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14話

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クリストファ・スライド達が捕まってから数週間経ったある日、第4部隊隊長から呼び出されて、街の詰所へ向かった。

事件の次の日に呼び出されて調書を作って以来、呼び出されることがなかった。

そこには近衛騎士団長と俺の所属の近衛騎士団第3部隊の隊長、そして第4部隊の隊長の三人がいた。



騎士団の隊長から報告があった。

「アラン、やっと事件が解決した。人身売買をしていた者達全てを捕まえる事が出来た。お前のおかげで早く解決が出来たから、売られていった女性や子どももまだ少なかった。全て探し出して救うことが出来た」

「それは良かったです」
俺は事件のその後が気になっていたので安心した。

「人身売買は破落戸達がやっていたんだが、それは表向きだった。裏では貴族の息子達がお小遣い欲しさに、女子供を攫わせて、売る相手を紹介していたんだ」

「貴族の息子達?では、クリストファ・スライドだけではないんですか?」

「他にも六人が関わっていた。みんな一緒に連んでいてよく地下の賭博場を出入りしていた仲間たちだった」

「お小遣い欲しさに人を売る?」
馬鹿貴族の馬鹿息子に対して、腹が立っていた。

「クリストファは、その仲間の一人であの日は、破落戸達の様子を見に行っていたらしい。
まとめて地方の娼館に女達を売る事が決まっていたので、破落戸達には手を出さないようには伝えていたが、もしものことがあるから貴族の息子達が順番で様子を伺いに行っていたんだ。
だが俺たち騎士団が人身売買の事件を調べているし、常に巡回して回っているので、破落戸達は自分達の身の危険を感じて女達を捨てて逃げようとしていたんだ。クリストファは破落戸達が逃げようと考えている時に出会して一緒になって女達を犯そうとしたんだ」


「俺はあの時、一人で様子を伺っていました。中から女性達の助けを求める声と泣き叫ぶ声が聞こえました。
声の確認をしておおよその状況把握はしていたので、これ以上待って犯されるのを黙ってみているくらいなら一人でもいいから助けたかった。俺の勝手な自己満足です」

「本来なら待って仲間が到着して踏み込むべきだ。それは騎士として絶対的な事だ。だが待っていたら女性達は犯されていた。
そして殺されていた者もいただろう。それを未然に防げたのはお前だったからだ。お前は剣の腕も体術も優れているからな。日頃の真面目な鍛錬がきちんと実を結んでいるんだな」
俺の上司の第3部隊隊長が「よくやった」と褒めてくれた。

上の人達はきちんと俺のことを見てくれていたんだ。今日は首を言われる覚悟で詰所に来ていたのに。

「だがな、規則違反は規則違反だ」
近衛騎士団長に言われた。

「はい」

「よってお前の処分は1ヶ月の謹慎だ。その間はこの王都に留まることを禁止する。すぐに出て行け!」

「はい」

王都をすぐにでも出る?
どこへ行けばいいんだ。
俺はルディア様の実家のハディッド伯爵のところに頼ろうかと考えていた。
ルーベン様は今こそ騎士ではないが剣の腕前は俺なんかの上だ。
だからルディア様もエイミーもかなりの剣の猛者なのだ。未だに剣術大会に二人は張り切って参加している。

「いいか、よく聞け!なんだ。たまにはゆっくり体を休めろとは言ってないからな」

三人は優しい顔をして笑って俺を送り出してくれた。

表面上は謹慎。
本当は俺への御礼として休みをくれたのだ。

自由にできるように王都から出るように言ってくれたんだ。

「あ、これは俺たち三人からのお前への忠告を書いた手紙だ」
渡された手紙はかなりずっしりとしていた。

「失礼します」

俺は寮に戻ると、荷造りを始めた。

と言っても大して荷物はないので、カバン一つでハディッド領へ向かうことにした。

以前のハディッド領は馬車しかなかったが近くまで汽車が走っているので、3日ほどで向かう事が出来る。

詰所から帰る時に手紙を急ぎでルーベン様に出しているので、まあなんとかなるだろう。

俺は寮の管理人さん達にひと月部屋を空けることを伝えた。

「あんたがいないと寂しくなるわ」
と、おばちゃんが言ってくれた。

「本当だな。いつも寮の外でお前に会いたくて待ち伏せしていた女性達も来なくなって静かになるだろうよ」

「いつもすみません、ご迷惑をかけて」

「お前は何もしていない。せっかくのなんだから楽しんできなさい」

管理人さん達は俺が謹慎という名のご褒美を貰ったことを知っているみたいだ。

「そうよ、いつも人一倍頑張っているんだからゆっくり休んでね。どこに行くかは誰にも言わないようにね、追いかけて来られたら困るからね」

「ありがとうございます。ではまたひと月後に」

久しぶりの長期休暇を味わうことにした。








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