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第12章〜獣人編〜
好戦的な2人
しおりを挟む力が全てである獣人族。
『獣人化』は、そんな獣人族でも王族の極一部にしか保有者が現れる事はない貴重なスキルだ。
「ガルムンド王国は代々、『獣人化』のスキルを持つ王子達の中から、次代の王を決めるのよね。強い王になるには、『獣人化』は必要なスキルみたいだし。」
今のガルムンド王国の王には、4人の『獣人化』のスキル保有者の王子と王女がいる。
その中の王女は、王位継承外。
なので、第1王子、第4王子、第7王子の3人の中から次代の王が決まる事になるだろう。
「ディア様、王女も『獣人化』のスキル保有者なのであれば、王位を狙えるのではないですか?『獣人化』のスキルを持つ王女も、その資格がありますよね?」
コクヨウが首を傾げる。
もっともな質問だ。
「あぁ、それは女性の身体が『獣人化』に耐えられないと、使用が不可能なのよ。ほら、身体に負担がかかる『獣人化』のスキルを使用した時に、子を宿していたら危険でしょう?」
『獣人化』のスキルは、獣人族の本能を引き出し、自身の肉代強化する技だ。
その代償に、理性をなくす可能性がある危険なスキルだと言える。
「ルルーシェル達も言ってたけど、獣人族は自分達の子供を残す本能が強いんだもの。その母体を守る事を優先してしまうのも仕方ないわ。」
女性は、本能的に子供を宿す自分の身体の為に、『獣人化』のスキルの発動が抑えられている。
それが、女性が『獣人化』のスキルを発現させる確率が低い理由。
「まぁ、母体に負担のないぐらい『獣人化』のスキルを使用する身体が出来ていれば、もちろん発動は可能なんだけどね。」
例を挙げるならルルーシェルだ。
彼女は高レベルの冒険者となった為、もちろん『獣人化』のスキルを使用が出来る。
今のルルーシェルなら、上手く『獣人化』のスキルを身体に負担なく扱える事だろう。
「その事実を王家が知れば、女性である王女も王位の継承は可能になるんじゃない?だって、王女も『獣人化』のスキルを扱える身体にすれば良いんだもの。」
それだけで、王女でも『獣人化』のスキルを使用が出来る。
当然、王女でも王位の継承の権利を得るのだ。
「では、ルルーシェルも王位の継承に関わると?」
「もちろんよ、コクヨウ。ルルーシェルもガルムンド王国の王家の血筋を持つから、王位継承権があるもの。」
王の直系の子供が優先されるだろうけど、ルルーシェルの方が候補者達より強ければ話は変わる。
例え女性の王でも良いと言い出す輩は出る事だろう。
「3人の王子達の強さによるけど、ルルーシェルが武術大会で優勝した場合、厄介な事になりそう。」
溜息を吐く。
武術大会の出場を楽しみにしているルルーシェルに、今さら出るなとは言いにくい。
かと言って、わざと負けろなんてルルーシェルに言いたくないのだ。
「一番良いのは、王子の誰かが王位を継いでルルーシェルが正妃になる事なんだけど。」
・・うん、無理だ。
ルルーシェルが私の側から離れて行く未来なんて、絶対に考えられない。
断固拒否である。
「いざとなったら、ガルムンド王国を潰しましょう。」
ニュクスお母様の愛し子として、ガルムンド王国からルルーシェルへの要求を拒絶するのも良いか。
手段は多い方が良いものね。
「んー、武術大会の当日は、ルルーシェルの側から離れないようにしないと。」
「あら、護衛なら私達がするわよ?」
「任せて、私達がルルーシェルの側に悪意ある者は近付けさせないわ。」
神気が私の前に降り立つ。
闇の精霊王であるカティアと、光の精霊王であるライアの2人だ。
「カティア!?ライアも!?」
驚きの声を上げる。
コクヨウとディオンの2人も、私と同じように驚きの表情だった。
「ふふ、久しぶりね、ディアちゃん。」
「元気だった?」
カティアとライアが微笑を浮かべる。
「なんだか面白そうな話をしていたから、思わず来ちゃった。」
「私達も混ぜて?」
「えっ、2人とも、良いの?」
「えぇ、もちろん。」
「私達に任せて。」
心良く引き受けてくれる2人。
何とも心強い。
「闇の精霊王たる私なら、人の邪な悪意を見分けられるから安心して?」
「ユリーファの側に他の精霊王達がいるから、最近、私達は暇だったから丁度良いわね。」
「ディアちゃんの家族に手を出そうとする者を、精霊王たる私達が必ず捕まえるわ。」
「楽しみね、闇の。」
「ふふ、本当にね、光の。」
「久しぶりに下界で暴れるわよー!」
うきうきの2人。
「良かったですね、ディア様。」
「精霊王であるお2人の力を借りられるのなら、ルルーシェルの身も守られますし、ディア様の憂いも無くなりそうで私も安心しました。」
コクヨウとディオンの2人も嬉しそう。
あの、でもさ?
「暴れる事が確定、なんだ?」
苦笑い。
案外、精霊王って好戦的?
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