国王陛下の大迷惑な求婚

市尾彩佳

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第二章 王子王女 襲来

14、日本に帰れないあたしの、心の拠り所

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 お気付きかと思いますが、あたしの報復は時間が経つほど威力を発揮するものなんだ。

 侍女服を着て廊下を歩いていると、前方から二人の王女様(とお付きの侍女さんたち)が歩いてきた。
 あたしは道を譲るべく、廊下の端に寄ってお辞儀をする。
 王女様たちはあたしをちらっと見るものの、障害物を確認しただけみたいな感じですぐ目をそらす。
 あたしが「ソルバイト陛下の婚約者」だなんて、夢にも思わないんだろうな。認めてほしいわけじゃないんだけど、こうも気付かれないと凹んでしまう。素のあたしは、ホント取るに足らない存在なんだな、と。
 まぁ、花魁衣装のときは厚塗り化粧だったし、気付かれないほうが好都合なんだけど。

 二人は熱心に話をしながら、あたしの前を通り過ぎた。
「わたくしたち全員でご招待すれば、ソルバイト陛下も応じてくださると思うの」
「全員って、ご婚約者の寝室にまで押し入ったというあの三人もですの?」
「まさか! わたくしはあの方々を王女と思ってませんわ。ひとの寝室にまで勝手に入り込むような方々とお近づきになんかなりたくありません」
「そうですわね。わたくしも、先ほどあの方々と行き合ったのですけど、話しかけてきたそうなのを無視して立ち去ってやりましたの」
「ほほほ、いい気味。わたくしもそうしてやりますわ」
 二人は「ほほほ」「ほほほ」と笑いながら、あたしの前を歩き去る。

 ……狙った通りの反応なんだけど、うーん、なんだかなぁ……。

 ブラウスが破れる原因を作ったバカ姫たちは許せない。
でもあたしがやってることって、いじめっ子と同じじゃない? クラスのみんなに悪口を吹き込んで、「みんなであの子を無視しよう!」という空気を作り出す。
 バカ姫たちをやり込めた時は腹が立ちすぎて考えられなかったけど、時間が経って冷静になった今では、「たかだかブラウス一枚でここまでやるってどうよ?」と自分に問わずにはいられない。

 廊下の隅に立ったままもんもんと考えていたあたしは、周囲に注意をむけることを忘れちゃってたんだ。
 だから、気付いたのは声をかけられたときだった。

「わたくしたちを無視するなんて、いい度胸ね」
 驚いて顔を上げると、バカ姫たち(とお付きの侍女さんたち)がいつの間にか目の前にいて、あたしをにらみ付けていた。

 彼女たちの横柄な態度にむっとして、あたしはつっけんどんに答える。
「考え事してて周りに目がいかなかっただけです。それで、あたしになんの用ですか?」

 真ん中に立ってたバカ姫──コンディータっていったかな──が、怒りの形相をして怒鳴った。
「『なんの用か』ではありませんわ! おまえの都合のいいことを舞花様に吹き込んだくせに!」

 ……えーと、その「舞花様」ってのはあたしのことなんですけどね?

 この人たちには一度ははっきりそう言ったのに、気付かないどころか、その可能性を考えもしないみたいだ。
 ここに陛下を呼んで証明してもらうこともできるけど、正体を気付かれず城の中を歩き回れるメリットを捨てたくない。素の『舞花様』があたしだと知ったとたん、『舞花様』のことも思いっきり見下しそうだし。

 あたしがもらした小さなため息を、コンディータの右隣のバカ姫──多分フェロー──に気付かれてしまった。
「ため息などついて! 王女であるわたくしたちをバカにしているの!?」
 こんな至近距離で気付かれないわけがないか。

 コンディータの左隣のバカ姫──残るはカーリン──も怒鳴りつけてくる。

「おまえのせいで誰にも相手にされなくなってしまったではないの! どうしてくれるの!?」

 切実さのにじむその叫び声を聞いて、あたしは「いい気味」なんて思ってしまった。
 だって、この人たち悪いことしたなんてこれっぽっちも思ってないんだもん。『宝物』を破られたことより、興味本位で粗雑に扱われたことのほうに『舞花様』が傷付いてるってことをわかってないんだもん。

 さっきもんもんと考えてたことなんて吹き飛んで、あたしはにやりと笑ってしまう。
 王女であるあんたたちが誰にも相手にされなくなったことがどれほどのことか、ある程度はわかってるつもり。だからって罪悪感を覚えたり、報復を控えたりなんかするもんか。

 コンディータが、かっと目を見開いて叫んだ。
「おまえはわざと、舞花様がわたくしたちを嫌うように仕向けたのね!」
 いやいや、わざと仕向けなくたって、あんたたちが直接『舞花様』に嫌われるようなことしてるから。
 笑いをこらえるあたしに、お付きの侍女さんたち(計六人)も口々に叫ぶ。
「ただの侍女のくせに、信じられないわ!」
「どういう神経をしているのかしら!?」

 あたしに頭突きを食らわせそうな勢いで一歩前に出ると、コンディータは脅すように怒鳴った。
「舞花様に本当のことを話しなさい!」
 あたしは即答する。
「本当のことを話しました」
 実際は話すまでもないんだけど、そういうことにしておいていいよね。

 続いてカーリンが金切り声を上げる。
「おまえが舞花様の部屋にわたくしたちを招き入れたではないの! それをわたくしたちが勝手に押し入ったなどと話すなんて!」
「あなた方が入れろと命令してきたんじゃないですか。断ったところで引き下がってくれました? それに、寝室にまで入っていいなんて、あたし一言も言ってません。それを『勝手に押し入った』と表現したまでです」

 フェローが顎を上げて、馬鹿にしたようにあたしに言った。
「ろくな身分も持たないくせに、エラそうに何を言うの! 上の者を立てるということを知らないの? わたくしたちは押し入っていないし、舞花様の宝物とやらを引き裂いてなどいません。わたくしたちがそう言うのだから、それが真実でおまえが間違っているのです!」

 信っじられない! 何その横暴論理!
「そうやって権力を振りかざして『真実』を捻じ曲げるのが、あなたがたの流儀なんですか? わかりました。そのことも『舞花様』に報告しておきます」
 これ以上話したって無駄だわ。あたしはさっさと話を切り上げる。

 そばにいるのも嫌で立ち去ろうとすると、肩を乱暴に掴まれた。
「お待ち! 話は済んでいないわ!」
「わたくしたちは何も悪いことなどしていないと舞花様に話すと誓うまで、おまえを帰すわけにはいきません!」
 バカ姫たちとそのお付きの侍女、総勢九人であたしに掴みかかってくる。
 長い爪が袖の上から腕に食い込んだり、髪まで掴まれて、あたしはたまらず悲鳴を上げた。
「痛っ! ちょ、やめて……!」
 もみくちゃにされるせいで、声も満足に出ない。あたしは背中を丸めて、自分を守る体勢を取る。

 髪の毛抜ける……!
 と思ったそのとき、若いと思われる男性の声が響いた。

「やめないか! コンディータ、フェロー王女、カーリン王女!」
 その瞬間、あたしは手という手から解放される。

 え……? 誰……?

 バカ姫たちとお付きの侍女は、全員同じ方向を見ている。身体を起こしたあたしも、彼女たちと同じ方向、廊下の先に目を向けた。

 たった今、角から姿を現した男性は、あっという間に近くまでくる。
 あたしへの横暴とは真逆に、バカ姫たちは気まずそうにもじもじした。
 二十代前半の、新社会人っぽい雰囲気の男性は、バカ姫一人一人に目を向けながら叱りつけた。
「コンディータ、部屋でおとなしくしていろと言っただろう。フェロー王女とカーリン王女もです。強制的に国へ帰される不名誉を与えられなかっただけでもありがたいのに、これ以上問題を起こしてどうするのです?」

 コンディータが思い余ったように、男性に訴える。
「ラト兄様、わたくし、どうしても納得できません! わたくしたち、何も悪いことをしていないのに、どうして負け犬みたいに部屋に閉じこもらなければならないんですの? 悪いのはここにいる女だというのに!」
 コンディータの強気に押されるようにして、フェローとカーリンも口々に言った。
「コンディータ様の言う通りですわ! そこの女が舞花様に嘘をついたんです!」
「この女は、自分の罪をわたくしたちになすりつけたのですわ! ラテライト様、コンディータ様のためにも、この女の罪を暴き立ててくださいませ!」

 この男は、コンディータの兄なのか。
 敵と判断して、あたしは男に警戒の目を向ける。バカ姫たちを止めてくれはしたけど、身内びいきで彼女たちの言い分を信じるかもしれないから。

 多勢に無勢に男も加わるとなったら、あたしに勝ち目はない。そろそろフォージにヘルプをもとめようかと思っていると、男は思いがけない行動に出た。

 あたしに向かって深々と頭を下げたのだ。

「私の妹と、妹の友人たちの無礼をお詫びします。申し訳ありません」

 ぎょっとしたのは、あたしだけじゃなかった。ううん、バカ姫たちはあたし以上に驚いた。
「ラト兄様!?」
「ラテライト様が何故侍女ごときに頭を下げなければならないのです!?」

 顔を上げたラテライト? という男性は、バカ姫たちをにらみつけて言った。
「理由がわからないというのなら、わかるようになるまでお部屋に戻って考えてください。──コンディータ、おまえもだ。答えが見つかるまで、部屋から出ないように」
「で、でもラト兄様、わたくしたちは何も──」
「部屋に戻れと言ったのが聞こえなかったのか?」
 兄の怒りに恐れをなしたのか、コンディータは不承不承去っていく。フェローとカーリン、お付きの侍女たちもそれに続き、廊下からひとけがなくなった。

 ぽかんとしながら彼女たちを見送っていたあたしに、男性が声をかけてくる。
「お怪我はありませんか?」
「あ、はい。大丈夫です」
 頭皮とか腕とかがまだちょっと痛いけど、こんな痛みすぐ消えるだろう。

 この場に残った男性は、丁寧な口調で、あたしに話しかけてきた。
「自己紹介が遅れて申し訳ありません。私はアンローダー国第二王子ラテライトといいます。妹たちの無礼を改めてお詫び申し上げます。──舞花様」

 同一人物だと気付いてもらいたい気持ちも、もうしばらく別人だと思わせておきたいという気持ちもあったはずなのに、いざ言い当てられるとあたしは動揺してしまった。
「へ? あ、あの……」
 こんなふうに口ごもったら、「そうです」と答えてるようなものだ。

 ラテライト王子は、言い当てられてほっとしたように微笑んだ。
「やっぱり舞花様でいらっしゃいますよね? ちらっと見ただけでは見過ごしていたかもしれませんが、こうしてじっくりお顔を拝見すればわかります」

 バレてるなら、ごまかしても仕方ないか。
「あの、このことは……」
「別人を装いたい何らかのご事情があるのですよね? お約束します。誰にも言いません。もちろん妹たちにも」
 そう言っていたずらっぽく笑う彼がかわいくて、あたしもつられて表情がゆるむ。
「はい、誰にも内緒ということでよろしくお願いします」
 あたしの警戒心が解けたからだろうか、ラテライト王子はこう切り出した。
「ご都合悪くなければ、少しお時間よろしいでしょうか?」


 あたしは、ラテライト王子を自分の部屋に案内した。
彼にこう言われたからだ。

 ──私の国では、布の生産が盛んです。他国にはない、珍しい布もあります。我が国の技術でなんとかできるのであれば、舞花様の宝物を修繕させていただきたいのです。修繕できたとしても、妹たちを許してほしいなどとは申しません。少なくとも、妹たちが舞花様に悪いことをしたと自覚し、心から謝罪する気持ちになるまでは、極力部屋から出さないことにしました。妹の友人たちの国にも連絡し、承諾済みです。

 王子はこうも言った。
 ──我が国の産業のことですから、私も多少知識はあります。お借りできれば国にいる職人たちにも見せて知恵を借りるのですが、そういうわけにはいきませんよね?
 少なくとも、バカ姫たちよりわかってくれていると感じたので、無碍にもできず、ブラウスを見せることにしたの。

 寝室にある鍵付きの戸棚からブラウスを出して、あたしは居室へと運んだ。
 あたしが異世界から来たことは、王子王女方にも周知のことなので、あたしはためらわず口にする。
「これなんですけど、素材はこの世界にないものだと思うんです。だから……」
 修繕は無理だろうという言葉は濁す。背中がぱっくり開いちゃって、日本でもこれは処分でしょうとなるはずだ。

「手に取って、拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
 身内がバカをやらかしたからこそか、ラテライト王子の対応はすごく丁寧だ。
 そんなところに好感を持てて、あたしはすんなり「どうぞ」と言うことができた。

「失礼します」
 破れ目がどんなふうになっているか、確かめようとしたのだろう。王子は慎重にブラウスを広げる。袖があることに気付くと、彼は一目でわかるくらいに真っ赤になった。
「これは、その……」
 動揺して口ごもる。

 この世界の人たちには、そんなにブラウスが恥ずかしいものに見えるのかしらん。あたしまで頬が熱くなってしまう。
 ブラウスのことをいかがわしいだの破廉恥だの言われてもぴんとこなかったんだけど、この反応を見てようやくわかったわよ。これからはひとに見せないようにしよう、うん。

 ラテライト王子は、動揺しながらも目的を果たそうと頑張ってくれた。
「は……初めて見る布です。使われている糸もボタンも、見たことのない素材です。いったい、これは……?」
「ボタンは多分プラスチックで、糸は……綿とポリエステルだそうです」
 あたしはブラウスについている洗濯表示タグの裏を見て答える。

 やっぱりというかなんというか、ラテライト王子は困惑した。
「ぽりえすてる……? 聞いたことがない糸です。興味深いですが、今は宝物の修繕について話しているのでしたね。──ここまで生地が薄く大きく割けているとなると、元の状態に近い形での修繕は無理そうです。となると、当て布をして修繕するしかないのですが、それでしたらディオファーンの職人たちにもできること。それがなされていないということは、そういう修繕を舞花様が望んでおられないと理解させていただいて差し支えないでしょうか?」

 布の生産に力を入れてる国の王子様って、こういうことまで勉強するのだろうか。それだけでなく、察しのよさにも驚いてしまう。あたしの周りにいる男性って、察しが悪いどころか、話さえ聞かない人が多いから。あたしの父や兄、元彼もそうだったし、この世界でも陛下を筆頭に、親切なロットさんでさえ「陛下と結婚するつもりはない」というあたしの言葉はスルーするもんなぁ(遠い目)

 それはともかくとして。
 察してもらったおかげで、話がはやくていいや。
「……はい」
 控えめに答えると、王子は悲しそうな顔をした。
「お時間を取っていただいたのに、お力になれず申し訳ありません」
「いえ、気になさらないでください」

「……どのようないわくのあるお品か、お伺いしても?」
 遠慮がちに訊ねられ、あたしはぽつぽつと話した。
「実のところ、故郷ではありふれたものなんです。それこそ、『ここまで破れちゃったんなら、買い換えよう』って簡単に言えちゃうくらい。でも、この世界に来たら、そんなこと言えなくなっちゃいました」
 熱くなる目頭。瞬きをして、涙を押しとどめる。
「あたしは、自宅に帰る途中で、いきなりこの世界に飛ばされたんです。身の回りのものをまとめる時間なんて、もちろんありませんでした。──運良く良い人に拾われて、服とか日用品とか、何から何まで揃えてもらって、不自由したことはありません。でも、本当にあたしのものだと言えるのは、この世界に来たときに持っていたものだけなんです。今となっては、それらのわずかな品だけが、あたしと故郷を繋ぐ唯一のもので。一つでも失えば、故郷との繋がりが切れてしまいそうな気がして……」

 怖いんです──という言葉は、声にならず口の中で消えた。

 ラテライト王子が、気遣わしげに言った。
「故郷に、帰りたいのですか……?」
「……帰りたいですけど、帰る方法がわからないんです」
 寂しさを呑み込み、あたしは微笑んだ。


 ──・──・──


 ラテライトは、考え込みながら妹たちの部屋に向かった。
 まず最初に妹の部屋を訪ねると、フェロー王女もカーリン王女も一緒にいた。監視として呼び出した女官長や教育係たちに囲まれて、居心地が悪そうだ。

 コンディータが、不満たらたらに話しかけてきた。
「ラト兄様、あのあと、あの女と話をしたの?」
 反省している者の態度ではない。失望を隠せず、ラテライトはため息をつきながら答えた。
「舞花様にお会いして、謝罪してきたよ」

 妹たちはぱっと表情を輝かす。

「舞花様は許してくださった?」
「たかだか服一枚であんなに騒ぎ立てるなんて、大げさなのよ」
「その通りですわ」
「だいたい、あんないかがわしいものを……」
「異世界から来たなんて言うくらいだから、どこか頭がおかしいのよ」

 身内以外が聞いてないからか、妹たちは舞花様の悪口を言い合い始める。

 ソルバイト陛下の婚約者は、異世界から来た女性──という触れ込みに、ラテライトも最初は半信半疑だった。ディオファーン王家の血族でない女性を国王の婚約者にするために、特別な女性であることを皆に印象付けようとしているだけではないかと。

 今はそんなことを考えた自分を恥じている。今もまだ、舞花様が異世界から来たことを信じない妹たちのことも。

 反省しないどころか、傷つけた相手をこき下ろす妹たちに我慢ならず、ラテライトはいつになく声を荒げた。

「おまえたちはひとを思いやることができないのか!? 想像してみなさい! ある日突然、たった一人で異国の地に放り出された気持ちを! 着の身着のままで他に持ち物がなく、それまでの知り合いも誰一人としていない。それまで暮らしていた国から完全に切り離され、一から人生をやり直さなくてはならなくなった人の気持ちを理解できるか!? ──おまえたちが引き裂いたあれは、故郷に帰りたくても帰れない舞花様にとって、数少ない心の拠り所だったそうだ。それをおまえたちのちょっとした出来心で台無しにされてしまった舞花様の気持ちがわかるか!?」

 ──帰りたいですけど……帰る方法がわからないんです。
 そう言ったときの、舞花様の微笑みが胸に痛い。

 ラテライトの胸をかきむしりたくなるような叫びに、妹たちは多少なりとも何か感じることがあったようだった。
 それでも自分たちに非があるのを認めたくないのか、コンディータは弱々しく反論した。
「何度も言っていますけど、あれを引き裂いたのはわたくしたちではありません。あの侍女が余計なことをしなければ、破れることなどなかったのです」

 あの侍女こそが舞花様なのだと教えたら、妹たちは仰天するに違いない。
 だが、誰にも言わないと舞花様に約束したし、知ったところで妹たちが反省するとは思えない。

 ラテライトは厳しく言い放った。
「それを言うのであれば、そもそもおまえたちが舞花様の部屋に行かなければよかったのだ。ソルバイト陛下は、後日ご婚約者を紹介するとおっしゃっていた。紹介いただかないうちに会いに行くなどという愚を犯さなければ、おまえたちのみならず国の立場まで悪化することはなかった。各国代表が一堂に集まるこの機会は、他国と交渉する絶好の機会だったというのに。──舞花様には、おまえたちを許さなくていいとお伝えしてきた。それで正解だったようだな。自分たちの何が悪かったのかわかるまで、部屋にこもって考えるといい」
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