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43話

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わたしは毒で死にかけているフリをして今も床で寝ている。

二人の会話を聞いて、腹が立ち本当はマリーナ様に殴りかかってしまいたかった。

牢に入れられているので、彼らに近づくことすら出来ないのに。

マリーナ様は、前回の記憶を使い、悪いことをしているが、運がいいことにわたしだけ記憶があると思っている。
殿下やお父様、カイラもエレンのことも、マリーナ様にはバレていない。

わたしが孤児院に逃げて、みんながわたしと接触していなかったから、そんな風に見えていたのかもしれない。

殿下の東宮にわたしがいるのも、殿下がわたしを好きだから逃げないように東宮に住まわせていると勘違いしてくれている。

ターゲットをわたし一人に絞っているのは、前回と同じ。

簡単にやられてあげるのは癪だが、他の人に危害がないならいいかなとも思う。

でも、やっぱり悔しい。
わたしはこんな人には負けたくない!

と言っても、この牢屋に入れられている状況では、何もできない。



「お父様、エリーゼはもう意識朦朧になってわたし達の会話も理解すら出来ていないはずよ」

ゴクッ……

(何?この気持ち悪い音は…)

「10歳か……そろそろ胸が出始め子どもから少女になる一番可愛らしい頃だな。マリーナ、この子を殺す前にわたしが少しをしてもいいかな」

「ふふふ!素敵ね。少女が穢されて死んでいく。なんて最高なの!」

(わたしは吐きそうになった。気持ち悪い!嫌だ!それならいっそ殺して欲しい)


それでもわたしは蹲って床で寝ていた。

ぐったりとしたフリをして。

そんな時新しい声が聞こえてきた。

この声は………皇后様⁉︎

「貴方達親子は、ほんと屑ね。エリーゼはわたしの息子の嫁になるかもしれないと言われている子よ」

この話し方……別にわたしを助けようと思ってのセリフではない。
面白がっているだけで、わたしのことなんかどうでもいいみたい。

前回のときも皇后様はそうだった。

本宮で過ごしていた殿下に興味も示さず、下の息子のレンス王子をひたすら溺愛していた。

殿下は母親をチラッと見ることはあっても感情を殺して、追い縋ることもなかった。

血が繋がった他人同士。

今回は、殿下は弟とは交流を態とに持っていた。
母親である皇后様の様子を探るために。

そして皇后様がやたらと院長先生のことを気にして色々と調べ回っていることに気がついて、わたしと院長先生を守るために、東宮に連れてきたのだ。

陛下は皇后様へ全く愛情を示さない。

レンス王子という不貞を働いて出来た息子のことも一応は自分の息子として受け入れている。
皇后様を責めることも興味も示さない。

それは女としては屈辱だろう。

結婚したのに自分を愛さない。

近寄っても来ない。

会話も夫婦関係もない。

生き地獄でしかない。

結婚してもなおヴィクトリア様だけを愛し続ける陛下。

皇后様の冷たい声がわたしに向けられた。

「この子を毒で殺すのは勿体無いわ。もっと残酷に苦しみと恐怖を味わいながら死なせてあげなければ。ふふふふ……ハウエル公爵、貴方とお父様の性癖を存分に発揮してもらい、それを魔石に残しましょう。いつかそれをクロードに見せて絶望させてやりたいわ」

「な、なんで残して王子に見せるのですか?それではわたし達が捕まることになりますよね?」

「あら?捕まるような悪いことをするんでしょ?まあ、クロードを始末する時に見せて絶望感を味合わせてあげるだけだから、貴方達がつかまることまないわ」

「皇后様、無礼を承知で言わせていただきますが、クロード様はわたしと結婚して、この国の国王になるお方です。
始末とはどういうことですか?」

「そのままよ、レンスを国王にするには陛下もクロードも邪魔なの。そしてこのエリーゼもね。クロードがエリーゼに夢中になる姿が陛下がヴィクトリア様に夢中になっている姿に重なるのよ。
イライラして仕方ないのよ」

「レンス王子は王位継承権がありません。クロード様が亡くなっても次は王弟であるダイラ様ですよね?」

「だから何?みんな殺せばいいのよ。反乱でも起こしてその隙に殺してもわからないでしょう?お父様が上手くやってくれるわ」

「クロード様を殺す?それだけはさせません。だったらわたしに下さい。わたしの婿としてずっと公爵家で暮らしますので」

「マリーナはクロードが好きなのね?」

「もちろんです。前回の時はクロード様はいつもわたしを愛してくださりました。彼は朝迄とても激しくわたしを抱いてくれたんです。わたしと彼はもう離れられないくらいお互いの体を知っています。彼だって忘れられないと思います」

わたしは吐きそうになった。

マリーナ様の話は、前回の二人のことを思い出さずにいられない。
惨めで悲しくて、辛かった。

そう、今なら分かる。

殿下を愛していないし、好きではない。

そう思わなければ、あの時生きていけなかった。

彼を愛しているなんて、絶対に認めることは出来なかった。

だって彼の横にはマリーナ様がいるのだから。

わたしは殿下なんか好きではなかった。

そう自分に言い聞かせることで、なんとか耐えてきたんだった。







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