36 / 110
34話
しおりを挟む
殿下と一緒の勉強が始まった。
流石に王子様。わたしなんかと違って理解力も記憶力も凄くて、わたしは追いつくのに必死だった。
せっかく王宮にいるのだから今のうちに吸収できることはなんでもしておこうと欲張っていた。
でもわたしは無知だった。
東宮はクロード殿下の宮で、わたしと院長先生は一応客として来ている。
侍女や侍従の人達は、誰もがわたしに温かい目でみているわけではなかった。
騎士さん達はわたしに、何かあったらいけないからと部屋から出る時は必ず護衛をしてくれる。
わたしの世話をしてくれる侍女のミーナもいつも優しくてお姉さんみたいな人だ。
部屋で過ごしている間は、いつも同じ人達がそばに居てくれたので気づかなかったが、廊下を歩いていると冷たい視線や好奇の目で見られていることに気づく。
聞こえないように話しているつもりなのか、態とに聞こえるように話しているのか……
「ほらあの子よ。王子様のお客様としてお泊まりになられているらしいの」
「公爵令嬢なのに訳あって孤児院にいたらしいわ」
「何があったのかしら?とても性格が悪くて捨てられたとか?」
「見て、いつも質素なワンピースを着ているらしいのよ。外に出る時はドレスを着ているみたいだけど、なんだか安っぽい服よね」
この言葉にはわたしも一言、言いたかった。
安っぽい?これは一点物で、光の当たり方で色の発色が変わる珍しいシルク布で作られている。
「お前らの目は節穴か?」と言ってやりたかったが、わたしは今は公爵令嬢。孤児院の子どもではない。
抑えて抑えて。
一人で心を落ち着かせて、噂をしている侍女や侍従に態とに笑顔で挨拶して、微笑んだ。
「ごきげんよう」
(何か言いたい事があるならわたしの前で言ったら?)
と思いつつみんなの前を堂々と歩いた。
そして、今日もまた彼女は現れた。
「あら?まだ王子様の近くに薄汚い令嬢がいたのね。臭くならないかしら?誰かここに香水をふってちょうだい」
わたしはその前に、「貴女は、どうして東宮に居るの」?と、どうしても聞いてみたかった。
「マリーナ様、失礼なことを申しますが、どうしてここにいつもいらっしゃるのですか?」
思わず言葉が口から出てしまった。
「わたしはお父様に連れられて来ているのよ」
「王子に会いにお父様は来ているの?」
わたしは分かっているのに、聞いてみた。
「はあ?何を言っているの!そんなわけないでしょう?お父様は本宮で文官として働いているのよ?」
「まあ!そうだったんですね。では迷子かしら?」
わたしは首をこてんと傾けた。
「迷子?誰が迷子だと言うの!」
「ではどうして王子の住む東宮にいるのですか?」
「う、うるさいわね!わたしがどこに居ようと貴女には関係ないことよ」
「はい、関係ございません。ただ、この場所は王子殿下の住む東宮です。普通の方はここに勝手に来れません。誰かに呼ばれるか王子殿下に招待されないと入れない場所です」
「ふっ、わたしはクロード様と仲がいいのよ」
マリーナ様がわたしを馬鹿にしたように鼻で笑った。
この笑顔は覚えている。
前回、殿下の横でわたしを見ていた時のあのマリーナ様の笑顔だ。
人を馬鹿にして蔑むあの笑顔。
わたしはゾクッとして、一瞬息が出来なくなった。
あの処刑された時の記憶が蘇ってきた。
「エリーゼ、お前など愛してもいない。愛しているのはマリーナだけだ。
お前はわたしの大事なマリーナを殺そうとした犯罪者だ」
と言って殿下は睨んで吐き捨てた。
殿下が去ったあとわたしは地下牢へ連れて行かれすぐに処刑された。
マリーナ様と父親のハウエル公爵は、わたしが首を切られるのをにやにやして笑いながら見ていた。
わたしは口を抑えられ男二人に無理やり引き摺られながら、地下にある処刑台に連れて行かれた。
そして固定されると
「あんたなんか死んでしまえばいいのよ、邪魔な女」
とマリーナ様に吐き捨てられた。
ハウエル公爵は、
「オーリス様が亡くなったのはお前が生まれたからだ。お前さえ生まれなければ今も生きていたのに。お前なんか死んでしまえばいい」
(お母様?わたしの所為で亡くなったの?)
わたしは二人からの殺意を感じ、嘲笑われながら処刑された。
わたしは、胸を抑えてそのまま蹲った。
「どうしたの?さっきまであんなに強気でいたくせに。処刑された時のことを思い出したの?」
わたしの耳元でクスクス笑いながら言うと、
「今回も貴女は処刑されるのよ」
と言って去っていった。
わたしは何も言い返せなくて、息をするのが苦しくてハァハァ言いながら蹲って気を失った。
流石に王子様。わたしなんかと違って理解力も記憶力も凄くて、わたしは追いつくのに必死だった。
せっかく王宮にいるのだから今のうちに吸収できることはなんでもしておこうと欲張っていた。
でもわたしは無知だった。
東宮はクロード殿下の宮で、わたしと院長先生は一応客として来ている。
侍女や侍従の人達は、誰もがわたしに温かい目でみているわけではなかった。
騎士さん達はわたしに、何かあったらいけないからと部屋から出る時は必ず護衛をしてくれる。
わたしの世話をしてくれる侍女のミーナもいつも優しくてお姉さんみたいな人だ。
部屋で過ごしている間は、いつも同じ人達がそばに居てくれたので気づかなかったが、廊下を歩いていると冷たい視線や好奇の目で見られていることに気づく。
聞こえないように話しているつもりなのか、態とに聞こえるように話しているのか……
「ほらあの子よ。王子様のお客様としてお泊まりになられているらしいの」
「公爵令嬢なのに訳あって孤児院にいたらしいわ」
「何があったのかしら?とても性格が悪くて捨てられたとか?」
「見て、いつも質素なワンピースを着ているらしいのよ。外に出る時はドレスを着ているみたいだけど、なんだか安っぽい服よね」
この言葉にはわたしも一言、言いたかった。
安っぽい?これは一点物で、光の当たり方で色の発色が変わる珍しいシルク布で作られている。
「お前らの目は節穴か?」と言ってやりたかったが、わたしは今は公爵令嬢。孤児院の子どもではない。
抑えて抑えて。
一人で心を落ち着かせて、噂をしている侍女や侍従に態とに笑顔で挨拶して、微笑んだ。
「ごきげんよう」
(何か言いたい事があるならわたしの前で言ったら?)
と思いつつみんなの前を堂々と歩いた。
そして、今日もまた彼女は現れた。
「あら?まだ王子様の近くに薄汚い令嬢がいたのね。臭くならないかしら?誰かここに香水をふってちょうだい」
わたしはその前に、「貴女は、どうして東宮に居るの」?と、どうしても聞いてみたかった。
「マリーナ様、失礼なことを申しますが、どうしてここにいつもいらっしゃるのですか?」
思わず言葉が口から出てしまった。
「わたしはお父様に連れられて来ているのよ」
「王子に会いにお父様は来ているの?」
わたしは分かっているのに、聞いてみた。
「はあ?何を言っているの!そんなわけないでしょう?お父様は本宮で文官として働いているのよ?」
「まあ!そうだったんですね。では迷子かしら?」
わたしは首をこてんと傾けた。
「迷子?誰が迷子だと言うの!」
「ではどうして王子の住む東宮にいるのですか?」
「う、うるさいわね!わたしがどこに居ようと貴女には関係ないことよ」
「はい、関係ございません。ただ、この場所は王子殿下の住む東宮です。普通の方はここに勝手に来れません。誰かに呼ばれるか王子殿下に招待されないと入れない場所です」
「ふっ、わたしはクロード様と仲がいいのよ」
マリーナ様がわたしを馬鹿にしたように鼻で笑った。
この笑顔は覚えている。
前回、殿下の横でわたしを見ていた時のあのマリーナ様の笑顔だ。
人を馬鹿にして蔑むあの笑顔。
わたしはゾクッとして、一瞬息が出来なくなった。
あの処刑された時の記憶が蘇ってきた。
「エリーゼ、お前など愛してもいない。愛しているのはマリーナだけだ。
お前はわたしの大事なマリーナを殺そうとした犯罪者だ」
と言って殿下は睨んで吐き捨てた。
殿下が去ったあとわたしは地下牢へ連れて行かれすぐに処刑された。
マリーナ様と父親のハウエル公爵は、わたしが首を切られるのをにやにやして笑いながら見ていた。
わたしは口を抑えられ男二人に無理やり引き摺られながら、地下にある処刑台に連れて行かれた。
そして固定されると
「あんたなんか死んでしまえばいいのよ、邪魔な女」
とマリーナ様に吐き捨てられた。
ハウエル公爵は、
「オーリス様が亡くなったのはお前が生まれたからだ。お前さえ生まれなければ今も生きていたのに。お前なんか死んでしまえばいい」
(お母様?わたしの所為で亡くなったの?)
わたしは二人からの殺意を感じ、嘲笑われながら処刑された。
わたしは、胸を抑えてそのまま蹲った。
「どうしたの?さっきまであんなに強気でいたくせに。処刑された時のことを思い出したの?」
わたしの耳元でクスクス笑いながら言うと、
「今回も貴女は処刑されるのよ」
と言って去っていった。
わたしは何も言い返せなくて、息をするのが苦しくてハァハァ言いながら蹲って気を失った。
応援ありがとうございます!
24
お気に入りに追加
4,683
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる