鈴音さんのおと

追憶劇場

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鈴音さんの音

鈴音さんの音 2 地元の駄菓子屋カナさんの記憶

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カナが駄菓子屋を初めてから2年となる。
あまり大きくない店だが田舎なら十分な品揃えがあり、子供達やたまに立ち寄る大人の憩いの場となっていた。
夕方になると少ない小遣いをもった小学生や部活終わりで汗だくな中学生などいろいろな人が来る。
夜になり、客の年齢層が上がってくる。
部活の終わった高校生や社会人も来なくなった深夜、カナが店を閉めようとしたとき、聞き慣れない物音がした。
ちゃり  ちゃら
不審者の噂もなかったので特に考えもせず声をかけた。
中学生くらいだろうか。かなり痩せているように見える。
ゆっくりこちらに向かってくる。
カシャン  カシャッ
と不思議な音を響かせながら。
頭の中に染み入るように入ってくるその音はカナに言い知れぬ不安と高揚をもたらした。
「これ…食べる?」
腹が減っているようだったので夜食の一部を差し出した。
ゆっくりと食べ終えた少女は、こちらをみて微笑み、口を開けた。
そのまま空気を送り出したのだが、小さい喉奥から聞こえてきたのはチリチリと細かく鳴る鈴の音。
その音を聞いたカナは出所不明の幸福感と謎の焦燥感をザワザワと心に感じた。
そしてどう考えても鳴るはずがない音を、その時のカナには違和感を感じなかった。
名前などを聞いても口を動かし、困ったように首をかしげるのみでコミュニケーションらしいものは取れない。
 困り果てたカナは電話で友人に相談することにした。
「夜遅くにごめんね、ちょっと力貸してほしくて…」
「んぁ…いいよ…何?」
夜遅くにでも呼べるほど気心の知れた友人。学生の頃からの親友で、互いに苦手科目を教えあったり、カナにとって居なくてはならない人物だった。
そんな寝ぼけ眼(だろうな)の友人に経緯を説明する。
「…って言うことなんだけど」
電話口はしばらく沈黙した後にぼんやりした友人の声を吐き出した。
「うーん…寝ぼけてるのかな、私。それともカナがおかしくなって…ちょっと、怒らないでよ。うーん、言葉が通じないときは公用語よ。どの国でもある程度使ってるから簡単な単語くらいなら伝わるかも。」
「え~っと…公用語って…?」
「……そんな事だろうとおもった。」
神無州国カンナしゅうこく。納華国の東にある巨大な国。軍事力・技術力共に他の国を凌駕する。州語と呼ばれる神無州国の言葉は文字の体型が覚えやすく発音も容易なため、世界各国で使われている。
「わかった?」
「うん…多分大丈夫…かな?」
「返事を聞いて確信したわ。紙とペンを用意して…学生の頃を思い出すわ…」
カナが学生の時も幾度となく語学の勉強を手伝ってもらった。
性格の良い友人に感謝しつつ州語の質問を幾つか紙に書き、少女に渡した。
「どう?」
「…通じたみたい!」
ゆっくりとペンを動かす少女をみてカナが友人に言った。
数分後、少女から渡された紙には、不恰好な筆跡で何かが書かれていた。
「何て書いてる?」
「読めない…」
欠伸交じりの友人の声に返す。
カナの語学が低いのも原因の1つだろうが、筆跡も相まってどこの国の文字かすらわからない。
「見たことない異国語だ…」
「ちょっと写メ送ってみて。私わかるかも」
友人は翻訳関係の仕事についていたので、言葉の知識はある。
友人に写真を送る。
暫くして、友人が喋った。
「…これ…凄い。相当凄いよ…そのこ」
「それってどう言う…?」
「ユロウカ帝国で昔使われてた文字だよこれ…略式文字でもない…2・300年くらい前の文字だとおもう…」
ユロウカ帝国とは、納華国の近辺の国で、納華国とは同盟関係だが昔から悪い噂が絶えない国だった。
「2,300年前の帝国文字…?」
「うん。この文字書ける人なんて今居ないかと思ってた。…あっ、何て書いてあるか言ってなかったね…」
一息ついた友人がゆっくりと話し始める。
「ん…とね、単語が並べてある形。もしかしたら通じてなかったのかもね…質問に答えられてないところをみると。…[失敗]、[苦痛]、[作品]、…あとこれは名前かな…[鈴音]…だね。」
「鈴音…」
昼間買い物に来ていた子供の口からも同じ名前を聞いた。他の子や大人達は知らないようだったから何かの冗談だと思っていたが…
「っ…ああ…」
電話越の声に感じるただならぬ雰囲気にカナは息を飲む。
「どうしたの!?」
「…ごめん、ちょっとゾワッとして。書いてあること不吉だし…カナ?おーい、カナー返事し」
鈴音は首をかしげ、誰も居なくなった通りをふらふらとどこかへ向かっていった。
鈴の音がする。  
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