【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

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番外編  リリー編

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どうして?
わたしは平民だけど、子供の頃から可愛いって周りに言われて、にっこりと微笑めばみんなが優しくしてくれた。
なのに大人になるとみんなわたし……じゃない人と結婚していく。

お金を持ってる人とせっかく仲良くなっても、いつの間にか他の女と結婚してしまったり、ちょっとかっこいいと思って仲良くなったら、いつの間にか連絡が取れなくなってるの。
わたしの仕事がみんな嫌なのかしら?
でもわたしはいろんな男に愛されたい。

わたしって可哀想な少女なのよ!
え?22歳は少女じゃない?

ううん、心は永遠の少女!

アッシュと知り合って儚げに見せて弱々しい姿で迫ってみた。
大好きな仕事だけど、アッシュの前では家族のために働いていると涙を流してみる。

わたしを抱きしめてくれる優しい彼。
なのにどんなに迫ってもキスすらしてくれない。
わたしは抱いて欲しいのに!

愛する奥さんがいる?

別にいいじゃない!
奥さんがいたってわたしは別に構わないわ。
わたしを抱けばわたしの方が何万倍もいいってわかるから。
なのに抱いてくれない。
無理矢理そばに居て、眠れないと目を潤ませてお願いをしたら添い寝をしてくれた。

そっと彼のアソコに触れたら、硬くなっていない。
こんな魅力的なわたしの体に勃たないなんて!

わたしのプライドを傷つけて許せない!

アッシュにわざとに香水の匂いをたっぷりとつけて家に帰す。
『あなたの旦那さんには私がいるのよ、あなたなんかに渡さない!』
わたしから奥さんへの無言のメッセージを送る。

そして奥さんが出て行った。

勝った!

そう思ったのに、アッシュはもうここには来ないと言って去って行った。

悔しい、なんでわたしに靡かないの?わたしの体に勃たない男がいるなんて!

アッシュの居場所を探していたら、娼館のお客としてたまに来るポールが居場所を教えてくれた。

そしてアッシュに会いに行ったのに追い返されるし、むかついたから、アッシュの元嫁のユウナに色々言ってやったら、何故か弟達が現れてわたしを強制的に連れ帰った。

もっともっと、あの忌々しいユウナにわたしとアッシュの愛し合った日々を教えてやりたかったのに!

そしてあの団長をわたしの虜にして、ユウナの泣いた顔を見てやりたかった。
わたしに靡かなかったアッシュ、アッシュが愛したユウナ、むかつく!
わたしの方がユウナなんかより色っぽくて可愛くて、美しくてモテるのに!

なによ、すっぴんでオシャレもしていない普通の女のくせに!
まあ、確かに顔立ちは綺麗だけど、わたしには負けてる。
体だってわたしの方が魅力的。

性格だって男に甘えるのも上手だし、わたしの潤んだ瞳、泣き顔で男はすぐに落ちる!

あー、もう、むかつく。

お母さんが無理矢理わたしを修道院へ連れて行った。

嫌だ、こんな女しかいない場所で!
男がいない世界なんてわたしが暮らす場所じゃない!
男にチヤホヤされて生きるのがわたしの生き甲斐なの。

美味しくない食事。
質素で狭い部屋に数人で暮らす。
なんでわたしが畑仕事なんかしないといけないの!
わたしが料理をする?
いやよ!そんな面倒なこと。

化粧が出来ない?
綺麗な服もダメ?可愛い格好も出来ない。

とにかく男がいない。

なんで、なんでこんな場所に!

ここはわたしにとって地獄の場所。

わたしはみんなが寝静まったある日、脱出することにした。

もう限界だった。
お金なんてないけど、わたしにはこの体がある。

塀を乗り越えて、わたしは暗闇の中を歩いた。

半年の間に大体の地理は頭に入れた。
この道をひたすら歩けば町へ行ける。

そこで仕事を探そう。
ううん、まずは男。
適当に男を見つけてとりあえず転がり込んで男に貢がせよう。

ーーあー、歩くのも疲れた。

わたしは途中休み休み、なんとか町にたどり着いた。

まだ早い時間なのか、人もいなくて静かだった。

ーーお腹が空いた……喉も乾いた……

男はいないかしら?
わたしを見れば男はみんな寄ってくる

わたしは疲れてしばらく座り込んでいた。

いつの間にか眠り込んでいたみたい。


聞こえてきた子供の声……

「おかあさん、あそこに人が倒れてるよ」

「見ないの!ほら、あっちに行くわよ」

ぼやっとした頭の中に失礼な言葉がまた入ってきた。

「まぁ、どこからか逃げ出したのかしら?汚らしいわね、自警団に通報しないと」

「あのおばちゃん、なんか臭いよ、変な匂いがここまでくる」

だんだん頭が冴えてきて、わたしは失礼極まりないことを言っている人達に向かって叫んだ。

「あ、あんた達ね!美しいわたしに向かってなんてこと言うのよ!謝りなさい」

「……………」

みんな何も言わないでわたしを見ている。

わたしの美しさに度肝を抜かれたのかしら?
見惚れてる?

いいわよ、いくらでもわたしを見て!
褒めてちょうだい!

わたしは微笑んだ。

「おかあさん、あのおばちゃんニヤッとわらって気持ち悪いよ、ねえ、こわい」

ーーはっ?なに?
ここにそんな気持ち悪いおばちゃんがいるの?

わたしは周りをキョロキョロ見回した。

「そんな人いないわよ、あんた頭おかしいんじゃない?」
わたしは頭のおかしな子供にきちんと教えてあげた。

「おかあさん、きたないこわいおばちゃんがぼくにひどいこと言ってる」

「失礼な事言わないで、うちの息子に向かって。あなた、自分のこと言われているってわからないの?すごく臭いしその汚らしい格好は何?悪いことでもしてどこからか逃げてきたの?」

「はあ?この美しいわたしに向かって臭い?汚い?あんた達親子頭おかしいんじゃないの?」

わたしは親子に向かってきちんと、教えてあげた。

「おい!そこの汚い女。通報があった、今から詰所に来てもらう」

「うわっ、くっさい。おい、触るのは無理だ」

失礼な男達はわたしを棒で突いて、「立て!」と言って突きながら歩かせようとした。

「失礼ね、あなた達頭おかしいの?い、行くわよ、歩くから、突かないで!い、痛い、やめて」

何度も突くので痛くて仕方なく言われるがままに歩いて詰所に行った。

部屋の中に入ろうとしたら、
「うわっ、部屋の中が臭くなる、最初から牢に入れよう」
そう言ってわたしは牢に入れられた。

「なんにも悪いことをしていないのにどうしてこんなところに入れられなきゃいけないのよ!!!!」

わたしは大きな声で叫んだ。

「うるさい!お前、修道院から逃げ出した女だろう?修道院から通報があった。何も悪いことをしていない?逃げる時に修道院で働いている女性に怪我をさせただろう?」

「え?あ、あれは違うわ、わたしが塀を乗り越えようとしたら止めるから、ちょっと蹴っただけよ」

「蹴られた女性は大怪我をしたんだ」

「大怪我?どうして?蹴ったくらいで大袈裟じゃない!」

「打ち所が悪かったんだ」

「わたしは犯罪者?」

「そうだ、今から取り調べがある。それよりもその臭い匂いをなんとかしないと……体を拭いて囚人服に着替えてもらおう」

冷たい濡れた布で体を拭くと、確かに真っ黒になっていた。
暗闇の中を歩いた時に、牛か馬の糞を何度か踏んだ気はする。転けた時に糞の上で転んだかもしれない……

自分が臭いなんて思っていなかった。
だって田舎臭い町だから、臭いのは町全体だと思ったんだもの。
美しいわたしが臭いなんてありえないもの。

しぶしぶ囚人服に着替えると

「さっきよりはマシになったな」

と言われたけど、誰もわたしを美しいと誉めてくれない。

取調室に入ると、窓があった。

さっきの牢屋には窓がなかったし薄暗かったから気が付かなかった。
窓に映る老けてボロボロの髪に疲れて落ち窪んだ目、こけた頬、
ーーこの窓に映る醜い女は…………

「あーーーー!!!い、いやあ!!!!」

わたしだった。


そしてわたしは犯罪者として逃げることが出来ない刑務所に入れられた。
刑務所から出られた時には美しかったわたしはいなかった。

そう、ただのおばさんになっていた。

弟達はわたしを受け入れてくれなかった。
娼館すら「客を取るのは無理だ」と言われて雇ってもらえなかった。
仕方なくレストランの清掃の仕事をしながら古くて狭い家で暮らしている。

あのユウナに関わったせいでわたしの幸せな生活は全てなくなった。
いつか復讐してやる。

そう思いながらわたしは今を生き続ける。






◆ ◆ ◆


14話目

「君の弟達からお姉ちゃんが泣いているから助けてあげてと頼まれて断れなかったんだ」

こちらの言葉は削除させてもらいました。

話し的におかしい、と気づきました。
感想で教えていただき感謝です。

こんな作者ですが、皆様いつも読んでいただきありがとうございます。









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