リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第3章〜恋愛編〜

バカで、愚かで、愛おしい

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眩しさに、顔を少し顰めた。


「・・・うん、」


もう、朝?
もぞもぞと柔らかなベッドの上で身体を動かす。


「・・・・?」


あれ?
何か暖かいものに包まれている?
薄っすら、目を開ける。


「おはようございます、ディア様。」
「っっ、」


ゆっくりと目を開いた先。
私を抱き込む、一緒に横になって微笑むディオンがいた。
思わず出そうになった悲鳴を飲み込み、変な声を上げなかった自分の事を褒めてあげたい。


「っっ、ディ、オン!?」
「よく眠れましたか?」
「う、うん。」


そっか、あのままディオンと一緒に寝たんだった。
うぅ、朝から見るディオンの満面の笑顔は、私の心臓に悪い気がする。
だって、その笑みが甘いんだもん。


「おや、顔が赤いですね。ディア様、もしや熱でもおありですか?」
「っっ、だ、大丈夫だよ。」
「ふふ、そうですか。」


分かってる。
絶対、ディオンは私の顔が赤い理由に気が付いてるに違いない。


「ディア様、キスしても?」
「っっ、う、ん。」
「あぁ、とても可愛らしい。照れてらっしゃるのですね。」


くすくすと、とろけるような表情で笑うディオンの吐息が私の頬にかかる。
唇に落ちるディオンのキスは、どこまでも甘く 優しかった。


「ーーー・・ディア様?」


何度もディオンとキスを繰り返していれば、ドアがノックされる。


「起きていらっしゃいますか?ディア様。」
「っっ、アディライト?あぁ、うん、もう、起きてるよ。」


返事を返せば、開けられるドア。


「おはようございます、ディア様。とても良い朝ですね。」


満面の笑みを浮かべたアディライトが、ディオンに寄り添う私に恭しく頭を下げた。
幸せな朝だと思う。
私を包み込むディオンに腕の中で、そう感じた。


「おはよう、アディライト。」
「これからディア様の朝のお支度をしてもよろしいでしょうか?」
「うん、お願い。」


頷けば、私から離れるディオン。


「リビングでお待ちしております、ディア様。」
「っっ、っっ、なっ、なっ、」


私の頬に口付けたディオンが、するりと寝室から出て行くのを真っ赤になって見送るしか無かった。
なんて早業なのか。
この私が反応する暇もないんだから。


「まぁ、まぁ、うふふふ、仲がよろしい事で喜ばしい事ですわ。」
「っっ、アディライトッ。」
「さぁ、ディア様。ディア様の身支度を整えてしまいましょう。」


テキパキと私が顔を洗う為のお湯が入った桶を用意して、ベッド脇にあるテーブルに置くアディライト。
あれ?
私とディオンのやり取りを、アディライトは気にしてない?


「・・・あの、アディライト、は、気にしないの?」
「何を、でしょうか?」
「・・・、その、ディオンとの、事、とか・・?」


だって、さ?
コクヨウの次は、ディオンともだよ?
2人共一線は超えなかったとは言え、あり得ないでしょう?


「まぁ、ふふ、ディア様。私の敬愛するディア様が1人の殿方だけに愛される存在だとでもお思いですか?」
「へ?」
「ディア様の側に侍る者は、全員、その足元に跪く事でしょう。ディア様からのご寵愛を得る為に。」
「大げさな。」


どこの偉い女王様よ。


「ふふ、直ぐに分かる事です。ディア様が至高の存在である、と。ディア様の愛情に触れた者は、全員身をもって知る事でしょう。その大きな狂愛を。」


呆れる私の長い髪を、にこやかに笑うアディライトがブラシで梳く。


「・・狂愛、か。まさに私にはぴったりの言葉。」
「愛に餓えた者は、それを心地よく感じるものです。さぁ、これで髪は整いましたよ、ディア様。顔を洗い、直ぐにお食事になさいますか?」
「・・その前、に、お願いがあるの。」
「何でしょうか?」
「ーーー・・コクヨウの事を呼んで欲しいの。」


伝えなきゃ。
コクヨウに、私の気持ちを。


「ディア様、かしこまりました。しばらくお待ち下さい。」


決意を胸に、頭を下げたアディライトが部屋から出て行くのを見送る。


『ふふ、強欲なお姉ちゃん。』


小さな頃の私が、心の中で小さく楽しそうに笑った。
しばらくしてノックされる私の寝室のドア。


「ディア様、コクヨウです。お呼びとお聞きしました。」


アディライトは直ぐにコクヨウの事を呼んでくれたらしく、私が部屋で待つ時間は1分とかからなかった。


「・・うん、入って。」


返事を返し、コクヨウの事を部屋の中へと招き入れる。
ベットに腰掛けたまま、私は開かれるドアをじっと見つめた。


「失礼します、ディア様。アディライトから僕にご用がおありだとお聞きしましたが何でしょう?」
「少し話があるの、コクヨウ。近くに来てくれる?」
「・・・はい、ディア様。」


近寄って来たコクヨウは、何を思ったのか、そのまま私の足元に膝をつく。


「っっ、コクヨウ!?」
「ディア様、昨夜は出過ぎた事をいたしました。どうか、お許し下さい。」
「・・・バカ。」


頭を下げるコクヨウに、涙が滲む。
バカだよ、本当。


「っっ、全部、私、の、為でしょう?」


こんな最低な私の事を、コクヨウは好きになるなんて。
きっと、こんなにも優しいコクヨウなら他の人との恋愛を選ぶ事も出来たはずなんだ。
なのに、私の事を選んでしまったコクヨウ。
可哀想な子。


「貴方の幸福こそ、何よりも僕の幸せです。何も後悔はありません。」
「・・・それで私がコクヨウ以外の他の人を愛してしまっても良いの?コクヨウは幸せ?」
「っっ、幸せ、です。例え他の人をディア様が愛されても、僕の事もお情けで構っていただければーーー」
「嘘つき。」


俯くコクヨウの目の前に膝をつき、頬に手を添え顔を上げさせる。
嘘つきだよ、コクヨウは。


「なら、コクヨウは何で泣いているの?」


バカで、愚かで。
狂おしいほどに愛おしい、私のコクヨウ。
もう、逃がしてあげないよ?

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