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お金がないの!
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仕事から早歩きで帰ると、屋敷の中は静かだった。
「お父様?アイシン?グレイ?」
今日は特に用事もないので三人は屋敷にいるはず。
なのに誰も返事をしてこない。
わたしはとりあえずアイシンとグレイの部屋へ行ってみた。
するとアイシンがベッドに寝かされていた。
「どうしたの?アイシン?」
近くによるとアイシンが息が苦しそうにしていた。
「アイシン?苦しいの?」
わたしがアイシンの体を触ると驚くほど熱い。
これは高熱。
それもかなり悪そう。
「お父様?グレイ?」
わたしが大きな声を出すと
「セスティ様、お帰りなさい」
グレイが洗面器に水を入れて急いでアイシンの部屋へ来た。
「グレイ、お父様は?」
「今お医者様を呼びに行っています」
「そう……わかったわ、アイシンはいつから具合が悪いの?朝は普通にしていたと思うのだけど?」
「アイシンはこの一週間、本当は体調が良くなかったんです、でも旦那様やセスティ様にご心配をおかけしたくなくて、黙っていました」
「そうなのね、無理をさせたのね」
我が家にお金がないことは二人とも知っている。
だからお医者さんを呼ぶとかなりのお金がかかるのでキツくても無理をしていたのだと思う。
わたしはとりあえず熱のせいで汗をかいて濡れた寝間着を着替えさせた。
しばらく待つと、お医者様がきてくれた。
「先生お久しぶりです、よろしくお願いします」
「セスティ久しぶりだね、相変わらず可愛らしいね君は」
「先生、そんなふざけた挨拶はいいですから早く診てください」
お父様は先生にイライラしていた。
(お父様ったらアイシンが心配なのね)
診察の結果、喉が真っ赤で扁桃腺の熱だろうと言われた。
お薬を出してもらったのでグレイに先生について行って取りに行ってもらうことにした。
その間わたしとお父様は二人っきり。
「お父様、診察代はどうしますか?」
「セスティ大丈夫だ、セリアの絵を一枚売ることにした」
「え?あんなに頑なに売ろうとしなかったのに?」
「ある人に言われたんだ……セリアは絵を売らないで大切にしてくれるよりも、売ってセスティ達が幸せに暮らしている方がセリアは喜ぶとね。
わかっているんだ、わたしの我儘で君達を苦労させていたこと。でもどうしても気力が湧かなくてね……
でも守ってあげないといけない娘と息子に苦労させて守るどころか守られてきたんだ、本当にすまなかった。
明日から職場に戻るよ」
「あんなに絵を売ることを嫌がっていたのに……お父様いいのですか?」
「もちろんだ、お前たちのほうが大切だ」
(え⁉︎何⁈お父様が愛よりお金を選んだ!)
わたしは感動より驚きがかくせなかった。
明日になればまた絵は売らない、仕事だって行かないと言い出すのだろうと、あまり信用しなかった。
アイシンはまだ熱が高いが薬を飲ませたので少しだけ落ち着いてきた。
わたしは明日も仕事があるが、アイシンが心配なのでアイシンの部屋で一緒に寝ることにした。
看病しながらわたしが隠し持っているへそくりをとうとう使う時が来たなと、溜息ながらに考えていた。
お父様の言うことなんて真面目に聞いていたら損する。
うん、やはり、へそくりを使おう。
仕事の帰りに先生のところへ支払に行くことを決めた。
朝、目が覚めると、アイシンの熱はかなり下がっていた。
「よかった、これなら安心ね」
わたしが額に手をやり熱を測っていると
「………セスティ様?」
まだ虚ろな目をしたアイシンが、きつそうにわたしに話しかけてきた。
「ごめんな…さい、病…気をし…て」
「どうして謝るの?それよりキツかったのに気づいてあげられなくてごめんなさい、でもね、我慢はしないで欲しいの。あなた達二人とここで一緒に暮らすと決めた時から家族だと思っているのよ」
「か…ぞく?」
「そう、だから遠慮しないで、頼りないかもしれないし、贅沢はさせてあげれないけど、二人のことを大切に思っているわ」
わたしの言葉にアイシンは涙をポロポロ流して
「セスティ様……嬉しいです」
と言ってくれた。
わたしはなんだかちょっと気恥ずかしくてなのに胸がぽかぽかしてきて、アイシンの頭をよしよしと撫でてあげた。
「アイシンの体調はどうだい?」
お父様が様子を見に来た。
わたしはお父様の姿を見て驚いた。
綺麗に髭を剃り髪を整えて、きちんとした仕事着を着てわたしの前に立っていた。
「お、お父様、ど、どうしたのですか?」
「言っただろう!仕事に行くと。ただアイシンが心配だからちょっと顔を出しに来たんだ」
お父様がまともになってる⁉︎
「お父様?アイシン?グレイ?」
今日は特に用事もないので三人は屋敷にいるはず。
なのに誰も返事をしてこない。
わたしはとりあえずアイシンとグレイの部屋へ行ってみた。
するとアイシンがベッドに寝かされていた。
「どうしたの?アイシン?」
近くによるとアイシンが息が苦しそうにしていた。
「アイシン?苦しいの?」
わたしがアイシンの体を触ると驚くほど熱い。
これは高熱。
それもかなり悪そう。
「お父様?グレイ?」
わたしが大きな声を出すと
「セスティ様、お帰りなさい」
グレイが洗面器に水を入れて急いでアイシンの部屋へ来た。
「グレイ、お父様は?」
「今お医者様を呼びに行っています」
「そう……わかったわ、アイシンはいつから具合が悪いの?朝は普通にしていたと思うのだけど?」
「アイシンはこの一週間、本当は体調が良くなかったんです、でも旦那様やセスティ様にご心配をおかけしたくなくて、黙っていました」
「そうなのね、無理をさせたのね」
我が家にお金がないことは二人とも知っている。
だからお医者さんを呼ぶとかなりのお金がかかるのでキツくても無理をしていたのだと思う。
わたしはとりあえず熱のせいで汗をかいて濡れた寝間着を着替えさせた。
しばらく待つと、お医者様がきてくれた。
「先生お久しぶりです、よろしくお願いします」
「セスティ久しぶりだね、相変わらず可愛らしいね君は」
「先生、そんなふざけた挨拶はいいですから早く診てください」
お父様は先生にイライラしていた。
(お父様ったらアイシンが心配なのね)
診察の結果、喉が真っ赤で扁桃腺の熱だろうと言われた。
お薬を出してもらったのでグレイに先生について行って取りに行ってもらうことにした。
その間わたしとお父様は二人っきり。
「お父様、診察代はどうしますか?」
「セスティ大丈夫だ、セリアの絵を一枚売ることにした」
「え?あんなに頑なに売ろうとしなかったのに?」
「ある人に言われたんだ……セリアは絵を売らないで大切にしてくれるよりも、売ってセスティ達が幸せに暮らしている方がセリアは喜ぶとね。
わかっているんだ、わたしの我儘で君達を苦労させていたこと。でもどうしても気力が湧かなくてね……
でも守ってあげないといけない娘と息子に苦労させて守るどころか守られてきたんだ、本当にすまなかった。
明日から職場に戻るよ」
「あんなに絵を売ることを嫌がっていたのに……お父様いいのですか?」
「もちろんだ、お前たちのほうが大切だ」
(え⁉︎何⁈お父様が愛よりお金を選んだ!)
わたしは感動より驚きがかくせなかった。
明日になればまた絵は売らない、仕事だって行かないと言い出すのだろうと、あまり信用しなかった。
アイシンはまだ熱が高いが薬を飲ませたので少しだけ落ち着いてきた。
わたしは明日も仕事があるが、アイシンが心配なのでアイシンの部屋で一緒に寝ることにした。
看病しながらわたしが隠し持っているへそくりをとうとう使う時が来たなと、溜息ながらに考えていた。
お父様の言うことなんて真面目に聞いていたら損する。
うん、やはり、へそくりを使おう。
仕事の帰りに先生のところへ支払に行くことを決めた。
朝、目が覚めると、アイシンの熱はかなり下がっていた。
「よかった、これなら安心ね」
わたしが額に手をやり熱を測っていると
「………セスティ様?」
まだ虚ろな目をしたアイシンが、きつそうにわたしに話しかけてきた。
「ごめんな…さい、病…気をし…て」
「どうして謝るの?それよりキツかったのに気づいてあげられなくてごめんなさい、でもね、我慢はしないで欲しいの。あなた達二人とここで一緒に暮らすと決めた時から家族だと思っているのよ」
「か…ぞく?」
「そう、だから遠慮しないで、頼りないかもしれないし、贅沢はさせてあげれないけど、二人のことを大切に思っているわ」
わたしの言葉にアイシンは涙をポロポロ流して
「セスティ様……嬉しいです」
と言ってくれた。
わたしはなんだかちょっと気恥ずかしくてなのに胸がぽかぽかしてきて、アイシンの頭をよしよしと撫でてあげた。
「アイシンの体調はどうだい?」
お父様が様子を見に来た。
わたしはお父様の姿を見て驚いた。
綺麗に髭を剃り髪を整えて、きちんとした仕事着を着てわたしの前に立っていた。
「お、お父様、ど、どうしたのですか?」
「言っただろう!仕事に行くと。ただアイシンが心配だからちょっと顔を出しに来たんだ」
お父様がまともになってる⁉︎
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