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33話
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お茶会から数週間が経ったが、今のところ平和に過ごしている……とは、わたし自身はいえない。
毎日わたしの部屋に訪れるお父様と殿下。
それも陛下もご一緒に来られるので無碍に出来ない。
陛下がそれをわかっていて敢えて毎回ついて来ている。
『お忙しいのに態々ついて来なくてもよろしいのでは?』と伺ったのだが、『エリーゼに会いたいからね』とにっこり笑われては、これ以上何も言えない。
そして今日もわたしの部屋に4人でお茶をする姿が……。
「お父様、わたしはドレスは必要最低限あればそれ以上は結構です。もう届けるのはやめてください」
「だったら身につけるものに今度からはしよう」
お父様はがっかりしながらも次からはブローチがいいか、ネックレスにしようか、髪飾りはどうだろうと色々言ってくる。
「わたしにはまだ必要ありません」
キッパリと言い切って、お断りした。
しゅんとなるお父様を横目に次は殿下へ話しかけた。
「殿下、わたしには、今更勉強は必要ありません。もし勉強が必要なら大学で習う授業を受けたいです」
「そうだよね。君は16歳にして高等部の勉強は全て終わらせていたんだもんね」
「え?エリーゼそうだったのか?」
お父様はわたしを見て驚いていた。
「はい。前回の時は王子妃教育も皇后になるための教育も全て終了していました。高等部も中等部の時に卒業しました」
わたしの言葉にさらに驚いたお父様にキツい一言を。
「わたしに無関心だったことがよくお分かりでしょう?」
わたしの冷たい目線に青い顔をしているお父様。
「エリーゼ、あまり自分の親をいじめるものではないぞ」
「陛下、お言葉を返すようですが、いじめているのではなく真実をただ伝えたまでです」
「すまない、エリーゼ。わたしは出直して来るよ」
そういうと、お父様は帰って行った。
後ろ姿が少し可哀想に思えたのは毎日しつこく会いにきて、わたしも少しは情が湧いているのかもしれない。
「エリーゼ、君の勉強だが、僕が今大学課程の勉強を家庭教師に頼んで習っているんだ。
君が嫌でなければ一緒に習わないかい?」
わたしは少し考えてから
「よろしくお願いします」
と答えた。10歳の体だが中身は16歳を過ぎて20年生きている。
流石に習うならもっと専門的な方がいい。
「殿下は今何を習われているのでしょうか?」
「僕は地質学と外国語、それから経済学かな」
「全て国王になるためには必要なものばかりですね。ではわたしは経済学と外国語を習いたいと思います。お願いしてもよろしいですか?」
「もちろんだ、明日からでも大丈夫だよ。今居る東宮の僕の部屋の隣に勉強するための書庫があるんだ。侍女に案内させるからね。明日は外国語だから、午前中に声をかけるよ」
「わかりました。よろしくお願いします」
「エリーゼ、君は経済学と外国語を習ってどうしたいんだ?」
陛下からの問いにわたしは
「孤児院で過ごしていて思ったのです。
わたし達子どもは大人達の施しだけで生きてきました。でももし、学があれば自分達の力で少しでもお金を稼ぐことが出来るのではないかと思ったんです。
今、孤児院では洋服や小物を作っています。それを売ったお金を元に畑を耕して、敷地で野菜などを作り自分達の食べる分はもちろん、残りは売ってお金にしています。
新しい服も買えます。ご飯も毎日食べる事が出来ます。
そしてただ施されて生かされるのではなくて、自分たちで生きていく事ができます。
そしてもっと勉強してわたしはお金を稼ぎます。
外国語を話せればもっと広い世界に目を向けて、子ども達にももっと学ばせる事が出来るかもしれません。平民だから勉強が出来ないのではなくて平民だから勉強する事ができなかったんです。
わたしはみんなにもっとチャンスを与えてあげたいんです」
「ほお、壮大な夢だね」
「そうですか?この3年半でみんなお金を稼ぐ大切さも勉強をする楽しさも知りました。
わたし達子どもは、まだまだ成長できます」
院長先生が笑いながら入ってきた。
「声をかけようと思ったらエリーゼの話が面白くて、つい聞き入ってしまったわ。
陛下、エリーゼってこの考えで、うちの孤児院を変えて行ったのよ。
私たち大人は子供の世話だけで手一杯でした。でもこの子は自分達でそれを切り開くヒントをみんなに与えて、みんなはそこから頑張って努力しました。
生きる事が精一杯だったのに、生きる目的や楽しさを知った子ども達は目が生き生きしてとても楽しそうなんです」
「子ども達も生きがいが必要なんだな」
「はい、もちろん寄付を頂くことは大切なことです。でも自分達のパンのお金は自分達で稼いだり、野菜を作って食べたりすることは、孤児院を出た時に必ず役に立つと思っています。他人に恵んで貰うのではなくて自分で稼いで暮らす事は、自立した時の生きていく自信になります」
「うん、そうだな」
「エリーゼは小さいのに偉いぞ」
「陛下、それは態とでしょうか?わたしの中身は20歳です」
「すまんすまん、つい見た目が可愛いからな」
わたしは少し不機嫌になったが、先生達は笑っていた。
毎日わたしの部屋に訪れるお父様と殿下。
それも陛下もご一緒に来られるので無碍に出来ない。
陛下がそれをわかっていて敢えて毎回ついて来ている。
『お忙しいのに態々ついて来なくてもよろしいのでは?』と伺ったのだが、『エリーゼに会いたいからね』とにっこり笑われては、これ以上何も言えない。
そして今日もわたしの部屋に4人でお茶をする姿が……。
「お父様、わたしはドレスは必要最低限あればそれ以上は結構です。もう届けるのはやめてください」
「だったら身につけるものに今度からはしよう」
お父様はがっかりしながらも次からはブローチがいいか、ネックレスにしようか、髪飾りはどうだろうと色々言ってくる。
「わたしにはまだ必要ありません」
キッパリと言い切って、お断りした。
しゅんとなるお父様を横目に次は殿下へ話しかけた。
「殿下、わたしには、今更勉強は必要ありません。もし勉強が必要なら大学で習う授業を受けたいです」
「そうだよね。君は16歳にして高等部の勉強は全て終わらせていたんだもんね」
「え?エリーゼそうだったのか?」
お父様はわたしを見て驚いていた。
「はい。前回の時は王子妃教育も皇后になるための教育も全て終了していました。高等部も中等部の時に卒業しました」
わたしの言葉にさらに驚いたお父様にキツい一言を。
「わたしに無関心だったことがよくお分かりでしょう?」
わたしの冷たい目線に青い顔をしているお父様。
「エリーゼ、あまり自分の親をいじめるものではないぞ」
「陛下、お言葉を返すようですが、いじめているのではなく真実をただ伝えたまでです」
「すまない、エリーゼ。わたしは出直して来るよ」
そういうと、お父様は帰って行った。
後ろ姿が少し可哀想に思えたのは毎日しつこく会いにきて、わたしも少しは情が湧いているのかもしれない。
「エリーゼ、君の勉強だが、僕が今大学課程の勉強を家庭教師に頼んで習っているんだ。
君が嫌でなければ一緒に習わないかい?」
わたしは少し考えてから
「よろしくお願いします」
と答えた。10歳の体だが中身は16歳を過ぎて20年生きている。
流石に習うならもっと専門的な方がいい。
「殿下は今何を習われているのでしょうか?」
「僕は地質学と外国語、それから経済学かな」
「全て国王になるためには必要なものばかりですね。ではわたしは経済学と外国語を習いたいと思います。お願いしてもよろしいですか?」
「もちろんだ、明日からでも大丈夫だよ。今居る東宮の僕の部屋の隣に勉強するための書庫があるんだ。侍女に案内させるからね。明日は外国語だから、午前中に声をかけるよ」
「わかりました。よろしくお願いします」
「エリーゼ、君は経済学と外国語を習ってどうしたいんだ?」
陛下からの問いにわたしは
「孤児院で過ごしていて思ったのです。
わたし達子どもは大人達の施しだけで生きてきました。でももし、学があれば自分達の力で少しでもお金を稼ぐことが出来るのではないかと思ったんです。
今、孤児院では洋服や小物を作っています。それを売ったお金を元に畑を耕して、敷地で野菜などを作り自分達の食べる分はもちろん、残りは売ってお金にしています。
新しい服も買えます。ご飯も毎日食べる事が出来ます。
そしてただ施されて生かされるのではなくて、自分たちで生きていく事ができます。
そしてもっと勉強してわたしはお金を稼ぎます。
外国語を話せればもっと広い世界に目を向けて、子ども達にももっと学ばせる事が出来るかもしれません。平民だから勉強が出来ないのではなくて平民だから勉強する事ができなかったんです。
わたしはみんなにもっとチャンスを与えてあげたいんです」
「ほお、壮大な夢だね」
「そうですか?この3年半でみんなお金を稼ぐ大切さも勉強をする楽しさも知りました。
わたし達子どもは、まだまだ成長できます」
院長先生が笑いながら入ってきた。
「声をかけようと思ったらエリーゼの話が面白くて、つい聞き入ってしまったわ。
陛下、エリーゼってこの考えで、うちの孤児院を変えて行ったのよ。
私たち大人は子供の世話だけで手一杯でした。でもこの子は自分達でそれを切り開くヒントをみんなに与えて、みんなはそこから頑張って努力しました。
生きる事が精一杯だったのに、生きる目的や楽しさを知った子ども達は目が生き生きしてとても楽しそうなんです」
「子ども達も生きがいが必要なんだな」
「はい、もちろん寄付を頂くことは大切なことです。でも自分達のパンのお金は自分達で稼いだり、野菜を作って食べたりすることは、孤児院を出た時に必ず役に立つと思っています。他人に恵んで貰うのではなくて自分で稼いで暮らす事は、自立した時の生きていく自信になります」
「うん、そうだな」
「エリーゼは小さいのに偉いぞ」
「陛下、それは態とでしょうか?わたしの中身は20歳です」
「すまんすまん、つい見た目が可愛いからな」
わたしは少し不機嫌になったが、先生達は笑っていた。
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