【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

文字の大きさ
23 / 35

美味しいパンが焼けた

しおりを挟む
沢山捏ねたパン生地。

朝早く起きていろんなパンを焼いた。

一人で黙々と作るこの作業がとても好きだ。

焼き上がる頃に厨房にみんなが朝食を作りにやって来た。

「おはよう!ユウナ!」
「すごい、いい匂い!たくさんのパンが焼けたのね」
「ねえ、せっかくだからサンドイッチを作ろうよ」

みんなパンの美味しそうな匂いにつられて、朝食のメニューを変えてパンに合わせて作ることにした。

わたしはチキンをソテーして、ソースを作り、サラダやベーコン、ウインナーなど好きな具材を挟んで食べられるようにした。

騎士さん達がゾロゾロと来て

「うわ、いい匂い、美味そうだ」
と言いながら頬張って食べてくれるのをニヤニヤしながら厨房から見て満足していた。

パンを捏ねてストレスも発散できたし今日はいい一日を過ごせそう。


◇ ◇ ◇


そして夜は、一仕事終えて久しぶりに庭に出てベンチに座りボッーとしていると、団長さんが現れた。

「ユウナ久しぶりだな」

「…………そうですね」
こんな時は笑顔で挨拶するべきなのか……お互い気不味い空気の中、だからと言ってさっさと帰るわけにもいかず黙って座っていた。

「………あれからリリーさんのことは大丈夫だろうか?」

「はい、もうわたしの前に現れることはないと思います。団長さんにもご迷惑をおかけしてすみませんでした」

「あれは俺が悪かった。リリーさんの話を間に受けて会ってしまったんだからな、その後もリリーさんとユウナを二人だけで会わせてしまったこと後悔してるんだ」

「わたしが決着をつけたかったんです、ついて来ないで欲しいとお願いしたのもわたしです。やっとこれでアッシュとの繋がりも完全に切れてスッキリしました」

「……そうか」

「団長さんも好きな人とやっと思いが通じたみたいですね、良かったですね」

「??なんのことだ?」

団長さんは驚いた顔をしてわたしを見た。

「昨日、ロリーと入ったお店で団長さんをお見かけしたんです」
ーー綺麗な女性と。
この一言は言わなかった。

「…あ、あれは……元妻だ」

「奥さん?」

「そうだ、変なところを見られてしまったんだな」

「そうですか、奥様と寄りを戻すんですね、良かったですね」

「違う!相談があると言われて押しかけて来たんだ!」

「あ、そうだったんですか」

ーーまあ、わたしには関係のないことだし、そろそろお暇しよう。

「では団長さん、お先に帰りますね」

わたしが立って帰ろうとしたら

「ちょっと待ってくれ」
わたしの手首をガッツリと掴まれた。

「痛い」
思わず声が出てしまった。

「すまない、痛かったか?」

「大丈夫です」
ーー本当はかなり強い力で掴まれたのでかなり痛かったけど、笑って誤魔化した。

「ユウナ、最近避けられているのは分かっている。誤解されているのもわかっているんだ」

「誤解?」

「そうだ、俺に好きな人がいるのは確かだ。しかしそれは元妻ではない。………ユウナ君なんだ!」

「わ、わたしですか?」
思ってもみなかった団長さんの言葉にわたしは驚き、どう返事をするべきかわからなかった!

「ユウナ!遅れてごめん!」

わたしの肩をポンっと叩きロリーが笑顔でやって来た。
「あ、う、うん、遅かったねロリー、サアイキマショウ」

わたしとロリーは団長さんに頭を下げて二人で急いで団長さんから離れた。

「ロリー、助かった!」

「なんか二人の空気がおかしかったから声をかけたんだ」

「そっか、そんなに変だった?」

「いや、ユウナは昨日の団長と女の人の姿を見てからずっとおかしいけどね。心配になってもしかして庭にいるかなって思って探しにきてたんだ」

「そっか、そっか、おかしいのか……」

わたしは心ここに在らずという感じで、返事をしていた。

「ユウナ、何かあった?」

「うーん、そうだね、何かあったかもしれない」

ロリーに言うべきか言わないでおくべきか……

て言うか団長さんに好きだと言われたこと自体どうするべきか……

よくわからない自分がいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!

ぱんだ
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」 突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。 アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。 アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。 二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。

この恋に終止符(ピリオド)を

キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。 好きだからサヨナラだ。 彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。 だけど……そろそろ潮時かな。 彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、 わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。 重度の誤字脱字病患者の書くお話です。 誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 そして作者はモトサヤハピエン主義です。 そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。 小説家になろうさんでも投稿します。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

婚約者が番を見つけました

梨花
恋愛
 婚約者とのピクニックに出かけた主人公。でも、そこで婚約者が番を見つけて…………  2019年07月24日恋愛で38位になりました(*´▽`*)

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

処理中です...