あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
46 / 62

46話

しおりを挟む
 おい起きろ!

 夢の中で誰かが私を呼んでいる気がする。

 もう!うるさいな!

 久しぶりにお母様の胸の中で眠っているのよ!邪魔しないで!
 
 う、ううん⁈

 どこかで聞いたことのある声……

 もう忘れてしまいたいのに……絶対に彼に好きだなんて言えない……好きになってもらえない……だから諦めた初恋なのに……

 やっとオリソン国に来て自分の中で踏ん切りがついて前に進もうと決めたのに。

 誰にも迷惑かけずにこれからは一人で頑張るつもりなのに………今はお祖母様に甘えてしまっているけど、落ち着いたら一人で暮らすつもりでいる。

 でも今だけはお母様が育ったこの屋敷でお母様の思い出に包まれながら眠りたいのに………

「ビアンカ!」

「おい、起きろ!」

「いつまで寝てるんだ?」

「…………いったぁ!!」

 思いっきり頬をつねられた。

「寝たふりするからだろう?」

「……………な、なんでここに居るの?」

 目を開けたらそこにいたのは……

「殿下っ?えっ?ええっ~??」

「遅いっ!いつまで寝ているんだ?」

「いやいや、花の乙女の部屋に勝手に入ってきて……私の寝顔をみ、み、見ましたぁ?」

 顔が赤くなるのがわかる。よだれが出ていなかったかしら?
 思わず口を拭いた。

 い、いびきなんて掻いていないわよね?

「ああ、口開けてアホのような顔をして寝てたぞ」

「アホ⁈そ…それは……かなり変な顔だった?」

「いや、子供の頃と変わらない、面白い顔だった……」

 殿下の顔が昔を懐かしむようにフッと笑った。

「子供の頃って………もう私は16歳です!それに……(悔しいけど、認めたくないけど)人妻なんです」

「あはははっ!人妻って、お前まだダイガットと結婚していたいのか?」

「だって離縁する前に逃げたから……」

「ダイガットの痣は25個出来ていて、あいつは今頃寝込んでいるはずだ」

「痣?25個?」

 よくわからないのだけど?

「お前には言ってなかったな。お前があいつに離縁したいと言ってきた数が25回、そしてその度に腕に痣ができるんだ。
 そして25回出来たら強制的に別れさせられるとダイガットは聞かされているんだが、本当は浮気した数なんだ。あいつはフランソアと25回も浮気をしていたんだ。
 まあ、簡単に言えば性交渉?ほんと、ビアンカのことが初恋だとか好きだとか俺には言ってたけど、目の前にいる女に簡単に手を出して、今頃ベッドの上で苦しみもがいているはずだ」

 性交渉って……

 思わず開いた口が塞がらなくて固まってしまった。

「わ、私とダイガットは、そんなふしだらな関係はありませんでしたから!」

 顔が真っ赤になって思わず叫んだ。

「わかってる。フランソアがダイガットを誘惑するように仕向けたのは俺だ。好きならビアンカから勝ち取れと裏で煽ってやったんだ」

「………煽る?裏で?」

 もう話についていけない。

 しっかり睡眠はとったけど、まだ頭は動いていないみたい。


「お前が俺に助けを求めないのがいけないんだ」

「意味がわからないんですけど?」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

この恋は幻だから

豆狸
恋愛
婚約を解消された侯爵令嬢の元へ、魅了から解放された王太子が訪れる。

処理中です...