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34話

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久しぶりの休みに父上(レオナルド)から連絡が来た。

グランデ侯爵家に行くのは謹慎前以来で、父上達に会うのはハディッド領で俺が怒って帰って以来だ。

本当は行くのも面倒だったが、アリシアの誕生日が近く
「にぃに、あいたい」

とのお願いに、断る選択肢はなく、アリシアの希望のクマのぬいぐるみを抱えて侯爵家へ訪れた。

屋敷に着くとすぐにアリシアが出迎えてくれて

「にぃに!」
と抱きついてきた。

「アリシア!久しぶりだな、大きくなったな」
俺はアリシアを抱っこしてソファに座ると、すぐにクマのぬいぐるみを渡した。

「にぃに、ありがとぉ」

アリシアの笑顔を見るだけで癒される。

「アリシアは元気にしてたか?」

「うん!」

「好き嫌いせずに食べているか?」

「うん!」

「お母様の言うこときちんと聞いているか?」

「うん!」

「お父様は嫌いか?」

「うん!」

俺がぷっと笑い出すと、目の前に座っている父上がアリシアを見てショックを受けていた。

「あ、アリシア……」

アリシアはなんでも「うん!」と言ってただけで悪気もなく、父上を見てにこにこしていた。

俺は、クックックッと、笑っていると、アリシアはキョトンとして
「にぃに、ほん!」
と言って絵本を読んでいると、父上は俺を見て溜息を吐いた。

父上は俺にまた話たいことがあるのだろう。

わかっているが面倒なので今は気づかないフリをしてアリシアと遊ぶことにした。

父上は、俺が態とに避けていることに気がついているので、諦めて部屋を出ていった。

「にぃに、おとしゃま、いない」
にっこり笑って、俺の膝をおりてソファで一人遊びを始めた。
アリシアは俺が父上と話したくないのを小さいながらに感じていたのだろうか。

父上が居なくなった瞬間、一人で好きなことを始めた。
俺は退屈になったので、メイドに声をかけてアリシアのことを頼み、屋敷の護衛達のいる鍛錬場へ行った。

侯爵家の護衛騎士は、50名程雇われている。

屋敷を守る者、家族の護衛をする者、門を守る者、交代で訓練も行われている。

俺は鍛錬場で、数人が鍛錬している中に入れてもらいひと汗かいた。

「いつも無理やり参加させてもらって助かっています」

俺は礼を言ってから、アリシアとルディア様に声をかけて帰ることにした。



門のところで、「アラン!」
と、声をかけられた。

やはり逃げられなかったか。

「父上、何の用がありますか?」

「この前はアランを怒らせた、すまなかった」

「気にしないでください、俺が大人気なかっただけです」

「アラン……」
父上は言いにくそうにまた言い淀んだ。

「お前に特定の人がいないなら……」

「またその話ですか?いい加減にしてください」

「違うんだ、これは王命で……一度会うように言われたんだ……」

「陛下が?この前お会いした時は俺には何も言いませんでした」

「お前の性格をわかっているからな、嫌な役は僕に言って来るんだよ、陛下は本当に……ハァー」

「どんな方ですか?」

「へ?」

「お相手ですよ」

「…あ、あぁ、ジニリア侯爵家のイーゼ嬢なんだ。アランの3歳下の18歳で来年学園を卒業するらしい」

「何故?平民の俺相手に……」
俺はイライラしながら父上に当たるように言っていた。

「向こうからの申し出だ。陛下は、アランが心配なんだと思う。大人達の要らぬ世話なのはわかっている。だが偶には諦めて要らぬ世話に付き合ってみてはくれないか?」

俺は一度は見合いもしないと周りが許さないのだとわかってはいた。
心配してくれていることだってわかっている。

放って置いて欲しいと思うのは我儘なのだろう。

周りは俺の境遇を知っているだけに、俺が心配で何かと気にかけてくれる。

ありがたいことなのだろう……

諦めて俺は一度だけ受けることにした。







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