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70話
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お父様とお兄様に久しぶりに会うことができた。
何があっても素直になれず話すことすら必要最低限しかしなかったお父様。
お父様は私を見て、涙を流していた。
「やっと目覚めたのにそばに居てあげられなくてすまなかった。また前回のようにエリーゼを置いて行ってしまった」
お父様は項垂れて私の顔を見ようともしなかった。
お兄様はそんなお父様の様子を見て、
「エリーゼ、今回は父上が悪いわけではないんだ、領地での流行病の対処に追われていたんだ、そばに居てあげれなくてごめんな」
二人が必死で謝ってくれているのを見て
「前回の記憶があります。ちょうどこの頃でしたよね、流行病で沢山の領民が亡くなったのは……」
「そうだった、今回は前回の記憶を元に薬を早めに用意していたのでかなりの人を助けることが出来た」
お父様が私の顔をやっと見てくれた。
「前回の時は何も知らず、その時もただ捨て置かれたと思っていました。今回はわたしが勝手に意識を失っていたのです。だから大丈夫です」
「……意識が戻ってよかった」
「もう少し体調が戻ればユンもミリアも面会を許可されると思う」
「二人は公爵家にいるのですね?」
「当たり前だ、お前と学園に通っていただろう?」
わたしはお父様とお兄様に何処から話そうか迷いながらも、
「この話をお二人なら信じてもらえると思い話したいと思います。そしてわたしの記憶と今を、何処が違うか確認したいのです」
「うん?どう言うこと?」
お兄様はわたしの言っている意味が分からずキョトンとしていた。
「すみません、わたしもどう話せばいいのか迷っています。でもこれは夢ではありません」
そしてわたしは意識を失ってから、ユシリス様と過ごしたひと月余りの出来事を全て話した。
話終わってからお父様は……
「だからか……巻き戻った時に前回の記憶と今回が最初からいくつも違っていておかしいところがあったんだ。だが、前回と今回は違うものだと思っていた」
「僕もそうです。ニューベル公爵が僕が生まれた時にはもういませんでした。あれだけ前回苦しめられたのに、ユシリス様は前陛下と結婚されて仲睦まじくされていました。前回のお二人はとても仲が悪かったのに……」
「そうだな、今回はヴィクトリアと前陛下は婚約すらしていない。留学で帝国に行っていた前陛下がユシリス様を見初められて結婚したんだった。前回はヴィクトリア様と言う婚約者がありながらユシリス様が前陛下と無理矢理関係を結び、妊娠して結婚されたのに今回は全く違っていたんだ」
「ニューベル公爵はどうなったのですか?」
わたしは一番気になっていたあの糞気持ち悪い公爵のことを聞いた。
「そう言えば……前回はもちろんいましたが今回は公爵はいませんでしたが、父上どう言うことですか?」
お兄様も言われてみれば……と思ったようだ。
「ニューベル公爵は、わたしが13歳くらいの時だったか……娘への虐待と子供達を集めて売春させていた事がわかり、捕まったんだ。
そして親族も関わっていたことからお家取り潰しになり処刑された。
ユシリス様は帝国の公爵家の養女になり、帝国に留学していた元陛下と恋仲になり、ご結婚されたんだ」
「院長先生は?前回は婚約者でお互い別れても愛し合っていたのでは?」
「ヴィクトリアは今回は前陛下とは婚約はしていない。
ただ、孤児院を運営していた平民の男性と恋愛をして結婚を反対されて、公爵家を除籍されたんだ。
そして結婚して院長先生として今は幸せに暮らしているよ」
「わたしが屋敷を出て数年孤児院にいた時には……では院長先生には家族がいたと言うことですか?」
「君には違和感しかないかもしれないね、エリーゼにとっては前回と今回は変わっていないからね」
わたしはまだ頭がついていかなかった。
院長先生にご主人がいる……
「では子供もいるのですか?」
「うん、スコットと同じ年のウィリアンと2歳年下のナタリーアがいるよ。エリーゼはとてもなついているよ」
「……わたしにはその記憶がありません」
「うーん、あれだけ懐いていたナタリーアを知らないのか……」
お兄様も少し考え込んでいた。
わたしの記憶とお兄様の記憶は違う。
わたしはこれからどうやって過ごせばいいのだろう。
何があっても素直になれず話すことすら必要最低限しかしなかったお父様。
お父様は私を見て、涙を流していた。
「やっと目覚めたのにそばに居てあげられなくてすまなかった。また前回のようにエリーゼを置いて行ってしまった」
お父様は項垂れて私の顔を見ようともしなかった。
お兄様はそんなお父様の様子を見て、
「エリーゼ、今回は父上が悪いわけではないんだ、領地での流行病の対処に追われていたんだ、そばに居てあげれなくてごめんな」
二人が必死で謝ってくれているのを見て
「前回の記憶があります。ちょうどこの頃でしたよね、流行病で沢山の領民が亡くなったのは……」
「そうだった、今回は前回の記憶を元に薬を早めに用意していたのでかなりの人を助けることが出来た」
お父様が私の顔をやっと見てくれた。
「前回の時は何も知らず、その時もただ捨て置かれたと思っていました。今回はわたしが勝手に意識を失っていたのです。だから大丈夫です」
「……意識が戻ってよかった」
「もう少し体調が戻ればユンもミリアも面会を許可されると思う」
「二人は公爵家にいるのですね?」
「当たり前だ、お前と学園に通っていただろう?」
わたしはお父様とお兄様に何処から話そうか迷いながらも、
「この話をお二人なら信じてもらえると思い話したいと思います。そしてわたしの記憶と今を、何処が違うか確認したいのです」
「うん?どう言うこと?」
お兄様はわたしの言っている意味が分からずキョトンとしていた。
「すみません、わたしもどう話せばいいのか迷っています。でもこれは夢ではありません」
そしてわたしは意識を失ってから、ユシリス様と過ごしたひと月余りの出来事を全て話した。
話終わってからお父様は……
「だからか……巻き戻った時に前回の記憶と今回が最初からいくつも違っていておかしいところがあったんだ。だが、前回と今回は違うものだと思っていた」
「僕もそうです。ニューベル公爵が僕が生まれた時にはもういませんでした。あれだけ前回苦しめられたのに、ユシリス様は前陛下と結婚されて仲睦まじくされていました。前回のお二人はとても仲が悪かったのに……」
「そうだな、今回はヴィクトリアと前陛下は婚約すらしていない。留学で帝国に行っていた前陛下がユシリス様を見初められて結婚したんだった。前回はヴィクトリア様と言う婚約者がありながらユシリス様が前陛下と無理矢理関係を結び、妊娠して結婚されたのに今回は全く違っていたんだ」
「ニューベル公爵はどうなったのですか?」
わたしは一番気になっていたあの糞気持ち悪い公爵のことを聞いた。
「そう言えば……前回はもちろんいましたが今回は公爵はいませんでしたが、父上どう言うことですか?」
お兄様も言われてみれば……と思ったようだ。
「ニューベル公爵は、わたしが13歳くらいの時だったか……娘への虐待と子供達を集めて売春させていた事がわかり、捕まったんだ。
そして親族も関わっていたことからお家取り潰しになり処刑された。
ユシリス様は帝国の公爵家の養女になり、帝国に留学していた元陛下と恋仲になり、ご結婚されたんだ」
「院長先生は?前回は婚約者でお互い別れても愛し合っていたのでは?」
「ヴィクトリアは今回は前陛下とは婚約はしていない。
ただ、孤児院を運営していた平民の男性と恋愛をして結婚を反対されて、公爵家を除籍されたんだ。
そして結婚して院長先生として今は幸せに暮らしているよ」
「わたしが屋敷を出て数年孤児院にいた時には……では院長先生には家族がいたと言うことですか?」
「君には違和感しかないかもしれないね、エリーゼにとっては前回と今回は変わっていないからね」
わたしはまだ頭がついていかなかった。
院長先生にご主人がいる……
「では子供もいるのですか?」
「うん、スコットと同じ年のウィリアンと2歳年下のナタリーアがいるよ。エリーゼはとてもなついているよ」
「……わたしにはその記憶がありません」
「うーん、あれだけ懐いていたナタリーアを知らないのか……」
お兄様も少し考え込んでいた。
わたしの記憶とお兄様の記憶は違う。
わたしはこれからどうやって過ごせばいいのだろう。
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