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12話
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早く来てくれと、心が忙しなくなるが、みんなの姿がなかなか現れなかった。
「いやあ、やめて」
「お願い、助けて」
「やぁー」
中から女性の悲鳴が泣き叫ぶ声が聞こえる。
俺は一度階段を駆け上がり外を見た。
まだ誰も来る気配がない。
このままだと女性達は男達に犯されて、殺される。
それを放っておくことは出来ない。この前の父親の姿を思い出した。
俺達は絶対にこの事件を解決するんだと誓ったんだ。犯人を捕まえれば、平民の女性達はどうなってもいいなんて思えるわけがない。
俺は腰に差している剣を抜き、もう一度階段を降りて地下へ向かった。
扉の鍵がかかっていたのはわかっていたので、石を持って降りていた。
扉のノブに目掛けて石で叩き割り、扉をこじ開けた。
そしてそのまま、剣を男達に一気に斬りつけて行った。
三人は無防備な格好でいたので、簡単に怪我をさせることができた。
残りの二人はすぐにナイフを持ち抵抗してきた。
ただ二人とも破落戸とはいえ剣が使えるわけでもないので、なんとかやっつけることが出来た。
ただもう一人厄介な奴が残っていた。
クリストファだった。
女の首にナイフの刃を当て、俺を見ながら震えていた。
「も、もしこっちに来たら、こ、このおん、女を殺す。近づくな!」
こう言う奴が一番厄介だ。
パニックになって冷静ではないので何をしでかすかわからない。
本当に女性に傷付けるかもしれない。
俺は仕方がないので、剣を地面に静かに置いた。
「その人に何もするな。剣は置いた。わかったな?クリストファ」
俺は静かに語りかけるように話した。
だが、恐怖で女性は暴れ始めた。
「いやあぁ、助けて」
クリストファはその声に反応して女性を切り付けた。
首から血が出ている。
俺はすぐにクリストファを蹴り飛ばして女性の首に俺が脱いだシャツで、止血をした。
よく見ると出血ほど傷は深くはなかった。
これなら命は助かるだろう。
「大丈夫か?」
と聞くとブルブル震えてはいるが意識ははっきりとしていた。
そんな時後ろから沢山の声が聞こえた。
「アラン、どうなったんだ?」
同僚が声をかけてきた。
「とりあえず犯人達はやっつけました。それよりも女性達の手当てをしてあげてください」
女性達は服を破られて乱暴される寸前だった。
たぶんされた人もいたかもしれない。
俺が踏み込むのが早ければ傷付かずに済んだのにと思うと悔しさしかなかった。
首を切られた女性は放心状態で、騎士達に抱き抱えられて連れて行かれた。
俺が切った男達は、痛みで床で血を流して唸っていた。
騎士達はそれを見て、手当てもせずにそのまま紐で縛り上げて引きずるように連行していった。
「アラン、お前は一人で先走りやがって。規則を分かっているだろう?副隊長の癖に規則も守れないでどうするんだ!」
隊長はかなり怒っていて俺は腹を三発殴られた。
これはみんなへの見せしめだ。
「アラン、来い!」
隊長の怒鳴り声に仕方なくついて行った。
規則を守らない騎士など要らない。
俺は首になるのか。
せっかく騎士になったのに。
この三年間のことを思い出すと悔しいが、女性達の心を守れたんだし、まあいいかと諦めた。
どこかの屋敷の護衛として働くのもいいかもと思い、隊長について行った。
詰所に戻ると街を守る第四騎士隊の隊員達が怖い顔で俺を囲んだ。
規則
違反をしたのだ。
これだけの騎士達に殴られるのかと覚悟を決めて、俺はみんなを黙って見ていた。
「アラン、俺の妹を助けてくれてありがとう。もう少しで穢されるところだった。お前が助けてくれなかったら穢されて殺されていたんだと妹が言っていた」
第四騎士隊は、平民が多い騎士隊だ。だからこそ目が行き届き街を守れる。
今回の人身売買は、第四騎士隊だけでは人手が足りなくてそれぞれの騎士隊や近衛騎士からも駆り出された。
だから貴族の騎士も多く、面倒くさがって巡回など適当にしていた奴も多かった。
俺は元貴族の平民なので、それなりに頑張って手伝ったつもりだった。
一応命をかけて彼女達を守ったつもりだったが、規則を破り首になるだろうと思っていたら、感謝された⁈
「俺からもお礼を言うよ、彼女は婚約者なんだ。何事もなく事件が解決して良かった。まあ、どんなことがあっても彼女とは結婚するつもりだったけど彼女の心が壊れなくて助かった。ありがとう」
他の騎士からは、
「無茶しやがって!いくら腕がいいとはいえ、どうなるか分からないんだから、お前に何かあったらどうするんだ!」
「大丈夫です。俺に何かあってもたかが平民の一人です。死んでも悲しむ者なんていません」
俺の一言に隊長はまた俺のお腹に一発殴ってきた。
「俺がさっきから怒っているのはお前のその投げやりなところだ。
確かにお前が突入してくれなければ女達は助からなかっただろう。助かっても男達の酷い仕打ちに心が壊れていただろう。それは本当に感謝している。だが、お前の命も大切にしろ。
いくら腕が立つからと言っても、お前が命を落としたらどうするんだ!」
(この人は俺の命を大切だと言ってくれるんだ……俺の命なんていつなくなってもいいのに)
「いやあ、やめて」
「お願い、助けて」
「やぁー」
中から女性の悲鳴が泣き叫ぶ声が聞こえる。
俺は一度階段を駆け上がり外を見た。
まだ誰も来る気配がない。
このままだと女性達は男達に犯されて、殺される。
それを放っておくことは出来ない。この前の父親の姿を思い出した。
俺達は絶対にこの事件を解決するんだと誓ったんだ。犯人を捕まえれば、平民の女性達はどうなってもいいなんて思えるわけがない。
俺は腰に差している剣を抜き、もう一度階段を降りて地下へ向かった。
扉の鍵がかかっていたのはわかっていたので、石を持って降りていた。
扉のノブに目掛けて石で叩き割り、扉をこじ開けた。
そしてそのまま、剣を男達に一気に斬りつけて行った。
三人は無防備な格好でいたので、簡単に怪我をさせることができた。
残りの二人はすぐにナイフを持ち抵抗してきた。
ただ二人とも破落戸とはいえ剣が使えるわけでもないので、なんとかやっつけることが出来た。
ただもう一人厄介な奴が残っていた。
クリストファだった。
女の首にナイフの刃を当て、俺を見ながら震えていた。
「も、もしこっちに来たら、こ、このおん、女を殺す。近づくな!」
こう言う奴が一番厄介だ。
パニックになって冷静ではないので何をしでかすかわからない。
本当に女性に傷付けるかもしれない。
俺は仕方がないので、剣を地面に静かに置いた。
「その人に何もするな。剣は置いた。わかったな?クリストファ」
俺は静かに語りかけるように話した。
だが、恐怖で女性は暴れ始めた。
「いやあぁ、助けて」
クリストファはその声に反応して女性を切り付けた。
首から血が出ている。
俺はすぐにクリストファを蹴り飛ばして女性の首に俺が脱いだシャツで、止血をした。
よく見ると出血ほど傷は深くはなかった。
これなら命は助かるだろう。
「大丈夫か?」
と聞くとブルブル震えてはいるが意識ははっきりとしていた。
そんな時後ろから沢山の声が聞こえた。
「アラン、どうなったんだ?」
同僚が声をかけてきた。
「とりあえず犯人達はやっつけました。それよりも女性達の手当てをしてあげてください」
女性達は服を破られて乱暴される寸前だった。
たぶんされた人もいたかもしれない。
俺が踏み込むのが早ければ傷付かずに済んだのにと思うと悔しさしかなかった。
首を切られた女性は放心状態で、騎士達に抱き抱えられて連れて行かれた。
俺が切った男達は、痛みで床で血を流して唸っていた。
騎士達はそれを見て、手当てもせずにそのまま紐で縛り上げて引きずるように連行していった。
「アラン、お前は一人で先走りやがって。規則を分かっているだろう?副隊長の癖に規則も守れないでどうするんだ!」
隊長はかなり怒っていて俺は腹を三発殴られた。
これはみんなへの見せしめだ。
「アラン、来い!」
隊長の怒鳴り声に仕方なくついて行った。
規則を守らない騎士など要らない。
俺は首になるのか。
せっかく騎士になったのに。
この三年間のことを思い出すと悔しいが、女性達の心を守れたんだし、まあいいかと諦めた。
どこかの屋敷の護衛として働くのもいいかもと思い、隊長について行った。
詰所に戻ると街を守る第四騎士隊の隊員達が怖い顔で俺を囲んだ。
規則
違反をしたのだ。
これだけの騎士達に殴られるのかと覚悟を決めて、俺はみんなを黙って見ていた。
「アラン、俺の妹を助けてくれてありがとう。もう少しで穢されるところだった。お前が助けてくれなかったら穢されて殺されていたんだと妹が言っていた」
第四騎士隊は、平民が多い騎士隊だ。だからこそ目が行き届き街を守れる。
今回の人身売買は、第四騎士隊だけでは人手が足りなくてそれぞれの騎士隊や近衛騎士からも駆り出された。
だから貴族の騎士も多く、面倒くさがって巡回など適当にしていた奴も多かった。
俺は元貴族の平民なので、それなりに頑張って手伝ったつもりだった。
一応命をかけて彼女達を守ったつもりだったが、規則を破り首になるだろうと思っていたら、感謝された⁈
「俺からもお礼を言うよ、彼女は婚約者なんだ。何事もなく事件が解決して良かった。まあ、どんなことがあっても彼女とは結婚するつもりだったけど彼女の心が壊れなくて助かった。ありがとう」
他の騎士からは、
「無茶しやがって!いくら腕がいいとはいえ、どうなるか分からないんだから、お前に何かあったらどうするんだ!」
「大丈夫です。俺に何かあってもたかが平民の一人です。死んでも悲しむ者なんていません」
俺の一言に隊長はまた俺のお腹に一発殴ってきた。
「俺がさっきから怒っているのはお前のその投げやりなところだ。
確かにお前が突入してくれなければ女達は助からなかっただろう。助かっても男達の酷い仕打ちに心が壊れていただろう。それは本当に感謝している。だが、お前の命も大切にしろ。
いくら腕が立つからと言っても、お前が命を落としたらどうするんだ!」
(この人は俺の命を大切だと言ってくれるんだ……俺の命なんていつなくなってもいいのに)
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