して離縁させたんだ。だから今は皇帝よりも俺達にもの凄く恩義を感じてるみたい。」
と言われた。
元旦那のことを思い出す。
強制される結婚が義務…私は脅されて仕方なくだったけど、それが義務だなんて!
「この国は本当にゴミ以下だ。
胸糞悪い。最悪。」
自分でも発する声が低く、表情が凍りつくのがわかってしまう。
血の濃さ云々言っての政略結婚なら、子作りだって強制ってことでしょ!
あの屈辱的で苦痛だけの記憶が思い起こされる。
「しーちゃん?ごめん、言うべきじゃなかった。」
「ううん、知れて良かった。
この国の在り方は知るべきことだと思う。
ここに住んでる人でも苦しんでる人はいるってことも知れて良かった。
あの偽善者面した口だけ皇帝は何やってんの?」
「皇帝は甘ちゃんだ。どうにかしたいと表面では言っていても行動に移す勇気のない腰抜けだった。」
「だった?」
「俺が離縁の話してきた時、喝入れた。
現状打破のキッカケも与えた。
本来拐われてきた俺がすることじゃないんだけどね。苦しんで追い詰められて限界寸前のラルフ見たらさ、正しくあろうと頑張っているラルフの味方したいと思ったんだ。どこの世界でも良い人間もいれば悪い人間もいるんだなって実感したよ。」
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