【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

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とても優しい騎士さん達

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アッシュと離れて2ヶ月が過ぎた。

仕事にも慣れて団員のみんなの顔と名前もようやく覚えてきて仕事も楽しくなってきた。

でも気がつけば団員のみんなに誘われるようになった。

「ユウナ、明日は仕事休みだろう?俺も休みなんだ、街を案内してやるよ」

「これ、街で買ってきたケーキなんだ。良かったら食べてくれ」

「なあ、俺と付き合わないか?」

(あー、鬱陶しい。わたしはまだ離婚していないの!……たぶん…お兄ちゃんから連絡がないから)

でも離婚届を置いて家を出たなんて態々説明したくない。
ここの人達、いい人達なんだけどなんだか獣のようなギラギラした目がちょっと怖い。

ロリーは幼馴染だし、線の細い可愛い顔をしているので騎士なんだけど怖いと思わない。

でも先輩騎士さん達は、ごつい人たちが多くて近くに来ると圧巻で思わず縮こまってしまう。

「ありがとうございます。でもお気持ちだけで十分です」
とりあえずこの言葉でなんとか今まで凌いできたのに、今日の騎士さんはしつこい。

「ユウナ、いいだろう?絶対に後悔させない。幸せにする、付き合ってくれ」

「ごめんなさい、お付き合いはできません」

「ロリーと付き合っているのか?」

「ち、違います……ロリーは幼馴染です」

「だったらいいだろう?俺と付き合おう」

「いやいや、無理です」

「なんで?」

なんでって、好きでもない人と付き合うなんてありえないし、わたしまだ人妻なんですけど?

もういっそ話そうかと思って
「あ、あの、ですね、わたし……」

「こら、トニー、ユウナが困ってるだろう!」
団長さんがわたしを助けるために声をかけてくれた。

「うわぁ、団長。俺はただ、その、付き合って欲しくて……」

「断られたらさっさと諦めろ!往生際が悪いぞ」

「…チッ……失礼します」

「団長、助かりました」

わたしはホッとして団長を見上げると、
「うん、まぁ、あいつらは気のいい奴らなんだ。嫌いにならないでやってくれ」
と、団員の人達をフォローしていた。

あー、体は大きいけど心も広いんだろうな、こんな人に愛される女性は幸せなんだろうなとつい思ってしまった。


◇ ◇ ◇

「ユウナ、君の兄さんから手紙が届いた」
ロリーがわたしに手紙を渡したのは、アッシュの元を去って3か月が過ぎた頃だった。

「あ、ありがとう」
ロリーにお礼を言って手紙を受け取った。

アッシュとの離婚が決まったのだろう。

ズキンと心が痛む。

わたしは手紙を握りしめた。

長かったような短かったような3か月だった。

少しずつ慣れてきて、騎士さん達ともなんとか会話することもできるようになっていた。

団長さんとは特に仲良くなって、お休みの日に何度か一緒に食事もした。

あ、これ、デートでも浮気でもないから。

だって仕事でレシピが思いつかなくて煮詰まっている時に、団長さんが外食してよその味を知ればまた新しい料理も浮かぶのではと提案してくれたのだ。

わたしは仕事が終わり部屋に戻ると、深呼吸をしてからお兄ちゃんの手紙を開けた。

手紙の中は……

『アッシュは離婚届を俺の前で破り捨てた。それからすぐにユウナがどこへ行ったかしつこく聞いてきた。
知らないと言うと、お前を探し回る日々が始まった。仕事は辞めないで休みの日はお前の知り合いを訪ねて回っているようだ』

なんだこの手紙は……

3か月も待ってこの手紙の内容って……

アッシュはなんでわたしを探しているのかしら?

あんなに女性の香水を身に纏い、朝帰りをして、服には口紅の跡……さらに首筋にはキスマークを付けている日もあった。

わたしはだから決心した。

もうアッシュを待たない。

毎日アッシュを待つ生活に疲れた。

彼がわたし以外の女性とキスをしたり抱きしめている姿を想像するだけで苦しい。
問い詰めて、他に好きな子が出来たと言われたくなかった。
真実を知ってしまえば、
「浮気ではないかもしれない」とか
「本当はまだわたしのことを愛しているかも」
なんて思っていたいのにそれすら失くなってしまうもの。

「お兄ちゃんは、アッシュの様子を見ていたから手紙を書くのが遅かったのかしら」

わたしは手紙を引き出しにしまうと、庭に出た。

薄暗くなった外の風は涼しく気持ちがいい。
家を出た頃は真夏だったのにいつの間にか秋になっていた。

ベンチに座り綺麗な花をただじっと見つめていた。

これからどうしよう……

やはり一度アッシュと話し合って離婚するしかないのか……

お兄ちゃんには何枚か離婚届の紙を渡していた。

一応予備に。



「…………ユウナ?」

わたしを呼ぶ声に振り向くと、団長さんがわたしを心配そうに見ていた。

「……あ……すみません、どうしました?」

「泣いているのかと思ったんだ」
団長さんが優しくわたしに話しかけた。

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